2021 Fiscal Year Research-status Report
スイゼンジノリの保全に向けた黄金川の湧水量減少原因の解明と流量回復への方策
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18K05882
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷口 智之 九州大学, 農学研究院, 助教 (00549123)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スイゼンジノリ / 太陽光発電 / 生物保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から,スイゼンジノリの保全のための流量を他の水源で賄うことが難しいことが明らかになった.2021年度は,現在のスイゼンジノリ保全活動において,大きな経済的負担となっている地下水ポンプによる流量確保のためのポンプ運転費の節減対策について検討した.具体的には,黄金川近傍に太陽光発電を設置し,そこで得られる電力をポンプ運転に利用し,さらに余剰電力を売電することを想定し,そのコスト計算を行った.その結果,太陽光パネルの耐用年数を20年間と仮定した場合,1 ha以下の用地に太陽光パネルを設置することで初期設置費用を含むすべてのコストを回収できると推定された.また,売電の代わりに蓄電設備を導入して余剰電力を蓄電した場合のコスト削減効果は大きくなく,売電が経済的に有意であることも明らかになった.ただし,昨年度のアンケート調査の結果,地元住民にとって黄金川は景観としての価値も高く評価されていたことから,太陽光パネル設置に際しては景観への影響についても慎重に検討し,地元住民の合意を得ることが不可欠である.なお,上記の解析では対象地の日射量データが得られなかったため,対象地から約30 km離れた福岡市の気象データを用いざるを得なかった.そこで,2021年12月から現場に日射計を設置し,現地での日射量測定を開始した. さらに,2021年11月にスイゼンジノリ関連の研究者(細胞生物学など)や企業との研究者交流会を行い,今後のスイゼンジノリに関する研究交流ならびに保全対策の実装に向けての準備を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた3課題については既に結果が得られたが,スイゼンジノリの持続的な保全対策を見出すことができていなかった.2021年度は当初計画で想定していなかった新たな保全対策として,太陽光発電の利用よるポンプ運転費用の節減効果について検討した.その結果,太陽光発電を活用することで,保全活動の課題となっていたポンプ運転費用を大幅に節減でき,スイゼンジノリの持続的保全に貢献できる可能性が高いことが明らかになった.本対策の現地への実装に向けて,地元関係者ならびに太陽光パネルのメーカーとも意見交換を進めている.ただし,新型コロナウイルスの影響により,2021年度の研究活動(特に現地でのデータ観測)が予定よりも大幅に遅れた.
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Strategy for Future Research Activity |
太陽光パネルの設置効果の推定において,現地の日射量データが得られなかったため,他地域のデータで解析せざるを得なかった.2021年12月から現地に日射計を設置しており,2022年度ではそれらのデータを用いて,太陽光発電によるコスト計算を再度実施する.さらに,学会,行政,企業,地元業者などと連携を進めながら,本対策の現地への実装に向けての課題と対策について検討する.
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Causes of Carryover |
学会参加や現地調査のための費用を計上していたが,新型コロナウイルス感染拡大にともなう学会のオンライン開催,ならびに,行動制限等による現地調査の自粛のため,旅費が抑制された.また,太陽光発電の導入効果に関する観測体制を十分に整備できなかった. 本予算については,現地調査や学会・研究交流会の実施費用のほか,太陽光発電による対策の実装評価に関する追加調査のための観測機材の購入費に充てる.
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