2018 Fiscal Year Research-status Report
ステンレス製鋼スラグを利用した環境保全型コンクリートであるジオポリマーの開発
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18K05884
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
近藤 文義 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (60253811)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジオポリマー / フライアッシュ / ステンレス製綱スラグ / 養生条件 / 圧縮強度 / 流動特性 / 収縮特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ジオポリマーの次世代コンクリートとしての普及を図るための基礎研究として、各種フィラー材料の適用性を化学組成の観点から学術的に明らかにすることを主目的とするものである。先ず、JISⅡ種フライアッシュをベースとしたジオポリマー硬化体について、初期加熱の有無および硬化後の養生条件の違いが圧縮強度に及ぼす影響について実験的に検討を行った。初期加熱を行わない場合、僅かでも水分供給がある養生条件では材齢による強度増加は認められなかった。また、強度の発現が遅い欠点はあるが、恒温養生および気中養生が有効であった。初期加熱を行った場合、材齢7日の段階では恒温養生と水中養生が有効であった。一方で、この場合、気中養生では長期材齢で圧縮強度の低下がみられた。その理由として、気中養生においては水中養生および土中養生に比べて、温度や湿度変化などの負荷の影響が示唆された。 次に、化学組成の異なる各種フィラー材料を使用したジオポリマーの硬化前の流動特性および硬化後の収縮特性について検討した。流動特性についてはスランプフロー試験による流動幅の直径により評価し、収縮特性については供試体の寸法(高さ)変化により評価した。ジオポリマーのアルカリシリカ溶液として数種類の珪酸ソーダを比較検討した結果、流動性および取り扱いの容易性から珪酸ソーダ3号溶液が最も適していることが明らかとなった。一方、ジオポリマーの収縮特性については、通常のJISⅡ種フライアッシュであれば程度の差はあるが、何れも材齢経過により収縮することが明らかとなった。また、JIS規格外のPFBCフライアッシュおよびステンレス製綱スラグについても、同様の収縮特性を示した。これらの内、最も収縮量が小さかったのは九州電力松浦フライアッシュ(JISⅡ種)であるが、そのメカニズムは明らかになっていないため今後検討していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に記した通り、JISⅡ種フライアッシュをベースとしたジオポリマー硬化体について、初期加熱を行わない場合、僅かでも水分供給がある養生条件では材齢による強度増加は認められなかったこと、および強度の発現が遅い欠点はあるが恒温養生および気中養生が有効であったことを明らかにした点においては進捗状況は良好である。一方、フライアッシュとは化学組成が大きく異なるステンレス製鋼スラグを使用したジオポリマー硬化体については、現在実験を行っている最中であり、練り混ぜに適したワーカビリティーとしての溶液粉体比は30%程度であり、フライアッシュと比較して15%程度少ないことまでは明らかにしている。しかし、今年度購入した主要備品であるミハエリス二重てこ型曲げ強度試験機を使用したジオポリマーの曲げ強度特性については、試験機の納品がやや遅れた事情があり、今年度は成果を出せる状況に到らなかった。ジオポリマーの配合条件等、実験の準備状況は概ね良好であるため、次年度以降に曲げ強度特性を把握する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、先ずフライアッシュをベースとしたジオポリマー(フライアッシュ・ジオポリマー)とステンレス製綱スラグをベースとしたジオポリマー(スラグ・ジオポリマー)の強度特性の違いを明らかにする。すなわち、フライアッシュ・ジオポリマーおよびスラグ・ジオポリマーの両者について、練混ぜ後の養生条件の違いが強度特性に及ぼす影響を明らかにする。特に、CaOやSO3を多く含むフライアッシュやスラグをベースとしたジオポリマーの硬化過程においては単純な脱水縮重合反応であるとは言い切れず、一部にセメントと同様の水和反応も起こっているものと予想される。従って、最適な養生条件として、水分供給の有無や温度条件、乾燥条件等について検討する。 なお、ジオポリマーの強度特性については圧縮試験だけでなく、割裂引張試験および曲げ試験も行い、セメントペーストやモルタルとの強度特性の比較を行う。特に、ジオポリマーの強度特性については申請者らのこれまでの研究成果から材齢28日以降に増加することが推測されるため、本研究計画では長期材齢(56日以降)での強度特性の把握にも努めることとする。研究成果については、農業農村工学会など関連の学会にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は圧縮試験機の保守点検費が特に必要なかったこと、および50kN型荷重計(ロードセル)が本経費とは別に調達可能であったため購入しなかった。したがって、未使用額は次年度以降に必要となる同試験機の保守点検費等の経費に充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)