2019 Fiscal Year Research-status Report
IRを用いたプロファイル法のためのプローブ型土壌ガス分析機器の開発
Project/Area Number |
18K05888
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
酒井 一人 琉球大学, 農学部, 教授 (10253949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平良 英三 琉球大学, 農学部, 教授 (20433097)
仲村渠 将 琉球大学, 農学部, 准教授 (70537555)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 土壌ガス / 亜酸化窒素 / NDIR / 農地 |
Outline of Annual Research Achievements |
パリ協定では、先進国だけでなく途上国での温室効果ガス排出量削減も義務づけられている。途上国では、農業からのGHG排出が30%以上と考えられているが、地域によって違うGHG排出係数は特定されておらず、実際のGHG排出量は明確ではないと言える。その理由は、農地からの主なGHGであるN2Oは大気中濃度が低く測定コストがかかるため、実測例が少ないからである。土中GHG濃度は大気中濃度より充分に高く、測定に高精度機器を必要としないため、実測の低コスト化が期待される。しかし、土壌ガス採取は、強制的に土壌ガスの流れを生じさせることとなり、精度が下がることが懸念される。そこで本研究では土中にガス透過性の高いシリコンチューブを埋設しガスを循環させ、そのガス濃度変化を測定できるN D I Rを用いた廉価な土壌ガス分析装置の試作を行う。 その中で、本年度は昨年度に引き続きFT-IRを用いて土壌ガス濃度を測定し土中のGHG濃度変化の特性について検討した。その結果、土中水分を変化させたプロセスにおいてN2O濃度は、1回目のサイクルでは湛水中に濃度ピークが現れその後下がった。一方2回目以降は、湛水期間中に徐々に上昇し排水直前が最大値となることが多かった。これらは、すべての実験で見受けられた。湛水期間中にN2O濃度が上昇していることから、2回目以降のサイクルでは、脱窒がN2O排出の主要因であると考えられた。各サイクルでの最大値では100ppmを超えることが認められた。大気中のN2O濃度が0.3ppm程度であり、土中濃度は3オーダー違うことがわかった。また、昨年度の冬(1-2月)と比べて夏場の方が大きな値を示しておりN2O排出の温度依存性が確認された。 さらに、N D I Rを用いた室内実験使用の試作器製造を開始した。この試作では、1mの光路で10ppmレベルの測定ができるシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この二年間では、土中に設置したシリコンチューブにより土壌ガス内のCH4およびN2Oを赤外線を利用して測定することができるのか、またそれらのガス濃度がどの程度であるかについて明らかにすべく室内実験を行なってきた。なお、この室内実験でのガス測定には、測定範囲が不明であるので測定範囲の広いFTIR+長光路ガスセルのシステムを用いた。そして、その室内実験結果を元に市販のパーツを組み合わせたNDIRガス分析システムの初期の試作を行った。 土壌ガス濃度測定実験では、シリコンチューブを用いて土壌ガス濃度を測定することは可能であること、シリコンチューブ(肉厚1mm)内のガス濃度の平衡時間は3~4時間かかること、N2Oの場合最大濃度が100ppm以上になり長光路ガスセルを用いないNDIRシステムでも分析が可能であると判断できることなどが明らかとなった。 ガス分析装置の試作では、PIREOS社の光源と赤外検出器のキットを用いて1mのステンレス管をガスセルとしたシステムを初期型として構築した。その結果、10ppm程度以上の濃度であれば測定できることが認められた。現段階では、ガス流量、温度、湿度の影響については明確にできておらず、フィールドでの測定機器として利用するためにはそれらの条件の測定結果への影響を明確にする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で進める内容は2項目ある。一項目は、室内実験によるプロファイル法の確立である。これまでの実験でシリコンチューブを用いて土壌ガス濃度を測定することができることは認められたが、温室効果ガス排出量推定を行うには、この測定値と土壌表面からの温室効果ガスフラックスの関係を明らかにする必要がある。土壌ガス濃度から土壌表面からのガスフラックスを推定する方法としてプロファイル法が提案されている。本研究では、実験室レベルでのプロファイル法の適用性について室内実験により明らかにする。具体的には、シリコンチューブを用いて土壌ガス濃度を測定すると同時にチャンバー法を用いて土壌表面からのガスフラックスを測定し、2つの関係について明らかにする。 もう一項目は、NDIRガス分析器をフィールドで利用可能なシステムにすることである。この実現のためには、可搬性を上げ湿度やほこりによる影響を極力避ける仕様にすることが必要である。現在、多回反射システムや中空ファイバー の利用を考えている。
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Causes of Carryover |
年度末に海外への調査を計画していたが、新型コロナの問題で渡航が中止になったので最終的に一部物品の購入をした。その結果、残額が十分ではなくなったので次年度への利用とした。
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