2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05890
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
石田 聡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, ユニット長 (30414444)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 地下水 / 塩水化 / 二重揚水 / 津波 / 回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象地として,帯水層内に,津波により塩水化した地下水と,その上部に淡水域が分布している宮城県亘理町および山元町を選定した。研究対象地に設置されている地下水観測井戸の深度は10~15mである。現地試験に先立って各観測井戸のECを深度1m毎に測定したところ,塩淡境界深度は5m以深であり,想定するパッカー深度を3~9mの範囲とした。 この条件で使用可能な二重揚水装置を試作した。観測井戸の口径は50mm,材質は硬質塩化ビニール管であることから,パッカーの材質はゴム製とし,その長さは50cmとした。パッカーの上部および下部にはそれぞれ揚水ホースに接続された揚水口を配し,揚水ホースおよびケーブルグリップでパッカーを支持することで,井戸の任意の深度を空気パッカーで止水できる構造とした。揚水ホースはDC12V駆動の吸い込み式ポンプおよび流量計に接続され,コントローラーでそれぞれ揚水量を調節できる。またパッカー上部および下部には自記水位・EC計を付帯できるスペースを設けた。 試作した二重揚水装置について,その性能を確かめるため室内試験を行った。パッカーに揚水ホースを接続した状態で地上より3m 上から揚水する連続揚水10 分間の試験では,最大揚水量が10.8~15.1L/minであり,揚水ホースの内径が大きくなると揚水量も増加した。0.10MPaの空気圧でパッカーを膨張させ、12 時間以上経過後の圧力を計測する耐久試験では,2回の試験共にエアー漏れはなく,所定の性能を発揮できることが確認された。 また二重揚水の実施に先駆けて,パッカーを塩淡境界に設置し,上部のみから揚水する方法で研究対象地の観測用井戸で揚水試験を行った。その結果,内陸側では淡水が揚水可能な井戸が見られたが,海岸近くの井戸では淡水の揚水が難しいことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地における塩淡境界深度は想定の範囲内であり,これに対応する二重揚水装置の作成が完了し,動作試験も良好であったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に作成した装置を用いて,宮城県亘理町・山元町の観測用井戸において,井戸内の塩淡境界にパッカーを設置し塩水と淡水を同時に揚水する試験を行い,揚水した地下水および孔内のECの経時変化,揚水前と揚水後の井戸内の深度別EC分布の変化を明らかにする。また揚水中の地下水を採取し,ラドン濃度・pH・ORP・DOを測定し,水質の経時変化を明らかにする。なお本研究では,現地で栽培が盛んなイチゴの生育に適した水のECが70mS/m以下であることから,この値を塩水と淡水の閾値とする。揚水試験は塩淡境界を有する観測井戸で行い,井戸の位置(主に海岸線からの距離)や塩淡境界深度と試験結果との関係について考察する。
|
Causes of Carryover |
二重揚水装置の室内試験結果が良好であり、その後に予定していた装置の改修を行わず,平成31年度(令和元年度)に実施する現地試験後に改修を行うこととしたため。
|
Research Products
(2 results)