2019 Fiscal Year Research-status Report
強震時の材料非線形化によるフィルダム堤体損傷機構の解明
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18K05892
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
林田 洋一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (50414454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増川 晋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 領域長 (00414459)
向後 雄二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30414452)
田頭 秀和 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, ユニット長 (40414221)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 農業用ダム / 地震時挙動 / 振動模型実験 / ひずみ依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した4 Hzおよび10 Hzの異なる周波数のサイン波を入力波とした遠心場での加振実験結果について詳細な分析を実施した。その結果、入力加速度および堤体底部での加速度値が比較的小さい領域では、入力波の周波数が堤体内の増幅特性に及ぼす影響は顕著であり,10Hzでの天端部の応答倍率は4Hz の場合に比べ3 倍程度となり、堤体上部ほどその影響が大きくなった。一方、入力加速度および堤体底部での加速度値が大きくなるに従い,周波数の影響は少なくなり、堤体内部での加速度増幅は低下し堤敷き部での値と同等かそれを下回る結果となった.また、両周波数での堤体各部の周波数応答特性は、入力動の周波数およびその倍成分が卓越し,入力加速度値が低い場合には堤体上部に向かう程フーリエスペクトル値が増加するのに対し,入力加速度値が高い場合には堤体内部において増幅がピークを迎え,天端ではその値が減少する傾向を示した。入力加速度および天端応答加速度と天端沈下量の関係について検証したところ、加振の継続とともに天端沈下量は漸増していき、入力動の振幅低下時、強制振動終了後の自由振動時にも沈下は継続的に進行した。また、入力加速度が大きくなる程、天端での沈下量は増加し、累積沈下量も増大するのに対し、天端応答加速度がある程度の値となると天端での応答加速度と沈下量の間に明瞭な関係が認められなかった。このことは、入力動が大きくなることで天端での応答加速度が頭打ちとなるが、堤体の応答に伴う慣性力の大きさに関係なく天端での沈下が進行するためと考えられる。以上の結果から、堤体応答特性と堤体変形特性の相互メカニズムの解明に向けた有益な知見を得ることができた。 また、堤体の応答および変形挙動に対する初期含水状態の影響を検証するため、含水比の異なる不飽和フィルダム堤体模型を用いた遠心載荷振動実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、①観測地震波による挙動分析、②振動模型実験による挙動メカニズムの解明、③数値実験による再現性の検証を一体的に実施することで、従来設計で考慮されていない堤体損傷モードの発生メカニズムおよびその堤体の健全性への影響を解明することである。 ①については、発表されている既往のダムでの地震波形について、入力波の周波数特性および堤体内での応答特性の変化に着目した分析を実施中である。②については、昨年度の実験結果を詳細に分析し、堤体応答特性と堤体変形特性の相互メカニズムの解明に向けた有益な知見を得ることができた。また、堤体の応答および変形挙動に対する初期含水状態の影響を検証するため、含水比の異なる不飽和フィルダム堤体模型を用いた遠心載荷振動実験を実施した。③については、堤体材料のせん断剛性および履歴減衰率のひずみ依存性が異なる複数の条件を設定した等価線形化法および非線形逐次応答解析による数値解析結果の比較分析を行うとともに、入力波の周波数特性が数値解析結果に及ぼす影響を検証するための数値実験に着手した。研究は概ね計画どおりに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね計画どおりに進捗しており、当初の計画通り研究を推進する予定である。 なお、振動模型実験の結果を詳細に分析したところ、入力加速度が比較的小さい領域では、入力波の周波数が堤体内の増幅特性に及ぼす影響は顕著であり,堤体上部ほどその影響が大きくなった。一方、入力加速度が大きくなるに従い,周波数の影響は少なくなり、堤体内部での加速度増幅は低下し,堤敷き部での値と同等かそれを下回ることが明らかとなった。入力加速度および天端応答加速度と天端沈下量の関係について検証したところ、加振の継続とともに天端沈下量が漸増していき、入力動の振幅低下時、強制振動終了後の自由振動時にも沈下が継続的に進行した。また、入力加速度が大きくなる程、天端での沈下量は増加し、累積沈下量も増大するのに対し、天端応答加速度がある程度の値となると天端での応答加速度と沈下量の間に明瞭な関係が認められず、入力動が大きくなることで天端での応答加速度が頭打ちとなるが、堤体の応答に伴う慣性力の大きさに関係なく天端での沈下が進行することが推測された。 このことから、数値解析および観測地震波の分析にあたっても、上記の現象およびそのメカニズム解明に主眼をおいた検証を実施する。
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Causes of Carryover |
消耗品購入時の購入予定価格と実際の購入価格に差額が生じたため。次年度に、消耗品費として使用を予定している。
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Research Products
(4 results)