2018 Fiscal Year Research-status Report
農業の持続性を脅かす侵略的外来雑草に対して環境保全型農業は強靱か?脆弱か?
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18K05894
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
嶺田 拓也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (70360386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 圭一 東北大学, 農学研究科, 准教授 (20356322)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機水稲栽培 / 侵略的外来雑草 / 侵入・定着リスク / 脆弱性 / ナガエツルノゲイトウ |
Outline of Annual Research Achievements |
環境保全型農業における侵略的外来雑草の侵入・定着状況を把握するために,侵略的外来生物に指定されている南米原産の水草ナガエツルノゲイトウがまん延している千葉県印旛沼周辺地域において,除草剤を利用しないJAS有機栽培体系下の有機水稲田9筆の植生を調査した。耕作者の異なる2筆で水田内へのナガエツルノゲイトウ侵入を確認し,うち1筆は畦畔への定着も認められた。また未侵入の有機水田7筆も,すでにナガエツルノゲイトウが定着している河川から取水していることから今後,水田への侵入リスクは高いと考えられた。また有機水稲栽培体系と慣行栽培体系を比較すると,栽培品種,耕起体系には違いが見られないが,慣行体系では移植直後の初期除草剤に加えて初中期剤による体系防除を採用しているのに対し,有機体系下ではチェーン除草と中耕除草の物理的除草の組み合わせで雑草管理を行っていた。ナガエツルノゲイトウは耕起によって断片化しやすく,断片は容易に萌芽することから,有機体系下のほ場に侵入すると繰り返しの攪乱によってほ場全体に拡散されるリスクも考えられた。一方,耕作者へのヒアリング(計4名)からは全員がナガエツルノゲイトウに対する知識は有していたが,侵入水田の耕作者を含めて実際のナガエツルノゲイトウについて他の草種から正確に識別することはできなかった。従って,有機水稲栽培下では必ずしもナガエツルノゲイトウの侵入が早期に発見されるものではないと推察された。また,ヒアリングからは今のところ,ナガエツルノゲイトウが有機水稲体系下で大きな減収要因となっていないことが伺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
侵略的外来雑草として南米原産の水田雑草で北米やヨーロッパにも帰化しているナガエツルノゲイトウをモデル植物に,まん延地区の有機水稲田における侵入・定着状況を把握した。また,ヒアリング等から被害実態や対策についても情報を収集した。しかし,慣行農家の被害実態や対策に関する情報収集が遅れており,侵略的外来雑草がもたらす有機・慣行別の農業被害リスクに関するシナリオ作成に向けた必要なパラメータを整理できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル植物である侵略的外来雑草ナガエツルノゲイトウによる最大損失額を推定するために,慣行栽培体系も含め,減収額や駆除に費やされる労力,コストなどについて農業普及センター等の協力を得てアンケート等で収集する。
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Causes of Carryover |
当初の計画ではヨーロッパの有機農業先進国(フランスやドイツを想定)における侵略的外来雑草の侵入実態や対策およびコスト把握の調査を予定していたが,スケジュールがとれず見送ったため,今年度に改めて海外調査(約25万円×2名)を敢行するので翌年度分として請求する。
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Research Products
(4 results)