2019 Fiscal Year Research-status Report
農業の持続性を脅かす侵略的外来雑草に対して環境保全型農業は強靱か?脆弱か?
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18K05894
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
嶺田 拓也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (70360386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 圭一 東北大学, 農学研究科, 准教授 (20356322)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 侵略的外来雑草 / 有機水稲栽培 / ナガエツルノゲイトウ / 掛かり増し経費 / 最大損失額 / アレチウリ |
Outline of Annual Research Achievements |
千葉県の協力も得て印旛沼周辺の環境保全型農業で稲作を実施する生産者に侵略的外来雑草ナガエツルノゲイトウによる被害程度や対策,栽培体系など詳細な聞き取り調査を実施した結果,実際に作業や収量等に影響を及ぼしているのは1件のみだった。対策としては手取り除草,とくに畦際部の除草の徹底であり,ナガエツルノゲイトウ除草にかかる年間を通じての10aあたりの労働時間の掛かり増しは約7.2時間,援農等のボランティアによる除草作業を当該地域の農作業雇用賃金等標準額に参照すると44,550円相当と推算できた。また,除草等の対策を実施しない場合,水稲収穫が皆無となる可能性があり,平均収量(360kg/10a)および平均販売価格(51,000円/60kg)から,最大損失額として約300万円の損失の発生が見込まれた。 一方,畑地での侵略的外来雑草アレチウリが河川沿いの農地を中心にまん延し,農業被害も報告されている宮城県でS農協管内を対象に有機大豆ほ場でのアレチウリ侵入状況と対策を聞き取りしたところ,過去を含めてアレチウリの有機ほ場への侵入が認められたのは1件で,かつて借地農地での発生があったものの,徹底的な中耕除草の実施により駆除に成功し,現在発生は認められないとのことであった。なお,駆除に際しての掛かり増しの労働時間やコスト等に関しては情報が少なく推算できなかった。また,有機大豆の生産者は,近隣の河川法面草地や慣行ほ場にはアレチウリの発生が見られることを認識しており,その侵入や関連する情報については注意を払っていることがうかがわれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
侵略的外来雑草として南米原産の水田雑草で北米やヨーロッパにも帰化しているナガエツルノゲイトウをモデル植物に,まん延地区の有機水稲田における掛かり増し作業や経費および最大損失額を推定した。しかし,年末にかけて予定していた農業被害リスクに関するシナリオ作成に向け比較対象の慣行農家に対するヒアリングおよびアンケート調査,また海外調査による国際比較が新型コロナウィルスの感染防止対策による出張の自粛により実施できず,当初の実施工程からかなり遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの全世界的な流行とその終息が見通せない中,侵略的外来種に対する環境保全型農業の国際的な脆弱性評価は実施を見送らざるを得ない。また生産者に直接ヒアリングする機会も持ちにくいことからコロナウィルスが終息するまで,研究の一時的な中断も視野に入れたい。
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Causes of Carryover |
令和2年度3月末に国際比較のためフランス・イタリアに調査の計画を立てていたが,新型コロナウィルスのパンデミックに伴い,中止せざるをえずそのための旅費に充てていた約70万円(2名分)が支出できなかった。また,2021年6月にタイバンコクで開催予定だった国際学会が延期となったため,参加早期割引(約7万円)の支払いを実行しなかった。加えて国内生産農家へのヒアリングも当初計画より縮小し,千葉県や宮城県などの国内旅費も約10万円使用できなかった。 今後,国内や海外でのコロナ収束に伴い,海外渡航の許可が下りれば,フランス・イタリアでの調査に充てたい。また,タイでの国際学会参加に加え,現地調査にも使用する予定である。
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Research Products
(4 results)