2018 Fiscal Year Research-status Report
萎凋病対策に向けた水耕栽培用培養液の非熱プラズマ殺菌技術の開発
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18K05902
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
安井 晋示 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30371561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄子 和博 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, その他 (10371527)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 萎凋病 / 殺菌 / プラズマ / フザリウム / ピシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
萎凋病の病原菌であるフザリウム菌とピシウム菌を対象として,水耕栽培における培養液の非熱プラズマ照射による殺菌技術の開発研究を実施し,以下の成果を得た。 (1)液中プラズマ照射電極の最適化 沿面放電により発生する非熱プラズマの特性は,プラズマを溶液中に噴き出すための穴の形状(沿面電極の穴径とギャップ長),ガス流量(ガス圧力),印加するパルス電圧の大きさやデューティー比などのプラズマ生成条件により大きく変化する。各種条件を変化させて液中プラズマを生成し,液中でのOHラジカルの生成量を化学トラップ法で評価することで,OHラジカルを効率的に生成する沿面放電電極の形状およびプラズマ生成条件を明らかにした。 (2)ピシウム属菌遊走子の殺菌特性 我々が開発した沿面放電を利用した液中プラズマ照射によるPythium属菌の遊走子に対する殺菌特性を評価した.小容量の50ccの溶液に対してPythium属菌遊走子の殺菌実験を行い,10分程度の短時間のプラズマ照射により発芽率をほぼ完全に抑えられることを確認した.また,プラズマ照射に伴うガス吹き付け効果,プラズマ発光,温度上昇,H2O2濃度上昇の殺菌特性と比較した結果,これらの物理化学的要因は支配的な殺菌要因とはならず,プラズマ特有のOHラジカル等の活性種が殺菌に寄与していることを明らかにした。 (3)水耕栽培実証実験による除菌効果の検証 水耕栽培での培養液への菌の汚染経路は,一般的には苗の定植時において,人を介在して根から侵入する。ホウレンソウの苗をフザリウム菌を含む溶液に十分に浸してから定植し,定植後に根近傍へプラズマ照射した後の生育を観測した。定植時に5分程度のプラズマ照射によって,萎凋病の感染割合を大きく低減させ,コントロール(無菌)の苗と同等に生育できることを確認した。すなわち,定植時でのプラズマ照射によって萎凋病の防除ができることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究項目(1)培養液の殺菌速度の評価とプラズマ照射条件の最適化については,これまで未解明であったピシウム属菌遊走子の殺菌特性を明らかにした。また,殺菌に効果的に働くOHラジカルの化学プローブ法を構築し,効率的にOHラジカルを生成できるプラズマ照射電極の最適化を行った。 さらに,研究項目(2)水耕栽培実証実験による抗菌作用および生育影響の実証については,フザリウム菌に汚染させた苗を定植し,その後,水耕栽培容器内でのプラズマ照射により,感染進行を防除できることを確認し,生育にも影響を及ぼさないことを確認した. これらの基礎研究を順調に行うことができ,予定した以上の成果が得られている.これらの成果は電気学会全国大会で複数件発表を行っており,また,学術論文への投稿も準備している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,我々が提案している沿面放電型液中プラズマ照射装置の基本技術を開発し,萎凋病病原菌であるフザリウム分生胞子,ピシウム属菌遊走子を殺菌できることを解明した。今後,さらなるメカニズムの解明と実証に向けて以下に示す研究を推進する。 (1)殺菌メカニズムの解明 液中プラズマによる萎凋病病原菌の殺菌特性は,プラズマ照射により生成される溶液中のOHラジカルが主な殺菌要因であることが示唆された。今後,OHラジカルの化学トラップ材を併用した殺菌実験を行い,より明確にOHラジカルによる殺菌効果を検証する。 (2)水耕栽培における防除効果の最適化 これまでの成果により,水耕栽培による萎凋病の防除方法として,定植後の苗を対象にプラズマ照射して,防除効果を見出すことができた。今後は,より最適な防除方法に向けて,水耕栽培の定植前に殺菌を行うなど,より効果的な防除方法を検証する。 (3)実用化に向けた課題解決 培養液のプラズマ照射殺菌実験では,これまで小容量の培養液に対して基礎実験を実施してきた。実用化に際しては,汚染された大容量の培養液を連続的に殺菌処理する必要が生じると考えられる。そこで,循環式で連続殺菌処理できる新たなプラズマ照射用電極を開発し,実証実験によりその性能を検証する。 (4)農薬代替技術への適用 非熱プラズマの農業応用に向けた新たな取り組みとして,農薬代替に向けた検討を行う。
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