2018 Fiscal Year Research-status Report
Dynamic evaluation and improvement of environmental and physiological factors inducing midday depression of crop photosynthesis in greenhouses
Project/Area Number |
18K05905
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安武 大輔 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90516113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 雅治 九州大学, 農学研究院, 教授 (30153109)
森 牧人 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (60325496)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光合成速度 / リーフコンダクタンス / 昼寝現象 / 葉の濡れ / 作物個体チャンバ / トマト / 水ポテンシャル / キュウリ |
Outline of Annual Research Achievements |
温室での作物生産において,日射量が豊富な晴天日であっても,正午前後の数時間にわたり光合成速度が低下する昼寝現象がしばしば発生する.昼寝現象は,光合成速度を通常レベルより低下させる生産上の大きなロスでありる.すなわち,昼寝現象を引き起こす要因を把握し,それを改善することが生産最適化において極めて重要である.そこで本研究は,目標1:昼寝現象の環境生理学的要因の内訳・影響度とそれらの動態を解明する,および目標2:葉面水噴霧によって昼寝現象の環境生理学的要因を回避・緩和する,を達成することで昼寝現象の改善技術を確立することを目的とする. 目標1の取り組みにおいては,キュウリを対象に,実験室において光合成有効光量子束密度(PPFD)2000 µmol m-2 s-1,気温25℃,大気飽差2.5 kPa,CO2濃度400 ppmの環境条件の下で,葉のガス交換特性,量子収率,水ポテンシャルの経時変化を計測した.計測開始2時間後から光合成速度は低下し続け,昼寝現象が観察された.低下の前半部では光阻害などの日機構的要因に,後半部では葉の局所的な水分ストレスによる気孔閉鎖(気孔的要因)によって光合成の低下が引き起こされたと考えられた. 目標2の取り組みにおいては,噴霧器で葉面を濡らしたトマトおよび濡らしていないトマトを対象に晴天日の午前と午後において,代表者が構築した植物個体チャンバシステムでガス交換特性を評価した.濡らしていないトマトでは,気孔閉鎖を通して午後の光合成速度が午前より20%減少し,昼寝現象が観察された.一方,濡らしたトマトでは葉面への水噴霧による葉近傍の湿度上昇と葉温上昇の抑制により,過度な水分損失が抑制されて気孔開度も維持され,その結果,午後の光合成は午前と同程度であった.すなわち,昼寝現象を回避することが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,本研究課題では2つの目標を掲げている(目標1::昼寝現象の環境生理学的要因の内訳・影響度とそれらの動態を解明する,目標2:葉面水噴霧によって昼寝現象の環境生理学的要因を回避・緩和する). 目標1については,当初計画で実験室内の制御環境下において主要園芸作物(トマト,キュウリ)の光合成速度のほか,昼寝現象の要因になり得る気孔コンダクタンス(開度),水ポテンシャル,葉温,葉の糖濃度の経時変化を計測して,光合成速度の制限要因を調べることを予定していた.研究初年度においては,この計画をほぼ実行して期待する成果が得られた. 目標2については,当初計画で葉面を濡らした際の湿度上昇と葉温低下による蒸散速度の抑制効果を,申請者らの独自の個体チャンバシステムで調べ,その蒸散抑制によって葉の水ポテンシャルと気孔コンダクタンスを高いレベルで維持できるのか調べることを予定していた.研究初年度において,この計画を実行し期待する成果が得られた. 以上より,本研究について現在までの進捗状況を「概ね順調」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたように,研究初年度の進捗は順調に進めることが出来たので,次年度と予定通り以下の項目を実施する: すなわち,目標1については,温室内の変動環境下において光合成速度の昼寝現象を観察し,その複合的かつ動的な要因を明らかにする.さらに,昼寝現象の要因の影響度についても定量的な解析を試みる.その際,Grassi et al. (2005)のCO2拡散律速モデルを参考にする予定である.目標2については,濡れに伴う葉の膨圧変化が転流と葉内糖濃度に及ぼす影響の評価を試みる.すなわち,濡れによって水関係とくに膨圧がどのように応答するのかを計測し,さらに葉の収支に基づく転流モデル(Miyoshi et al., 2017)や安定同位体13Cを用いたトレーサ実験(Hidaka, Kitano et al., 2014)も援用して,膨圧,転流,糖濃度とそれらの相互関係を解析する.そして葉の濡れが,膨圧への影響を通して転流を増加させ,葉内糖濃度の過剰蓄積を回避できるのか調べる.
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Causes of Carryover |
代表者の所属機関が2018年6月にキャンパス移転を行い,それに伴って5月~9月まで実験圃場を利用することが出来ない状況であった.限られた時間と場所での実験で,当初計画の目標は何とか達成することが出来たが,実験項目(計測項目)などが限られたため,予算の未使用がでた. 前年度の実施できなかった実験項目は,2019年度の実験で行う予定である.すなわち前年度の未使用の予算も2019年度の実験で使用する予定である.
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Research Products
(6 results)