2019 Fiscal Year Research-status Report
微生物叢任意制御による非加熱・無殺菌米副産物からの光学活性乳酸生産法の開発
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18K05920
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡辺 昌規 山形大学, 農学部, 教授 (20320020)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 米由来バイオマス / 光学活性乳酸 / 同時糖化発酵 / T-RFLP解析 / バイオプラスチック / プロテアーゼ / バクテリオシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、米糠由来バイオマスから分離された高光学活性乳酸生成菌による非加熱・無殺菌状態の米由来バイオマスからの乳酸生成と同時糖化発酵(SSF)発酵液中の微生物叢構造との関連性、微生物叢形成に与えるプロテアーゼ(in-vitro)の効果を理解し、SSF中微生物叢任意制御による米副産物混合物からの高光学活性乳酸生成の安定性向上・高効率化技術の確立を目指した。平成30年度は、T-RFLP(末端断片長多型法)による洗米排水より分離された高乳酸生成菌(Lactobacillus rhamnosus)、低乳酸生成菌(Lactobacillus paracasei)、双方におけるSSF中微生物菌叢構造と乳酸生成能との関連について解析を行った結果、SSF培養液中への酸性プロテアーゼの添加ならびにpH制御により、培養初期化から高・低乳酸生成菌双方のSSFにおいて、乳酸生成菌であるLactobacillales目による70%以上のドミナントを形成させることが可能であった。さらに、乳酸資化性を示すClostridium(属)クラスターⅨ、XIVaおよびBacteroides目による菌叢形成・低級脂肪酸の生成双方の抑制効果が認められた。 本年度は、研究計画に基づき、酸素分圧任意制御下におけるSSF中微生物菌叢構造、乳酸生成能の解析を実施し、酸素分圧の増加と共に、生成乳酸濃度値は増大し、培養後期から乳酸資化性を示すClostridium(属)クラスターⅨ、XIVaによるドミナントの形成およびエタノール生成双方の抑制効果が認められた。これらの結果より、pH、酸素分圧の制御、酸性プロテアーゼの添加は、SSF中微生物菌叢構造を任意でダイナミックに変化させることが可能であり、非加熱・無殺菌状態のSSFにおいて、高光学活性乳酸生成菌の安定したドミナント形成と乳酸生成の可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度(令和元年度)は、米由来バイオマスを単一基質とした、酸素分圧任意制御下におけるSSF中微生物菌叢構造、乳酸生成能の解析を実施した結果、酸素分圧の増加と共に、生成乳酸濃度値は増加し、培養後期から乳酸資化性を示すClostridium(属)クラスターⅨ、XIVaによるドミナントの形成およびエタノール生成双方の抑制効果を認めた。また、培養中期からは、Bifidobacterium目が菌叢構造中に検出されると同時に、酢酸、プロピオン酸、酪酸の生成が認められ、系の不安定性が認められた。このことに関連して、昨年度(平成30年度)は、SSF中への酸性プロテアーゼ添加により、Lactobacillales目によるドミナント形成の促進と培養中期以降の生成乳酸濃度の低下を認めていることから、SSF中のpH、酸素分圧の制御、酸性プロテアーゼ添加を組み合わせることにより、培養初期から後期まで、高光学活性乳酸生成菌の安定したドミナント形成による高乳酸生成の可能性を示唆した。 これらの成果により、上記区分に相当する進捗状況であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1、3としてそれぞれ掲げる「SSF乳酸発酵液中の微生物叢と乳酸生成能との関係」、「微生物叢任意制御による乳酸生成の効率化と安定性向上」については、光学活性乳酸生成菌の安定したドミナント形成による高乳酸生成を可能にする、各制御因子(SSF中pH、酸素分圧制御、酸性プロテアーゼ添加)の最適化を培養前・中・後期の各フェーズで実施し、本プロセスの乳酸生成効率、生産性向上について評価を行う。研究項目2として掲げる「SSF乳酸発酵液中の微生物叢形成に与えるプロテアーゼの機能解明」については、これまでの検討により、SSF中への酸性プロテアーゼ添加は、Lactobacillales目によるドミナント形成の促進効果を有していたことから、本年度は、in-vitroにおける高光学活性乳酸生成菌の抗菌性ペプチド(バクテリオシン)生成能とその抗菌スペクトルの解析、バクテリオシン生成に与える酸性プロテアーゼ添加の効果について解明を進める。 上記方策の実施により、本課題の目的である、高光学活性乳酸生成菌のバイオマスリファイナリー、微生物叢形成機構の解明による米由来副産物からの環境調和型高光学活性乳酸製造技術の確立を目指す。
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Research Products
(8 results)