2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05921
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西脇 淳子 茨城大学, 農学部, 助教 (00549892)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅木 直美 茨城大学, 農学部, 准教授 (40571419)
小島 悠揮 岐阜大学, 工学部, 助教 (70767475)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 土壌耕盤 / 炭素貯留 / 温室効果ガス / 土壌物理・化学性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、土壌耕盤が規定する土壌物理化学環境条件の測定と土中炭素貯留能に関する評価を目的とする。農地土壌は最大級の炭素シンクであり、土壌耕盤がさまざまな物質動態に果たす役割が着目されてきている。申請者の既往の研究で、耕盤上下での土壌物理条件、土壌ガス濃度の変化が確認され、耕盤層が遷移領域として、土壌物理性やガス濃度に影響を与えているという仮説を立てた。しかし、耕盤より上部層やもしくはより深部での炭素貯留に関する研究が多くなされているが、炭素貯留の鍵となる耕盤層付近の研究はほとんどないため、将来的な土中炭素貯留量の増加に寄与することを目指し、耕盤層に着目した貯留能評価を行っている。試験は、寒冷地の福島県山村、温暖地域である茨城県の圃場で行っている。土壌の物理性として、硬度、透水係数、保水性等を測定するとともに、土壌中および地表面でのガス動態を測定した。平成30年度の両試験地域の測定においては、耕盤の有無と、土中ガス濃度、および地表面ガスフラックスとの一貫した関係は認められなかった。また、季節ごとの土中ガス濃度変化とガスフラックス変化にも関係は認められなかった。耕盤の存在以上にガス動態に影響を与える要因が存在したのか、現状況では解明できていない。現在、測定箇所を耕盤近傍で増やすこと、測定回数を増やすこと、炭素量の実測値と比較すること、などを通して土壌耕盤の炭素貯留を検討するとともに、実際に耕盤を破砕することによるガス動態の変化、炭素貯留能への影響を検討することを念頭に令和元年度の試験を計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、将来的な土中炭素貯留量の増加に寄与することを目指し、耕盤層に着目した貯留能評価を行っている。具体的には、ⅰ) 耕盤上下での土壌物理環境測定、ⅱ) 耕盤上下での土壌ガス濃度測定、ⅲ) 耕盤上下での土壌物理・化学性測定、およびⅳ) 耕盤上下での土壌炭素量測定、を行うことを計画し、それらの結果から炭素分解および移動メカニズムを推察し、総合的に炭素貯留能を評価する。平成30年度の達成度としては、季節ごとの現場での測定、サンプル採取等を行うとともに、それらサンプルの室内における分析を行うことで、冷温地域における温室効果ガス動態に関するデータを収集した。しかし、申請者のこれまでの研究結果とは異なり、耕盤の有無による土壌ガス動態への影響は明確には確認されなかった。また、その理由を解明するために、センサ設置等による継続的かつ多くのデータ取得を行うべく準備を行ってきたが、信頼性の高いデータを得るために、センサのキャリブレーションに時間を要した。継続的な実証試験方法を確立し、信頼性の高いデータを得て総合的な評価を行っていくため、令和元年度より、センサ設置による土壌物理性の原位置継続計測を開始する予定である。また、装置の不具合等で炭素量測定がまだ終了していないサンプルが多く残っているため、それらの分析を迅速に進め、ガス動態と炭素量の相互の視点から、土壌耕盤が炭素貯留に果たす役割の解明を行っていく予定である。また、現段階が土壌として安定した状態となっていると、ガス動態の差異は確認できないかもしれない。そこで、土壌耕盤を破砕した場合のガス動態、炭素量変化に関しても、現在検討を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では農地における土壌耕盤層に着目し、その存在の有無と炭素貯留能に関する評価を、炭素動態の視点から検討している。令和元年度より、継続的なデータ測定方法を確立し信頼性の高い結果を得るため、現場へのセンサ設置による土壌物理性の原位置継続計測を開始する予定である。また、測定機器の不具合等で遅れていた、土壌サンプルの有機物・炭素量分析を進め、総合的な検討を行っていく。また、申請時には計画としていれていなかったが、土壌耕盤が炭素貯留と関係するとの仮説を解明するため、実際に現段階で存在している土壌耕盤を破砕し、その破砕前と後での炭素量やガス動態との差異を把握することが有効ではないかという考えに至った。そこで、現状では耕盤とそれ以外の要因と、何が炭素貯留に関して影響をしているか見えにくい部分があるため、実際に土壌耕盤を破砕した場合のガス動態、土壌有機物・炭素量の変化に関して測定を行うことを計画し、現在は文献調査を行いながら、圃場管理者、および共同研究者と打ち合わせを行っている。
|
Causes of Carryover |
(理由)平成30年度分で77,281円の残高が生じた。これは、現場での土壌環境測定において、データ取得のためのネットワーク構築と遠隔操作のためのシステム開発のために前倒し申請を行ったが、取得データの内容等を精査することで、現状安価に抑えることができたためである。 (使用計画)上記の残高は、システム改良や保守等、次年度の必要経費である旅費や消耗品費に充当する。
|
Research Products
(5 results)