2019 Fiscal Year Research-status Report
Foundation of Biorefinary delivered from Bamboo Material
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18K05928
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
椎葉 究 東京電機大学, 理工学部, 教授 (20621981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リグノヘミセルロース / コレステロール / 腸内細菌 / 抗酸化 / 免疫賦活 / 減圧マイクロ波処理 / クロマトグラフィー / LC/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
孟宗竹の成分を段階的に抽出調製するバイオリファイナリーを構築する上で、2019 年度は、1)蒸圧/植物崩壊酵素処理により抽出した成分(BOS)を、吸着カラム(PD-10) とDEAEカラムクロマトグラフィーによって精製した成分のLC/MSによる構造解析を行った。また、以下のような生理活性を比較して以下の構造活性相関を試みた。2)抗酸化活性の特に強い区分は、PD-10 吸着部分にあり分子量1000以上の比較的高分子区分である可能性を見出した。3)BOSには、これまでマウスを用いた血中コレステロール低下作用が見出されていたが、このメカニズムを明確にすることを目的として、高脂肪食±BOSで飼育したマウスのフン中の腸内細菌叢の変化をメタゲノム解析を試みた。その結果、低級脂肪酸を産生する腸内細菌の選択的な増殖によりその効果が発現されることが見出された。4)更に高脂肪食±BOSで飼育したマウスの肝臓中のコレステロール合成に関与する酵素量をRNAの発現レベルで比較することを試み、発現したRNAをcDNA化するところまで行った。5)BOSのRAW264.7細胞によるNO産生による免疫賦活化作用は、陰イオン交換能成分に由来していることが見出された。 更に、竹由来の生理活性物質生産の効率化検討として、森林総研で開発された減圧マイクロ波処理装置を用い成分を抽出後その残渣から酵素や蒸気圧を利用せず熱水のみでBOSを効率的に調製する方法を見出した。また、抽出成分の生理的な機能性についても検討した結果、6)血中コレステロールを低下させることを見出し、特許申請を行った。更にこのBMW成分を肌に塗ったときに7)保湿性が見出されたので、LC/MS解析を行い成分の特定を試みた。BMWには、分子量1000以下の揮発性の高い成分が40種類ほど特定されたので、ゲルろ過とイオン交換性によるクロマト分画を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初以下の①~⑤が計画されていた。 ①竹から蒸圧処理と細胞壁崩壊酵素で抽出した成分(BOS)のクロマト分画②クロマト分画したフェルロイルキシログルカン成分(FXG)やフェノール性酸化合物系配糖体(PSC)のRAW264.7 細胞におけるNOx産生能試験③in vivoにおける抗酸化活性試験、④活性を有する成分の化学的構造や化学的特性の決定、⑤化学構造活性相関から生理活性機構の解明、⑥機能性食品や化粧品、医薬品へ利用法を検討し最終的には竹バイオマスのバイオリファイナリーの基盤技術を確立する。 この2年間で、①~⑤までは、ほぼ成就されている。当初の免疫賦活化活性、抗酸化活性に加えて、これまで当研究室で分かっていたコレステロールの低下作用の分子生物学的な解明とか、腸内細菌への影響などについても研究を進めてきた。これらの生理活性は、LC/MSの結果から、比較的類似した構造をもつ成分に起因している可能性も見出されてきている。 今回、竹からの成分抽出法では当初の蒸圧酵素処理法以外に、さらに効率化を目的として減圧マイクロ波処理技術も試みた。この方法により、蒸気圧や崩壊酵素添加することなくBOS成分を容易に調製できるため製造の効率化につながるだけでなく、その抽出成分に生理活性を見出すことができ、当初の研究から発展した。コレステロールを低下させる機能や保湿性効果については、学会発表や特許申請も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、生理活性とその活性成分を特定する構造活性相関については、ほぼ研究が進められてきた。最終年度である今年度は、「⑥機能性食品や化粧品、医薬品へ利用法を検討し最終的には竹バイオマスのバイオリファイナリーの基盤技術を確立する。」ことを目的として研究を進めたいが、機能性食品や医薬品原料としての利用については、最終的にはヒトへの効果検証、安全性試験が必要である。これまで、主としてマウスやマウスマクロファージ細胞を用いた試験を行ってきたが、残された予算と時間では、上記試験は不可能である。コレステロール低下作用や免疫賦活化作用、抗酸化作用などの生理活性は、LC/MSの結果から、比較的類似した構造をもつ成分に起因している可能性も見出されてきている。また、腸内細菌叢の変化をメタゲノム解析を試み、その結果、低級脂肪酸を産生する腸内細菌の選択的な増殖によりその効果が発現されることが見出されたので、腸内細菌叢の変化が、免疫賦活化作用や高コレステロール低下作用に対する影響については明らかにしたい。特に、高脂肪食±BOSで飼育したマウスの肝臓中のコレステロール合成に関与する酵素量をRNAの発現レベルで比較することを試み、発現したRNAをcDNA化するところまで行っているので、RT-PCRによる測定結果と腸内細菌叢の変化との相関性について解析することで、今後の結果が期待できる。 さらに、減圧マイクロ波処理によりバイオリファイナリーのエネルギー効率化が進む可能性が見出されたので、最終的に技術の実用化研究も進める。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りの支出額であり、次年度以降の使用計画通りに進めることは可能であると判断できる。
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Research Products
(3 results)