2018 Fiscal Year Research-status Report
胚が着床能力を獲得する制御機構の解析と移植する胚の質的評価法の樹立
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18K05936
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松本 浩道 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70241552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 えみ子 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20208341)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 繁殖 / 生殖 / 着床 / 受胎 / 妊娠 / 胚培養 / 体外受精 / 胚盤胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
体外受精胚の移植では、受胎率および産子率が低く、多くの研究にもかかわらず改善されていない。このことは従来の研究に加え、新規のアプローチが必要であることを物語っている。これまで着床と妊娠の成立に関する研究に取組み、マウス胚の着床能力獲得過程に関するタンパク質の発現や分解の制御機構について新たな知見を報告してきた。また、それらの分子機構を指標として、胚盤胞における遺伝子とタンパク質の発現を培養系で賦活化し、母体由来のシグナルに対する応答能力を高めた状態にして子宮へ胚移植するというアプローチで、マウス体外受精由来胚盤胞の着床能力を改善する手法を構築した。 着床率が改善したのは、通常の培養系では着床しない胚に正の効果があった結果である。一方、胚盤胞が着床能力を獲得する分子機構を明らかにするためには、負に作用する因子も同定し、それらを組合せて解析することが有効である。先行研究ではアミノ酸の組合せがマウス胚の着床率を正と負に制御することを示唆している。そこで初年度は、アルギニン(Arg)とロイシン(Leu)がマウス胚の着床能力関連因子の発現に及ぼす影響を解析した。 マウス胚用の培養液にArgまたはLeuを添加し、胚盤胞を培養後に胚移植を行ったところ、Argは着床率を低下させたのに対し、Leuは着床率に影響しなかった。一方で、ArgとLeuの複合処理は着床率を上昇させた。Argは一酸化窒素(NO)の材料となるので、NO合成酵素(NOS)の関与が考えられる。そこでマウス胚におけるNOSの発現動態を解析した。NOSにはeNOS、iNOSなどがある。またeNOSはCa2+依存的に活性化されるが、Ca2+に依存せず1,177番目のセリン残基がリン酸化されて活性化するリン酸化型eNOS(p-eNOS)がある。それらについて解析を行ったところ、ArgはeNOSの発現を上昇させることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の最近の研究結果は、着床関連因子を三つの因子群に分類する必要性を示唆していた。すなわち、着床に必要な因子である因子A群、着床に必要な因子で着床時に局在の変化する因子である因子B群、着床能力誘起時に発現するが着床期には消失しなければならない因子である因子C群、である。また、それらの分子機構を指標として、胚盤胞における遺伝子とタンパク質の発現を培養系で賦活化し、母体由来のシグナルに対する応答能力を高めた状態にして子宮へ胚移植するというアプローチで、マウス体外受精由来胚盤胞の着床能力を改善する手法を構築してきた。 マウス胚において着床率が改善したのは、通常の培養系では着床しない胚に正の効果があった結果である。一方で、胚盤胞が着床能力を獲得する分子機構を明らかにするためには、負に作用する因子も同定し、それらを組合せて解析することが有効である。本年度は、この胚盤胞が着床能力を獲得する分子機構において、正に作用する因子および負に作用する因子をそれぞれ同定することを当初の目的とし、研究を進展させることができた。すなわち、Argは着床率を低下させるのに対し、ArgとLeuの複合処理は着床率を上昇させることを明らかにした。 Argは一酸化窒素(NO)の材料となるので、NO合成酵素(NOS)の関与が考えられる。そこでマウス胚におけるNOSの発現動態を解析した。NOSにはアイソフォームがある。また同じアイソフォームでも、Ca2+依存的に活性化されるものと、Ca2+に依存せずリン酸化により活性化するものもある。それらについて解析を行ったところ、ArgはeNOSの発現を上昇させることが明らかになった。 これらの結果は、着床能力獲得過程における分子機構について新たな知見を加えたものである。また今後、体外受精胚の移植における受胎率および産子生産率の改善の指標にすることが出来る点でも重要な結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
・胚の着床能力に関わるNOSアイソフォームの発現動態とアミノ酸の作用 マウス胚においてArgがeNOSの発現を上昇させることが明らかになった。Arg添加は着床率を低下させる。一方でArgとLeuの複合処理は着床率を上昇させる。そこでArgとLeuの複合添加がNOSアイソフォームの発現動態におよぼす作用を解析する。マウス胚用の基礎培養液にはグルタミン(Gln)が含まれている。すなわちArgによる着床率低下はGlnとの協合作用である可能性が考えられる。そこでGlnを除去した基礎培養液にArgを添加した際の着床率を解析する。また、Glnを除去しArgを添加した際の胚盤胞におけるNOSアイソフォームの発現動態を解析する。またNOSの上流機構についても解析を行う。以上のことから、胚盤胞の着床能力獲得におけるアミノ酸組み合わせの作用を明らかにし、どのようなNOSアイソフォームがその作用機序に関与しているかを明らかにする。 ・胚盤胞のNO産生におよぼすアミノ酸の作用 アミノ酸の組合せがNOS発現と着床率に作用すると考えられることから、胚盤胞におけるNO産生を解析する。NO産生を検出後に子宮への胚移植を行うことを前提として、非侵襲的なNOの測定法を検討する。本研究では、Diaminofluorescein-FM diacetate(DAF-FM DA)で細胞内NOのライブアッセイを行う。まず、DAF-FM DAの添加濃度、添加時間、反応開始からのNO産生速度と測定時間の条件検討を行い、胚盤胞における至適測定条件を確立させる。次に、各種アミノ酸の添加培養時におけるNO産生を測定する。NOSアイソフォームの発現動態の結果と合わせ、どのようなアミノ酸の組合せが、どのNOS発現に作用し、NO産生量のどのように増減させ、着床率に作用するかの機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
<理由>タンパク質の発現解析を含め、いくつかの実験項目が予定よりはかどらなかった。以上の理由から、次年度使用金額が生じた。
<使用計画>実験を円滑に進める為の物品費として使用する。また、研究成果を学会等で発表するための旅費としても使用する。
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