2018 Fiscal Year Research-status Report
ルーメン内微生物体タンパク質合成に寄与する発酵混合飼料中炭素画分の解明
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18K05943
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
近藤 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50432175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発酵混合飼料 / 可溶性糖類 / ルーメン |
Outline of Annual Research Achievements |
発酵混合飼料は、個々の酪農家が毎日行う飼料調製を外部に委託することで、利用する酪農家での飼料調製の手間が省ける利点があるが、飼料設計時と比べて発酵に伴い栄養成分が変化していることが予想される。特に炭素や窒素画分の変化はルーメン内におけるアンモニア濃度や微生物体タンパク質合成量に影響し、その結果、乳牛体内でのタンパク質の利用効率も低下する可能性がある。そこで本研究では乳牛用の発酵混合飼料を夏季、秋季、冬季に調製し,発酵に伴う炭素および窒素画分の変化を調査した。その結果,乾物あたりの可溶性糖類の含量は発酵前で4.3~7.3%に対して発酵後で0.8~4.0%であった。可溶性糖類含量の変化率は-36~-84%と発酵により減少し、特に夏季でその減少量が高かかった。一方、混合飼料中の非繊維性炭水化物の含量は平均で35%程度であり、発酵前後での変化率は-8.5~+2.8%と可溶性糖類と比べてその変化率は小さかった。窒素画分では、全窒素あたりの可溶性窒素画分の割合は発酵前で平均25%、発酵後で32%であり、特に夏季には発酵により増加した割合が高かった。アンモニア態窒素はサイレージ発酵により増加したが、全窒素に占める割合としては2~6%と少なかった。続いて、これらの混合飼料をin vitroのルーメン培養系に加えた結果、発酵前と比べて発酵後の混合飼料では、培養4時間、8時間後にかけてアンモニア濃度が高く維持されており、微生物体タンパク質への取り込み量が少ない可能性が示唆された。これらの結果から、発酵混合飼料中の炭素および窒素画分は調製時と比べて発酵後(家畜への給与時)に変化しており、その変化は夏季に多く、ルーメン内におけるタンパク質の利用効率の低下が起きていることが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ年間を通じて、実用規模で調製された混合飼料を対象にサイレージ発酵により炭素および窒素画分の変化量を明らかにし、さらにそれらの混合飼料を用いてルーメン微生物の培養を行い、アンモニアを指標にして窒素画分の利用性を評価した。炭素画分の変化から次年度の検討課題に続く成果が得られたと思われる。ただし、調査した農場数が1か所のみであったため、今後は混合飼料を調製する農場数を増やし再検証することが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
混合飼料の発酵に伴う炭素および窒素画分の変化を複数の農場を対象に調査する。さらに、ルーメン微生物のタンパク質合成に伴うアンモニアの取り込みに対して、混合飼料の発酵による影響や糖類の影響をin vitroルーメンの培養系により評価する。
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Causes of Carryover |
サンプルの採取を研究協力者が行ったため、サンプル採取のための出張費用の支出が抑えられた。また外部に委託する分析費用を学内で分析したため、委託費用の支出が抑えられた。次年度にはサンプルの収集範囲を広げるため、その際の出張費や分析費などに充当する。また老朽化した機器の更新も計画する。
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