2019 Fiscal Year Research-status Report
ルーメン内微生物体タンパク質合成に寄与する発酵混合飼料中炭素画分の解明
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18K05943
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
近藤 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50432175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発酵混合飼料 / 可溶性糖類 / ルーメン / デンプン |
Outline of Annual Research Achievements |
牛用の混合飼料の発酵貯蔵に伴う栄養成分の変化について、前年度に続き事例数を増やすため、6か所の農場にて調査を行った。各農場にて混合飼料の調製時(発酵前)と牛への給与時(発酵後)にサンプルを2~3回収集し、発酵前後での炭素および窒素画分の成分の変化を調査した。その結果、炭素画分としてデンプンは発酵前後ともに平均24%であり、発酵前後において含量の変化は認められなかった。一方、可溶性糖類の含量は発酵前で4.3%であったのに対して、発酵後では1.0%となり、いずれの農場でも共通して8割近く減少した。また、窒素画分では、全窒素あたりの可溶性窒素画分の割合は発酵前で平均26%、発酵後で41%といずれの農場においても増加したが、増加量は10から23%ポイントと様々であった。またその他の窒素画分として、プロテアーゼによる分解性画分、酸性デタージェント不溶性画分は、発酵に伴う変化は認められなかった。これらのことから、混合飼料の発酵貯蔵過程で起こる窒素画分の変化は、アンモニアや遊離アミノ酸、ペプチドなどが含まれる低分子の画分のみが増加することが明らかとなった。続いて、これらの混合飼料をin vitroのルーメン培養系に加えた結果、発酵前と比べて発酵後の混合飼料では、培養液中のアンモニア濃度が高く維持されており、微生物体内へアンモニアの取り込み量が少ない可能性が示唆された。さらに、微生物のタンパク質合成阻害剤を培養系に加えることでアンモニアの取り込み量を比較した結果からも、発酵後の混合飼料では発酵前と比べて、アンモニアの取り込み量が低下していることが間接的に証明した。以上より、混合飼料を発酵貯蔵させることで、ルーメン微生物がエネルギーとして利用できる炭素画分が減少することで、微生物体内へのアンモニアの取り込み量が減少し、タンパク質合成量が低下する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の追試として、国内の異なる6農場を対象に合計約30検体の混合飼料を対象に調査を行い、上記の結果を得たことから、十分なデータ量を蓄積したと考えられる。また次年度の行う予定の泌乳牛を用いる実験についても、予備実験を行い、サンプリング方法の確認と分析方法の確立を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで多くの事例を調査するために、多検体を処理することが可能なin vitroでのルーメン培養系により混合飼料中の炭素や窒素利用性を明らかにしてきた。次年度は、泌乳牛を対象に、in vivoにおいて、発酵混合飼料中の炭素・窒素画分の変化がルーメン内の微生物体タンパク質合成量におよぼす影響を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
サンプルの採取を研究協力者が行ったため、サンプル採取のための出張費用の支出が抑えられた。加えて、学会の中止に伴い、出張費用の支出が抑えられた。また、年度途中で機器が故障し、更新を行ったため、予定外の支出があったが、研究室保有の試薬で分析を遂行できたため、残予算が発生した。繰り越す予算は、適宜分析用試薬や研究打ち合わせに必要な旅費に充てることを計画している。
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Research Products
(2 results)