2022 Fiscal Year Research-status Report
長期維持型卵胞の形成増強法の開発と卵巣機能への影響の解析
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18K05944
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 実紀 京都大学, 農学研究科, 助教 (20243074)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 哺乳類 / 卵巣 / 卵胞 / 雌 / 生殖 / 生殖寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、哺乳動物の卵巣で、性成熟後まで休眠・維持され、生殖寿命後期の卵子産生に寄与する長期維持型卵胞の形成を増強することにより雌の生殖寿命の延長は可能か、また、未成熟期から発育を開始する早期発育型の卵胞は必要かを明らかにすることである。本年度、長期維持型原始卵胞の形成を促進する機能性因子の検索に関しては、Lgr5のアゴニストであるR-spondin 1とこれがシグナル伝達を増強するWnt3aのマウス胎仔卵巣の器官培養系への共添加の効果について、培養手法・条件を変更して検討を行った。組織標本で観察したところ、平均値としては卵胞数等がR-spondin 1とWnt3aを共添加して培養した卵巣で対照区の培養卵巣に比べて多くなっていたが、卵巣ごとの差異が大きいことと、標本作製の不良等により卵胞数の計測を行った切片の抽出率が低いことから確実ではない。また現時点で、卵胞数の増加、未発育卵胞の比率の上昇に対してR-spondin 1単独での効果はないように見える。また、低酸素条件での培養も検討したが、標本を作製した対照群の一標本で強度の変性が発生しており(卵巣組織ではなかった可能性もある)、定量的評価ができなかった。全体に組織傷害が散見され、胎仔組織での低酸素環境や先に述べた培養手法で想定される低酸素状態での作用の検討を目的としているが、今回試行した酸素濃度5%の条件は厳しすぎた可能性がある。長期維持型顆粒層前駆細胞における発現遺伝子の解析に関しては、前年度に行った出生直前マウス胎仔卵巣の表層細胞濃縮画分と残存分画でのRNAシーケンス解析の複数回の結果を合わせた再解析を行い、発現に差異がみられる遺伝子の中から細胞分画や機能制御のための候補を選択し、発現の分布および時間的変化の検討のために試料を採取したが、処理過程の不備や遅延で結果が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
長期維持型原始卵胞の形成を促進する機能性因子の効果について有用な結果が得られなかった。また細胞の分画と発現遺伝子の解析から候補の選択は行えたが、長期維持型卵胞の形成への関与の可能性の検討や、細胞分画や機能制御に有用な遺伝子の同定はまだできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞画分間で発現に差異が見られた遺伝子から選択した候補因子について、in situ hybridization法やRT-qPCR法、免疫染色により卵巣での局在と日齢による変化を調べる。局在および時間的動態が妥当な遺伝子については、可能であれば機能解析を行う。また、機能性因子の検索については採取済み標本の追加解析を行うとともに、培養条件の修正と追加実験を行う。
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Causes of Carryover |
計画した実験・解析の結果を得るまでに時間を要し、その後の検討が未実施になった。試薬、器具類、実験動物の購入および共通機器使用料に使用するとともに、遺伝子発現解析の追加が必要であれば外部委託により行う。
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