2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムリシーケンスデータに基づくウシ脂肪交雑を支配する遺伝子変異の網羅的探索
Project/Area Number |
18K05945
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
笹崎 晋史 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50457115)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万年 英之 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20263395)
大山 憲二 神戸大学, 農学研究科, 教授 (70322203)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 脂肪交雑 / ウシ / ゲノムリシーケンス / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
GWASにより同定された脂肪交雑に対する候補領域について、ゲノムリシーケンスにより領域に存在する変異の網羅的探索を行った。本研究では、GWASにより同定された3つの候補領域のうち7番染色体の10-30Mbpを対象に行った。ゲノムリシーケンスには兵庫県黒毛和種肥育牛集団1836頭の内からGWASに用いた上下群の200頭から8頭を選出した。上位100個体からGWAS での最有意SNP(NO.1 SNP)の遺伝子型がGG型(優良アリル)を持つ去勢牛4個体、下位100個体からAA型(劣性アリル)を持つ去勢牛4個体を選択した。サンプルの8個体とデータベース上のヘレフォードの塩基配列を比較したところ、127,090個の多型を検出した。全多型をNO.1 SNPとの連鎖不平衡の度合いについて分類し、高い連鎖不平衡の関係にある(遺伝子型の一致度が16/16-13/16)20,102個の多型を抽出した。次にこれらの多型をアノテーション(遺伝子外の多型か、遺伝子内の場合遺伝子上のどこにあるか)ごとに分類し、タンパク質の機能に影響する可能性が比較的高いと考えられる遺伝子上流、遺伝子下流、5’UTR、3’UTR、非同義置換に位置する多型をリストアップした。それらは全部で1653多型であり、179の遺伝子に含まれていた。そこで、過去の研究報告やデータベースによりリストに存在する遺伝子の機能について調査した。最終的に遺伝子の機能や遺伝子の含まれるパスウェイより、脂質代謝に影響すると考えられた8個の遺伝子、TECR、GCDH、PLIN3、DPP9、SIRT6、ACSL6、SLC27A6を候補遺伝子として抽出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年計画であり、各年度の大まかな目標は以下の通りである。<平成30年度>ゲノムリシーケンスによる候補多型の網羅的検出。全多型に対して、連鎖不平衡および遺伝子の機能の観点から候補多型の絞り込み。<平成31年度(令和元年度)>絞り込まれた候補多型に対して、集団での効果の検証。<令和2年度>集団で効果の見られた責任変異有力候補多型について遺伝子の機能解析。 今年度は計画通りゲノムリシーケンスを行い、候補領域に存在するおよそ12万の多型を検出した。それらに対して、候補となる多型の絞り込みを行ったところ8つの候補遺伝子を抽出することができた。この時点で、次年度以降の対象となる有力な候補多型が全く検出されない可能性も危惧されたが、いくつか検証に値すると考えられる多型が検出されたため、上記計画と照らし合わせてみて概ね順調であると言える。しかしながら対象となる多型が一年で検証するには少し多いため、検証実験における優先順位の設定や、遺伝子を絞り込むためのより包括的な手段の検討が必要であると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回リシーケンス解析によりリストアップされた8遺伝子は、脂肪の合成や分解といった脂質代謝に機能的に含まれる遺伝子であり、結果的に脂肪交雑に影響を及ぼす可能性が見込まれる。また、遺伝子の機能発現に影響を与えうる遺伝子上流や遺伝子下流、3’UTR、5’UTR、非同義置換といった多型を持つことから、この中に責任遺伝子がある可能性が高いと考えられる。なかでも脂肪として蓄積される長鎖脂肪酸の取り込みに関わるSLC27A6遺伝子においては、8遺伝子のうち唯一アミノ酸置換を伴う非同義置換多型が存在しており、現時点で最も有力な候補と考えられた。 今後は、上記の候補多型について、兵庫県集団539個体に対して遺伝子型判定を行い、脂肪交雑との関連解析を行う。本集団はGWASと同じ兵庫県集団より種雄牛や形質データの分散等を考慮して選択したものであり、DNAは準備済みである。 次に、兵庫県集団において効果の見られた遺伝子変異について、遺伝的背景の異なる集団を用いた効果の検証を行い、実際の肥育牛集団に対する選抜マーカー適用の可能性について調査する。用いる集団は宮崎県及び岐阜県において出荷された黒毛和種肥育牛、各597頭及び461頭を用いる。また、異なる集団における効果の普遍性を調査することにより、より高い確度で候補変異が脂肪交雑に対する責任変異であるかを確認することができると考えられる。8遺伝子多型について順次検証を行っていき、どの集団においても高い効果が確認された多型については、次年度以降の機能解析の対象としてピックアップする。
|
Research Products
(1 results)