2019 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムリシーケンスデータに基づくウシ脂肪交雑を支配する遺伝子変異の網羅的探索
Project/Area Number |
18K05945
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
笹崎 晋史 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50457115)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万年 英之 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20263395)
大山 憲二 神戸大学, 農学研究科, 教授 (70322203)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 黒毛和種 / 脂肪交雑 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、GWASにより同定された脂肪交雑に対する候補領域について、遺伝子の機能や遺伝子の含まれるパスウェイより、脂質代謝に影響すると考えられた8個の遺伝子、TECR、GCDH、PLIN3、DPP9、SIRT6、ACSL6、SLC27A6を候補遺伝子として抽出した。今年度は、その中でも唯一対象となる多型がアミノ酸置換であったSLC27A6遺伝子のK81M多型を最有力候補多型と考え効果の検証を行った。 兵庫県黒毛和種集団904個体を用いて、TaqMAN法により本多型の遺伝子型判定を行い、ロース脂肪割合に対する効果を調査した。遺伝子型判定の結果、KK、KM、MMの各遺伝子型の頻度はそれぞれ0.059、0.402、0.540であり、Kアリル、Mアリルの頻度はそれぞれ0.259および0.741であった。また、分散分析による統計解析の結果、p値はp = 0.0009となり、本多型がロース脂肪割合に対して非常に高い効果を持つことが確認された。また、同様の集団を用いて、GWASにおいてもっとも有意性を示したSNP(NO.1 SNP)の効果を確認したところ、ANOVAのp値はp = 0.0049となり、本研究でのK81M多型のp値は、NO.1 SNPの p値よりも低く、 K81M多型はロース脂肪割合の原因変異である可能性が示唆された。 SLC27A6遺伝子は、脂肪酸輸送たんぱく質であるFATPファミリーメンバーに含まれ、長鎖脂肪酸の取り込みと、アシルCoA合成酵素活性の機能を持つ。骨格筋や脂肪組織において細胞内に取り込まれる脂肪酸量は、筋肉や脂肪組織に存在する脂肪滴に貯蔵されるトリグリセリド量に関わっている。以上によりSLC27A6遺伝子の機能変化が、ロース脂肪割合に対して影響を及ぼす可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年計画であり、各年度の大まかな目標は以下の通りである。<平成30年度>ゲノムリシーケンスによる候補多型の網羅的検出。全多型に対して、連鎖不平衡および遺伝子の機能の観点から候補多型の絞り込み。<平成31年度(令和元年度)>絞り込まれた候補多型に対して、集団での効果の検証。<令和2年度>集団で効果の見られた責任変異有力候補多型について、他集団での効果の検証および遺伝子の機能解析。 今年度は計画通り、前年度絞り込まれた候補遺伝子より、SLC27A6遺伝子のK81M多型を選出し、集団の効果の検証を行った。本多型は候補多型中唯一のアミノ酸置換であり、機能的にも有力な候補であったが、集団解析の結果、GWASの最有意SNPを上回る効果を確認することができ、原因多型として非常に有力であると考えられた。以上により、計画通り研究を進め、原因多型の同定に向けて有力な結果が得られたという点において進捗状況は概ね順調であるといえる。しかしながら今年度は対象が1多型しか行われておらず、他にも候補となる多型が残されているため、今後は今回の多型の詳細な解析と並行して残りの多型についても検証していく必要があると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
脂肪交雑に対する有力候補となるSLC27A6遺伝子のK81M多型について兵庫県黒毛和種集団904個体を用いて効果の検証を行ったところ、GWASの最有意SNPを上回る効果を確認することができた。 今後は、遺伝的背景の異なる集団を用いて効果の検証を行い、実際の肥育牛集団に対する選抜マーカー適用の可能性について調査する。用いる集団は宮崎県及び岐阜県において出荷された黒毛和種肥育牛、各597頭及び461頭を用いる。本集団は形質データやDNAサンプル等は準備済みであるが、兵庫県集団では脂肪交雑の対象形質として枝肉の画像解析データにより算出されたロース脂肪割合を用いて解析を行ったが、宮崎県及び岐阜県の2集団では画像解析データが収集されていないため、対象形質としては脂肪交雑基準値(BMSナンバー)を用いる。過去の研究でこれら2形質の間には非常に高い遺伝相関(0.99)があることがわかっており解析には問題はない。これら2集団を用いて異なる集団における効果の普遍性を調査することにより、より高い確度で候補変異が脂肪交雑に対する責任変異であるかを確認することができると考えられる。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)は34,386円と少額で年度の計画に大きな変更はない
|
Research Products
(2 results)