2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on Novel Hereditary Gastrointestinal Cancers in Dogs
Project/Area Number |
18K05969
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
平田 暁大 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 助教 (30397327)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 雅弘 麻布大学, 獣医学部, 教授 (20170590)
川部 美史 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20635875)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 遺伝性疾患 / 遺伝病 / イヌ / ジャックラッセルテリア / 遺伝性消化管ポリポーシス / 家族性大腸腺腫症 / APC遺伝子 / 消化管腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ジャックラッセルテリア(J.R.テリア)という犬種において、胃あるいは大腸に腫瘍性ポリープ(腺腫あるいは腺癌)が発生する症例が増加しており、その犬種特異的な発生から遺伝性疾患である可能性が指摘されている。我々は、その病態の類似性から本疾患がヒトの遺伝性疾患である家族性大腸腺腫症(FAP)に相当する疾患ではないかと考え、本研究では、消化管腫瘍性ポリープを罹患したJ.R.テリア21頭分のDNAを収集し、FAP の原因遺伝子であるAPC遺伝子を解析した。その結果、消化管腫瘍性ポリープの罹患犬全頭に共通して認められる生殖細胞系列変異(c.462A>T及びc.463A>T)を同定し、J.R.テリアの消化管腫瘍症がAPC遺伝子変異に起因する遺伝性疾患であることを証明した。 腫瘍性ポリープからDNAを抽出し、APC遺伝子の解析を行なったところ、LOH(野生型アレルの消失)およびフレームシフト変異が認められ、野生型アレルへのセカンドヒットによる機能的なAPCタンパクの喪失が腫瘍形成に関与していることが明らかになった。免疫組織学的解析においても、腫瘍細胞においてβ-cateninの核内および細胞質内への蓄積が認められ、機能的なAPCタンパクの喪失が示唆された。 また、同定したAPC遺伝子変異の有無を短時間で簡便に判定できる遺伝子検査法として、PCR-RFLP法およびTaqMan PCR法を開発し、これまでに収集した遺伝子変異保有個体のDNA検体を用いて検証した。 さらに、本疾患が他犬種でも認められないか検討するため、麻布大学の遺伝子バンクに保存されていた消化管の腺腫あるいは腺癌の症例のDNAサンプルを収集し、同定したAPC遺伝子変異の有無を検討したところ、J.R.テリア以外の犬種の罹患犬には同変異は認められず、本疾患はJ.R.テリアに特有の疾患であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的は、J.R.テリアに好発する消化管の腫瘍性ポリープが特定の先天的な遺伝子変異に起因する遺伝性疾患であることを証明することである。本年度は3年間の研究期間の中間年度であるが、すでに本疾患が新規の遺伝性疾患であることを証明し、論文はすでに受理された(Carcinogenesis, in press)。 昨年度および本年度の2年間で開発予定であった遺伝子検査法については、PCR-RFLP法およびTaqMan PCR法による検査法を開発し、これまでに収集した遺伝子変異保有個体のDNAサンプルを用いて検証を終えた。現在、論文を執筆中である。 同様に前半の2年間で検討を予定していた治療法の開発については、岐阜大学動物病院において、遺伝性消化管ポリポーシスのJ.R.テリア12頭について、非ステロイド系抗炎症剤の治療効果を検討済みである。 本年度および来年度で、2種類の疫学調査を予定している。疾患の犬種特異性を検討する調査では、J.R.テリアおよびそれ以外の犬種の消化管上皮性腫瘍罹患症例のDNAサンプルを収集し、APC遺伝子変異の有無を検討した。当初の予定通り、麻布大学の犬の遺伝子バンクに保存されていたDNAサンプルを利用することで速やかに検体を収集することが可能であった。また、国内で飼育されているJ.R.テリアにおける遺伝子変異保有率の調査を行うため、検体の収集に着手した。当初、ブリーダーからペットショップへの移動する過程で子犬の検体を採取することを予定していたが、広い年齢層のJ.R.テリアを調査するため、一般家庭で飼育されているイヌを対象とする検査に変更し、すでに動物病院へ依頼を行なった。来年度の始めには検体が届き、解析が開始できる予定である。 研究代表者と研究分担者で同時に複数の研究を進めているが、全ての研究において大きな遅れはなく、概ね順調に研究は進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度、国内で飼育されているJ.R.テリアにおける遺伝子変異保有率を明らかにするため、検体の収集に着手した。来年度、収集した血液検体からDNAを抽出し、確立した遺伝子検査法を用いて解析を行う。 疾患の犬種特異性を検討する研究では、J.R.テリアおよびそれ以外の犬種の消化管上皮性腫瘍罹患症例について、同定した特定のAPC遺伝子変異(c.462A>T及びc.463A>T)の有無について検索し、J.R.テリア以外の犬種では同変異は認められなかいことを明らかにした。しかし、ヒトのFAPではAPC遺伝子の様々な部位に生殖細胞系列変異が認められることが知られており、今年度は次世代シーケンサーを用いたターゲットシークエンスによりAPC遺伝子の全領域を検索する予定である。 本疾患が特定のAPC遺伝子変異に起因する遺伝性疾患であることは立証したが、研究対象が動物病院で治療されていた家庭飼育動物であったため、親や兄弟の追跡調査が難しく、疾患が家族性に伝播していることは証明できていなかった。今年度、臨床獣医師の協力により、家族性伝播が疑われる家系の検体を収集することができたため、来年度、遺伝子検査および病理学的検査を進める。 来年度は研究最終年度であり、全ての研究項目について成果報告を行う。
|
Causes of Carryover |
3月に開催予定であった学会(第26回ヒトと動物の関係学会学術集会)が、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となったため、次年度使用額とした。次年度に治療法開発の研究成果報告の予算として使用する。
|
Research Products
(7 results)