2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K05975
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小澤 真 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (50568722)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 豚 / 人工合成 / 増殖性 |
Outline of Annual Research Achievements |
畜産衛生と公衆衛生の両面において重要な病原体である豚インフルエンザウイルスのブタ細胞における増殖性の分子基盤を解明することを目的として、2009年以前の国内養豚で流行していたH1N2亜型古典的豚インフルエンザウイルス、ならびに2009年にヒト社会でパンデミックを引き起こし国内養豚でも急速に蔓延したA(H1N1)pdm09ウイルスの人工合成系を樹立・活用して、ブタ由来培養細胞における高い増殖性を付与する遺伝的要因の解明を試みている。 H1N2亜型古典的豚インフルエンザウイルス株A/swine/Miyazaki/1/2006 (H1N2)の人工合成系を樹立するため、当該ウイルス株の入手と培養増殖に続いて、全8本の遺伝子分節のcDNAのウイルス遺伝子発現用プラスミドへのクローニングを実施した。これまでに7本の遺伝子分節cDNAのクローニングを完了した。残りの遺伝子分節cDNAがプラスミドへクローニングされ次第、野生型ウイルスの人工合成を行って、各プラスミドの機能性を確認する。一方、A(H1N1)pdm09ウイルスの人工合成系として、すでに論文誌上で報告されている(Ito et al., Nature, 2009)パンデミック初期分離株A/California/04/2009 (H1N1)のウイルス遺伝子発現用プラスミドセットを入手し、実際にこれらのプラスミドを用いることで野生型ウイルスが作出できることも確認した。 また、両ウイルス株の増殖性の比較・検証に用いるブタ由来培養細胞として、既存の培養細胞6種類を入手したほか、初代培養細胞由来不死化細胞3種類を新たに樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A/swine/Miyazaki/1/2006 (H1N2)が有する全8本の遺伝子分節のうち、PB2遺伝子分節のみ、そのcDNAのプラスミドへのクローニングが完了していない。当該遺伝子分節は、8本の遺伝子分節の中で最も長く、また遺伝子中央領域が欠損したDI (defective interference)遺伝子となる頻度が高いことも知られていることから、実験計画当初からcDNAのプラスミドクローニングの難航が予想されおり、近日中のクローニング完了も見込める。一方、A(H1N1)pdm09ウイルスの人工合成系の検証や、ブタ由来培養細胞の収集ならびに樹立は、計画通りに完了した。したがって、本研究計画全体の進捗に大きな問題はないと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
A/swine/Miyazaki/1/2006 (H1N2)のPB2遺伝子分節cDNAのプラスミドクローニングを継続し、完了次第、野生型ウイルスの人工合成を行って各プラスミドの機能性を確認する。両野生型ウイルスが作出されたら、全9種類のブタ由来培養細胞における増殖性を経時的に調べる。試験する多くの培養細胞においてA(H1N1)pdm09ウイルスの方が高い増殖性を示すことが期待されるが、その中でも最も顕著な増殖性の差が見られた培養細胞を、以降の研究におけるモデル細胞として利用する。
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