2018 Fiscal Year Research-status Report
エボラウイルスの選択的複製阻害剤を用いた複製機構の解明と創薬基盤の構築
Project/Area Number |
18K05985
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小川 健司 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (50251418)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感染症 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
EBOVは、全長約18-19kbのマイナス鎖RNAをゲノムとするウイルスであり、ゲノム上には、NP、VP35、VP40、GP、VP30、VP24およびLの7種類のORFが存在する。ウイルス粒子内のゲノムRNAはNP、VP35、VP30およびLと結合してリボヌクレオプロテイン(RNP)複合体として存在する。NPは多量体、VP35は三量体、VP30は二量体をそれぞれ形成すると報告されている。また、VP35は、Lタンパク質のco-factorとしてウイルスの複製に重要な役割を果たす一方、宿主の因子であるダイニン軽鎖LC8と結合することが知られている。本研究では、二分子化学発光相補反応を利用して、RNP構成タンパク質のホモ多量体形成やタンパク質間相互作用を数値化する評価系を構築した。まず、海洋性カイアシ(Gaussia princeps)由来の分泌型ルシフェラーゼ(Gluc)のN末端またはC末端の分割断片(Spli-Gluc)と、RNP構成タンパク質との融合タンパク質発現プラスミドを構築した。これらのプラスミドを組み合わせてHeLa細胞に導入し、24時間培養後に上清中のルシフェラーゼ活性を測定することにより、タンパク質間相互作用や多量体形成の数値化の可否を検討した。VP35およびVP30のSpli-Gluc融合タンパク質を用いた実験では、培養上清中に高いレベルのルシフェラーゼ活性が認められ、VP35およびVP30のホモ多量体形成が数値化し得ることが示された。同様の実験により、VP35とダイニン軽鎖LC8との相互作用も確認された。NPの各構造領域とSpli-Gluc融合タンパク質を用いた実験により、Core domainのN-lobe領域同士に強い相互作用が認められ、この領域がNPの多量体形成に重要である可能性が示唆された。また、N-lobe領域とVP35の相互作用も認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に実施予定であった評価系の構築はほぼ100%達成した。構築した評価系は1) NPホモ多量体化、2) VP35ホモ多量体化、3) VP30ホモ多量体化、4) NP-VP35相互作用、5) VP35-LC8相互作用、6) EBOV複製(ミニゲノムアッセイ)の6種類である。いずれの評価系もS/B比はハイスループットスクリーニングへの応用に十分な値が得られており、計画に遅滞なくハイスループットフォーマットへの展開、機械化、検証およびスクリーニングへと移行できる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、EBOVの複製に重要な役割を果たすウイルス由来のタンパク質の内、RNP構成タンパク質(NP、VP35、VP30)に着目し、分割ルシフェラーゼの再構成を応用した方法を用いて、これらのホモ多量体形成やタンパク質間相互作用を数値化する評価系を構築した。本年度は、前年度に構築した評価系をハイスループットフォーマットに応用展開し、理化学研究所天然化合物ライブラリー(NPDepo: 約20,000化合物)、大阪大学化合物ライブラリー(約60,000化合物)、東京大学創薬機構化合物ライブラリー(約210,000化合物)の大規模スクリーニングを実施する。一次スクリーニングでは、濃度依存的にGlucの再構成を阻害し、全長Glucの活性を阻害せず、かつ細胞傷害活性を示さない化合物を一次ヒット化合物とする。二次スクリーニングでは、複製アッセイ系を用いてEBOV由来RNAポリメラーゼによるレポーター遺伝子の転写を濃度依存的に阻害し、CMVプロモーター制御下のmRNA転写を阻害しない化合物を選抜する。更に、ここで得られたヒット化合物を有機化学的に合成展開し、効果、作用選択制および安全面でより優れた化合物を選抜し、創薬シード化合物を得ることを最終目標とする。
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Causes of Carryover |
平成30年度に実施した遺伝子組換え実験と細胞培養実験は、ほとんど遅滞なく計画通りに達成できたため、次年度に予定されており、より消耗品費の必要なスクリーニングに予算を充てることとした。
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