2019 Fiscal Year Research-status Report
エボラウイルスの選択的複製阻害剤を用いた複製機構の解明と創薬基盤の構築
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18K05985
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小川 健司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50251418)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感染症 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
エボラウイルス病(エボラ出血熱)は、エボラウイルス(Ebolavirus: EBOV)の感染による致死率の極めて高い急性熱性感染症であり、現在のところ決定的な予防および治療法は確立されていない。我々は、EBOVのRNP複合体を構成するタンパク質の中でもRNAポリメラーゼのco-factorとしてウイルスの複製に必須の役割を果たすVP35に着目し、これを標的とした化合物のスクリーニングを実施した。我々は、まず分泌型ルシフェラーゼであるGaussia princeps luciferase(Gluc)を用いた二分子発光相補性反応を応用し、VP35の多量体形成過程を可視化・数値化する評価系を構築した。GlucのN末端およびC末端分割断片(それぞれGlucNおよびGlucC)とVP35の融合タンパク質をコードする哺乳動物細胞発現ベクターを作製し、組み合わせてHeLa細胞に遺伝子導入したところ、培養上清中に高いレベルのルシフェラーゼ活性が認められ、VP35の多量体形成の数値化に成功した。この評価系を384-well plateに対応した高速評価系に展開し、東京大学創薬機構の約22万化合物の大規模スクリーニングを実施した。VP35同士の相互作用によるルシフェラーゼの再構成を濃度依存的に阻害し、全長Glucの活性は阻害せず、かつ細胞傷害活性を示さない2,373化合物を一次ヒット化合物として選抜した。二次スクリーニングでは、EBOVのミニゲノムを用いた化合物の評価を実施し、ミニゲノムアッセイにおけるEBOVの複製を濃度依存的に阻害する13化合物を選抜した。これらのヒット化合物は、新規抗エボラウイルス病薬として応用される事が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度には、予定されていたミニゲノムアッセイの構築に成功し、実施予定であったVP35ホモ多量体化評価系を応用した化合物の大規模スクリーニングを完了した。ヒット化合物の更なる検証を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、EBOVの複製に重要な役割を果たすウイルス由来のタンパク質の内、RNP構成タンパク質に着目し、分割ルシフェラーゼの再構成を応用した方法を用いて、VP35の多量体形成を数値化する評価系を構築し、これを応用した化合物の大規模探索を実施した。また、昨年度に構築を完了したミニゲノムアッセイを用いた実験から、ある特定のタンパク質(仮に"EBOVi"をと呼称する)を細胞に発現させるとEBOVの複製が著しく阻害される事を発見した。最終年度には、VP35評価系で選抜されたヒット化合物の検証を進めるとともに、EBOViの複製阻害機構の詳細な検討を実施する。
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Causes of Carryover |
スクリーニングが予想より早期に終了し、予定していた細胞培養関連の予算に余剰が生じた。この予算は次年度に必要となった遺伝子組換えの予算に振り替える事とする。
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