2018 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子組換えイバラキウイルスを用いた二本鎖RNAウイルス病原性発現機序の解明
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18K05992
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松尾 栄子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (40620878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万谷 洋平 神戸大学, 農学研究科, 助教 (30724984)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 二本鎖RNAウイルス / 遺伝子改良法 / リアソータントウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、流行性出血病ウイルス血清型2(EHDV-2)に属するイバラキウイルス(IBAV)をbackboneとして、外殻タンパク質であるVP2とVP5をEHDV-6もしくはEHDV-7に置き換えたリアソータントEHDVを作製した。これら2種類のリアソータントEHDVの増殖能をIBAVおよびEHDV-7と比較したところ、リアソータントEHDVの増殖能の方が低かった。特にEHDV-6の外殻を持つEHDV(EHDV6/2)の増殖能は約50%低下した。次に、感染の可視化のために、VP6に蛍光タンパク質を挿入したEHDVをそれぞれ作製した。蛍光タンパク質は、ニホンウナギ由来のビリルビン存在下で緑色蛍光を発するビリルビンセンサー、UnaGを用いた。UnaG遺伝子は420bpと小さく、10回以上ウイルス継代後も安定してゲノム中に保持されていた。各UnaG標識EHDVの増殖能は、UnaGを挿入していないEHDVよりも低かった。また、UnaG標識EHDV6/2の増殖能は特に低かった。以上より、外殻のみをEHDV-6にした場合、感染性粒子の産生量が低くなることが示唆された。2015年のアウトブレイクの原因であるEHDV-6の遺伝情報より、2015年のEHDV-6株は、外殻であるVP2とVP5に加えて、内殻タンパク質のVP7もEHDV-6型であることが分かった。EHDV6/2およびUnaG標識EHDV6/2のBHK細胞への感染は2015年に兵庫県下で発生したEHDV-6のアウトブレイ時に、「イバラキ病様疾病」を起こしたウシの血清により中和されたが、IBAVを接種したマウスの血清では中和されなかった。一方、他の血清型の外殻を持つウイルスの感染はUnaG標識の有無にかかわらず、EHDV-6感染牛の血清では中和されず、外殻がIBAV由来のウイルスのみマウス抗IBAV血清で中和された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、地震で、今後利用予定であった大阪大学超高圧電子顕微鏡センター等が被害を受けたため、実験計画の変更をした。まず、感染細胞の三次元再構成については、切削ブロック面観察法(SBF-SEM)や収束イオンビーム観察法(FIB-SEM)とCLEMを合わせた三次元CLEM解析を行うことにした。先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)の支援を受けるため、三次元CLEMについて久留米大学医学部先端イメージングセンターの太田啓介先生に、分担研究者である万谷から連絡を取り、支援を受けることが可能かどうかのプレコンサルタントを受けた。支援可能だとの返事を受けたが、回数に限りがあるため、事前にデーターをかなり詰める必要があるため、神戸大学内の電子顕微鏡ならびに、大阪大学微生物病研究所の施設を用いて、まずはデーターの集積をし、2019年度後半もしくは2020年度にFIB-SEMの支援を受けることになった。現在、ABiS支援の申請準備中である。また、日本国内のEHDV株を用いた研究を遂行するため、農研機構動物衛生研究部門の白藤浩明先生と、共同研究のための手続きを開始し、2019年度中に共同研究を開始できることになった。以上より、本年度は、研究の進行がかなり遅れているものの、2019年度以降に挽回できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、まず、本年度に引き続いて、リアソータントEHDVの作製と性状検査を行い、どの血清型のどのタンパク質がウイルスの病原性に影響を与えているかを明らかにする。また、マウス肝細胞(NMuLi)におけるEHDV増殖性について詳細に解析を行い、NMuLi内でEHDVのタンパク質の合成が可能になる要因を探索する。現在、研究代表者が保持しているウイルス株に加えて、白藤先生から分与いただく予定のウイルス株についても同様にリアソータントEHDVを作製する。また、蛍光標識EHDVを用いて、EHDVと宿主因子の動態を可視化する。さらに、神戸大学内や、大阪大学微生物病研究所の施設を用いて、FIB-SEM利用に向けての前段階として、まず、FIB-SEMに適した、観察条件の検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた簡易フローサイトメーター(Moxi Flow アズワン)のデモを行ったところ、性能に問題があり、上位機種であるMoxi Goの方が本研究には適していることが分かった。しかし、上位機種は高価であり、リース契約などの手段も検討したが、最終的に購入を断念した。また、予定していた外部施設の利用の一時取りやめに伴って実験方法の一部変更した。それに伴い、研究分担者が購入予定であった物品を2019年度以降に持ち越した。一方で、新たに導入予定の実験手法の条件検討を迅速かつ詳細に行う必要があるため、当研究室にある倒立型蛍光顕微鏡に装着する100倍の対物レンズを購入するとともに、条件検討に必要な消耗品を購入した。また、2019年度に予定していたリアソータントEHDVを用いた実験の一部を前倒し、実験に必要な消耗品を前倒しで購入した。しかし、全体的に研究計画に遅れが生じたことに伴い、本年度使用予定で研究費の一部を来年度に繰越たため、次年度使用額が生じた。この次年度使用金は、研究分担者が次年度以降に購入を持ち越した物品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)