2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of molecularly targeted therapy based on inhibition mechanism of vascular remodeling in pulmonary hypertension
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18K05993
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
日笠 喜朗 鳥取大学, 農学部, 教授 (30165071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山野 好章 鳥取大学, 農学部, 教授 (00182593)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / 肺血管リモデリング / チロシンキナーゼ阻害薬 / イマチニブ / スニチニブ / トセラニブ / ソラフェニブ / 右心肥大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では小動物の慢性心不全による肺高血圧症(PH)に対する血管リモデリング抑制機構を標的とした分子標的薬の有用性と治療法の確立を目的としている。本年度では最初にモノクロタリン誘発性PHモデルラットを用い、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のイマチニブ(Ima)、スニチニブ(Sun)、トセラニブ(Toc)およびソラフェニブ(Sor)が心臓と肺血管リモデリング(PR)およびその関連因子ならびに循環動態へ及ぼす影響を比較した。結果より、SunはImaに比べ右室肥大とPRの抑制が弱く、その原因としてSunの強い血管内皮細胞増殖因子関連経路の阻害による新生血管増生の関与を示唆し、PH治療に対する低用量Imaの有用性を明らかにした。SorはTocより右室肥大とPRの強い抑制効果を示し、低用量SorはPH治療に有効である一方、TocはPH改善効果が低いことを明らかにした。このSorのPH改善効果には分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ経路阻害に伴うC-X-Cケモカイン受容体4阻害とオートファジー促進が関与することを示唆した。次いで、イヌ僧帽弁閉鎖不全症に続発したPHの6症例における6か月間の低用量Imaの効果を調べたところ、心エコー検査ではIma投与後、三尖弁最高逆流速、推定収縮期肺動脈圧、右心房/大動脈径比および拡張早期波/僧帽弁輪部拡張早期波比の低下がみられ、Ima投与後の心不全マーカーの動態に悪化はなく、一般血液および血液生化学所見上の副作用もみられないことを明らかにした。イヌPHに対する低用量Ima投与はPHと左心拡張機能を改善し、6か月間は良好に維持されることを示唆した。以上のように、本年度は4種類のTKIがPHモデルラットの心臓と肺血管リモデリングおよびその関連因子ならびに循環動態へ及ぼす影響を明らかにし、イヌPH症例における低用量Imaの有効性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度と31年度の計画では、肺高血圧症(PH)ラットモデルを用いて、イマチニブを含む数種類の分子標的薬の肺血管リモデリング抑制効果および抑制機構を明らかにすると共に、肺血管および心筋リモデリング抑制とその関連因子、心不全マーカーおよび各種循環パラメータの動態に基づいた肺高血圧症治療に有効な分子標的薬のスクリーニングを実施することとしており、この目的に対して、平成30年度は4種類のチロシンキナーゼ阻害薬がPHモデルラットの心臓と肺血管リモデリングおよびその関連因子ならびに循環動態へ及ぼす影響を明らかにしたことは、当初の計画どおりであり、順調に薬物の有効性評価を遂行している。さらに平成30年度では、平成31年度に実施予定であったイヌPH症例における低用量Imaの有効性を一部明らかにしたので、平成31年度以降に本格的に実施予定のイヌ慢性心不全による肺高血圧症に対するチロシンキナーゼ阻害薬の有効性と安全性の検証に関する準備状況も良好となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、モノクロタリン誘発性肺高血圧症(PH)モデルラットを用いたマシチニブを含むチロシンキナーゼ阻害薬が心臓と肺血管リモデリングおよびその関連因子ならびに循環動態へ及ぼす影響の研究をさらに継続し、その効果をホスホジエステラーゼ5阻害薬などの血管拡張薬と比較することにより、PHに対するチロシンキナーゼ阻害薬の有効性をさらに検討する予定である。さらに、基礎的研究により選択したPHに対する有効なチロシンキナーゼ阻害薬を慢性心不全に罹患しているイヌのPH症例に応用することにより、その新規治療薬の有効性と安全性について肺動脈圧を含む心機能全般から臨床学的に評価する計画である。
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Causes of Carryover |
物品費の購入に際して、正確に当該年度の未使用額をゼロにすることができなかったため、非常に少額の次年度使用額が生じた。この次年度使用額については、翌年度分として請求した助成金に加え、物品費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)