2018 Fiscal Year Research-status Report
Biogeography of Kudoa spp. (Myxosporea: Multivalvulida) distributed in Asian Seas with special reference to risk management of Kudoa food poisoning
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18K05995
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
佐藤 宏 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90211945)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クドア / 粘液胞子虫 / 生物地理学 / クドア食中毒 / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産生鮮魚喫食に伴うクドア食中毒が公的に認知された2011年以降、ヒラメ寄生のKudoa septempunctataについては養殖場での防疫対策や輸入魚検疫が成果をあげた。一方で、他の海産鮮魚(カンパチ、カツオ、スズキ、サワラやヨコワ等)の喫食に原因する「類」クドア食中毒の集団発症も報告されている。これら事例での起因病原体としての粘液胞子虫の種同定や類種鑑別に必要な基盤情報はいまだ十分とはいえない。種としての胞子の形態学的変異の意義を知り、公衆衛生現場で信頼できる種確定を支援するためには、DNA塩基配列情報を補完していく必要がある。今年度の研究では、宮古島周辺海域(東シナ海)および中国南部沖の南シナ海で収集した近海産魚に寄生する多殻目粘液胞子虫について検討した。宮古島周辺海域では13科282尾を調べ、脳寄生種(Kudoa yasunagaiと新種Kudoa miyakoensis)を4種5尾に、体側筋に寄生するKudoa thalassomiとKudoa igamiを9種24尾に確認した。これら4種のクドアはいずれも1つの粘液胞子当たりの殻片/極嚢数が5以上のクドア系統である。古典的種同定で重要視される殻片/極嚢数は種レベルでは比較的安定していると考えられてきたが、今回の収集材料では顕著な変異が見られた。胞子の形態学的特徴と核リボソームRNA遺伝子(rDNA)あるいはミトコンドリアDNA cox-1/rns-rnl領域塩基配列との関係について解析し、この殻片/極嚢数の種内変動はエピジェネティックなメカニズムによると推測され、現在のところ、この種内変異については生物地理学的な意義づけは難しいと考えられた。南シナ海産魚として15科22種317尾を調べ、7種15株のUnicapsula spp.および9種9株のKudoa spp.を得て解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種内での胞子の形態学的変異(特に殻片/極嚢数の変異)は、当該種の生物地理学的集団のマーカーとしての可能性も考えられてきた。ヒラメ寄生のKudoa septempunctataは、韓国済州島海域では7殻片/極嚢の胞子が優勢で、一方、日本近海では6殻片/極嚢の胞子が優勢であると報告され、この両者にはミトコンドリアDNA塩基配列でも一定の違いがあるとされている。今回の研究において宮古島周辺海域で収集したKudoa spp.では殻片/極嚢数の変異が顕著であることから、前記の課題に取り組むために、これらの種のミトコンドリアDNA cox-1およびrns-rnl (mtDNA)増幅に有効なプライマーを新たに用意した。Kudoa septempunctataとそれ以外の5殻片/極嚢以上をもつ種(K.neothunni、K.hexapunctata、K. thalassomi、K.igami、K.yasunagai、K.miyakoensis)ではミトコンドリアDNA増幅に有効なプライマーが異なり、これまでは解析が進んでいなかったが、今回の研究によりこの点は解決できた。また、rDNA塩基配列や胞子の形態学的な特徴が極めて近い種について、ミトコンドリアDNA塩基配列での種鑑別が大いに有効であることを示せたことは、今後の研究展開に大いに貢献できると考えられる。今後、4殻片/極嚢の胞子で特徴づけられるクドアについても、胞子形態が類似して種鑑別が難しい種について、rDNAとともにmtDNA塩基配列情報を収集し、生物地理学的な観点から研究を進めていきたい。南シナ海で収集された海産魚から9種のKudoa spp.が確保されており、これらはいずれも4殻片/極嚢の胞子で特徴づけられる。クドア研究で懸案となっていた形態学的近似種について研究進展が期待できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
南シナ海産魚として15科22種317尾を調べ、7種15株のUnicapsula spp.および9種9株のKudoa spp.を得て解析を進めている。これら2属を分類する多殻目粘液胞子虫は、クドア食中毒の原因として注目されているが、類種鑑別での信頼性を確保するためには、まだ基盤情報が大きく不足している。そのような状況にあって、上記のように多くの多殻目粘液胞子虫を対象として研究が進む意義は世界的にも大きい。また、高知県沖で水揚げされたブダイに脳寄生のKudoa yasunagaiと体側筋の筋線維寄生のKudoa lateolabracisが重度に感染していることを確認し、包括的な解析を十分に行える寄生虫試料が確保できている。これらの材料を用いて、4つの殻片/極嚢を特徴とする胞子をもつKudoa spp.について、ミトコンドリアDNAを用いた種マーカー策定のためのプライマー探索が試行できる状態にある。現在の研究状況は、本研究が目的とする「アジア海域食用魚に寄生するクドア粘液胞子虫の生物地理学とリスク評価への応用」達成に向けて着実に進展していると考えられる。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Comparative genomics of the major parasitic worms2018
Author(s)
Coghlan A, Tyagi R, Cotton JA, Holroyd N, Rosa BA, Tsai IJ, Laetsch DR, Beech RN, Day TA, Hallsworth-Pepin K, Ke H-M, Kuo T-H, Lee TJ, Martin J, (60名共著者名省略), Sato H, Schnyder M, Scholz T, Shafie M, Tanya VN, Toledo R, Tracey A, Urban JF, Wang L-C, Zarlenga D, Blaxter ML, Mitreva M, Berriman M
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Journal Title
Nature Genetics
Volume: 51
Pages: 163~174
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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