2019 Fiscal Year Research-status Report
ブロイラーを汚染するサルモネラにおける抗菌剤耐性因子の伝播拡散メカニズムの解明
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18K05997
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中馬 猛久 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (90201631)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サルモネラ / 抗菌剤耐性 / ブロイラー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では鹿児島県内ブロイラーの盲腸内容物からサルモネラを分離同定して血清型を調べ、汚染様式を解明することにより薬剤耐性菌防除に役立てることを目的とする。昨年度の報告で分離菌の血清型と薬剤耐性に変化の兆しがみられたことから、本年度も昨年度に引きつづき、隔週間隔で鹿児島県内のブロイラーの盲腸内容物からサルモネラを分離同定されたサルモネラの血清型と薬剤耐性を調べた。鶏群の血清型ごとに36株を代表株として選抜し、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン、スルファメトキサゾール、クロラムフェニコール、オフロキサシン、アンピシリン(ABPC)、セフォタキシム(CTX)、セフォキシチン(CFX)、セフチオフル(CTF)、およびカナマイシンの計10薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)を寒天平板法により求めた。調査した48鶏群767羽中35鶏群96羽がサルモネラ陽性であった。分離された菌の血清型は、S. Schwarzengrundが43株、S. Infantisが16株、S. Manhattanが37株であった。過去のデータと動向を比較すると、サルモネラ分離率は2014年から高い値を取り続けていたが、2018年は顕著な分離率の低下がみられた。MIC測定の結果、代表株36株すべてABPC、CTX、CFX、CTF、感受性であった。2014年から耐性率の上昇がみられていたKMについては2017年と比較して低下したものの、2018年代表株では20%を超える耐性率が確認され、KM耐性株はすべてS. Sであった。分離されたサルモネラは前年までと異なりすべてにおいてβラクタム系薬剤に対する消失が認められた。一方で近年増加しているKM耐性S. Sの割合は、いまだ高い数値を保っていた。以上より薬剤耐性の流行が大きく変化しつつあると考えられる。今後も血清型と薬剤耐性の関係性に注目した調査が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に引きつづき年間約50鶏群各16羽合計総数約800サンプルを得て、増菌培地および選択培地を用いてコロニーを分離し、生化学的性状検査により菌種を同定後、特異抗血清を用いて血清型別を実施することが予定どおり達成できた。これまで分離されたサルモネラ菌株を対象に、多検体処理に対応した寒天平板希釈法を用いて、動物およびヒトで臨床上重要な抗菌剤の分離菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を測定することにより感受性を試験する予定もほぼ達成することができた。学会で口頭およびポスター発表し、学術論文としても報告できた。しかしながらブロイラーが保菌するサルモネラの抗菌剤耐性状況に大きな変化が認められたことから、この原因や影響についての解析や新たな視点からのアプローチも必要となってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
サルモネラの抗菌剤耐性にはそれに対応する複数の耐性遺伝子がわかっているので、各々の耐性に関与する様々な遺伝子に特異的プライマーを用いたPCR法によって検索する。さらに、耐性遺伝子内の塩基配列変異により耐性が拡張することがわかっているもの(例えばTEM型βラクタマーゼなど)についてはダイ レクトPCRシークエンス法により配列を決め、耐性遺伝子の種類を特定することによって計画を推進する。
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