2020 Fiscal Year Research-status Report
TGF-βファミリーならびに副腎皮質ホルモンはいかにボルナウイルスを制御するのか
Project/Area Number |
18K06009
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
西野 佳以 京都産業大学, 生命科学部, 准教授 (00271544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟場 正幸 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40238655)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルス / ボルナ病ウイルス / 副腎皮質ホルモン / ストレス / コルチコステロン / 神経疾患 / 病態 / 環境要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系に持続感染するウイルスであるボルナウイルスの発病メカニズムを探るために、環境要因が発病リスクになる可能性について検討した。環境要因として、ストレス時に分泌量が増加する副腎皮質ホルモン(コルチコステロン:CORT)がボルナ病ウイルスの感染病態に与える影響を探るために、ウイルス感染前の時期にマウスにCORTを埋め込み、3週間のCORT放出による感染病態への影響を解析した。 その結果、CORT処置24日目の解析では、行動学的異常は認められなかったが、CORT処置40日目の解析では、CORT処置による行動学的異常が重度化した。脳内のウイルス量およびウイルス抗原の分布は、CORT処置による差が認められなかったが、脳炎の程度は、CORT処置により大脳皮質において重度化する傾向が認められた。以上の結果から、感染前に重度のストレスが負荷され、CORTの体内濃度が上昇すると、体内濃度が低下した後に病態が悪化することが示唆された。さらに、本研究の結果は、治療のために副腎皮質ホルモンを使用する場合に、ホルモンの効果がある期間はボルナ病の発病は抑制されるが、効果が消失するとむしろ病気を悪化させる危険性も示唆された。 CORT処置による感染病態への影響が、CORTの体内濃度が高い時期ではなく低下してから起きていることがこれまでの研究で示唆されてきた。その現象を確認するために、今後はCORT処置後長期間病態を観察し、臨床症状の推移を確認するとともに、脳内の遺伝子発現の変化について解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウイルス感染前のストレス負荷試験は実施できたが、感染後のストレス負荷試験のうち長期間観察する試験を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究の総括として、以下の方向性で進める。 1.ボルナ病ウイルスの発病要因にストレスが関与することは、感染前、感染後早期と後半期のマウスのいずれにおいても、CORT投与実験により示唆されたので、最終年度では、CORT投与により病態が悪化した動物の長期的な経過について解析する。 2.CORTの影響について探るために、上記1の感染実験で得られたマウスの脳を用いて、脳内遺伝子の発現を網羅的に解析し、関連遺伝子について検索する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、年度内に予定していたウイルス感染動物ならびにウイルス感染細胞における副腎皮質ホルモンの影響について解析できなかったため、助成金を使用できなかった。次年度では、これらの研究を行う予定である。
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