2022 Fiscal Year Research-status Report
低造腫瘍性を示すアフリカツメガエルのゲノム情報による原因遺伝子同定とヒトへの応用
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18K06013
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 利明 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40263446)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフリカツメガエル / 造腫瘍性 / Cdk阻害因子 / Cyclin E / 胞胚中期 / 尾芽胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
X.laevisは、Cdk阻害因子に依存しない低造腫瘍性を有するが、その原因はわかっていない。X.laevisの遺伝子発現量のin silico比較解析を実施した結果、X.laevisで特異的な発現様式を示す因子として細胞増殖制御に直接かかわる Cyclin E1を見出した。本研究では、Cyclin E1が、Cdk阻害因子に依存しない低造腫瘍性の原因である可能性について検討をおこなった。 Cyclin Eタンパク質は、体細胞周期ではG1期に発現してS期に分解することにより結合パートナーCdkの活性を制御し、G1/S期の制御を担っている。一方、初期発生過程において CyclinE1タンパク質は、母性因子としてX.laevis 受精卵に多量に存在し、受精後12回の細胞周期の間は保持されるが、その後、胞胚中期から急激に分解する。その機能は長年に渡り不明である。そこで、Cyclin E1の変異体を作成し、そのタンパク質を受精卵に導入することで現れる表現型から初期発生における機能解析を進めた。まず、胞胚中期で分解をうけないCyclin E1タンパク質を作成したところ、胞胚中期を含む初期発生過程に異常は認められなかったが、その後の体細胞分裂期である尾芽胚において統計的有為に尾部の短小化が生じた。体細胞周期において Cyclin EはCdkとの結合を通して機能を示すため、次にCdk結合部位を欠損させたCyclin E1を作成した結果、Cyclin E1の尾芽胚における機能にCdk結合は関与しないことがわかった。 これらの結果から本年度は Cyclin E1の新規結合因子の探索を進めた。GST-CyclinE1 およびその変異体を受精卵にマイクロインジェクションし、胞胚中期の前後において glutathione ビーズによって回収した。質量分析により Cyclin E1 結合因子を同定した結果、epigenome 制御にかかわる因子の関与が新たに考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、CDK阻害因子以外の低造腫瘍性原因の候補としてCyclin E1に着目し、検討を進めている。昨年度までに統計的有為な結果として、Xenopus laevis 胞胚中期におけるCyclin E1タンパク質の分解が正常発生に必要であること、その分解は、後の尾芽胚期の尾部形成に必要であること、および、Cyclin E1の尾芽胚における働きに既知の結合パートナーであるCdkは関与しないことを明らかにしてきた。そこで、X.laevis初期胚におけるCyclin E1の機能解明を目指し、GST-CyclinE1 およびその変異体をもちいてCyclinE1 結合因子の探索を進めたが、研究遂行中に、在籍大学が新型コロナ流行に伴う出校禁止措置となったことから、2020年4月初旬に本研究課題に使用する X.laevis の処分を余儀なくされた。 Xenopus laevis を新たに準備するためには、腹内の卵が実験に使用可能な質であるかを個体毎にチェックする必要があり、個体選別およびそれまでの実験結果との整合性確認に多くの時間が必要になったため、その後の計画が大幅に遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに準備したXenopus laevis により、GST-CyclinE1 およびその変異体タンパク質のマイクロインジェクション実験を再開した。母性Cyclin E1タンパク質が分解する胞胚中期の前後において、再度、GST-CyclinE1 およびその変異体タンパク質をglutathione ビーズによって回収し、質量分析を進めた結果、CyclinE1の新たな結合パートナーとしてepigenome 制御にかかわる因子の同定に至った。今後、この因子がCyclinE1による尾部形成の制御にかかわる可能性について調査を進める。この情報を基に、CyclinE1による、CDK に依存しない細胞増殖の調節機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2020年度の本研究計画において、新型コロナ流行に伴い4月初旬より在籍大学が出校禁止措置となったことから研究実施が困難となった。また、これと同時に本研究課題に使用する X. laevis の処分を余儀なくされたため、本年度は、X.laevis タンパク質マイクロインジェクション実験系の再立ち上げ、および、立ち上げた新たな実験系によるデータの追試を継続している。 新たに立ち上げた実験系による追試に時間がかかり、科学研究費助成事業補助事業期間の再延長承認申請書によって更に1年間の研究期間延長が認められた。今後、2020年度に実施予定であったCyclinE1およびその変異体に結合した因子の同定と機能解析を実施するための費用として助成金を使用する。
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