2018 Fiscal Year Research-status Report
精子機能に重要なSLC輸送体研究の展開:創薬や受精能獲得機構の解明に向けて
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18K06016
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
与語 圭一郎 静岡大学, 農学部, 准教授 (60362844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安西 尚彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70276054)
永森 收志 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90467572)
宗 修平 浜松医科大学, 医学部, 特任助教 (30647607)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 精子 / マウス / Slc22a14 / 受精能獲得 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は先の研究で有機アニオン/カチオントランスポーターSlc22a14がマウスにおいて雄の生殖能に極めて重要な役割を持っていることを見出した。本研究では、①Slc22a14輸送基質の同定とその輸送特性の解明、②Slc22a14のヒト精子における発現解析と男性不妊との関係性の解明、③Slc22a14ノックアウトマウス精子における受精能獲得不全のメカニズムの解明、の3つを目的に研究を進めている。 まず①の課題についてはHEK293細胞にSlc22a14遺伝子を安定的に発現する細胞株を構築した。しかしながら、免疫染色の結果から、発現させたSlc22a14が細胞膜表面に局在していない様子が観察された。プロモーターの強さの異なる種々のベクターも試したが同じ結果であった。他の細胞株を用いても同じ結果であり、Slc22a14が細胞膜に局在するには、他の因子が必要である可能性が示唆された。②については、ヒトの種々の組織におけるSlc22a14遺伝子の発現をRT-PCRで解析した。その結果、マウスと同じくヒトにおいても精巣特異的に発現していることが確認された。また、市販の抗体を購入し特異性を検証したが、特異性が非常に低いことが判明した。現在、新たに抗ヒトSlc22a14抗体を作製し、その検証を行っている。③について種々の解析を行ったところ、Slc22a14-KOマウス精子では、受精能獲得におけるシグナル伝達の最上流にある重炭酸イオンの流入に異常があることが見出された。Slc22a14は重炭酸イオンを運ぶ輸送体ではないと考えられ、他の何らかの輸送体の発現や機能に異常が生じている可能性が考えられた。そこでiTRAQ法により野生型とKOマウス精子間で、発現量の異なるタンパク質を網羅的に解析した。その結果、TMEM225の発現が低下していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Slc22a14の安定発現細胞株は順調に作製できたが、Slc22a14がその機能部位である細胞膜に局在しなかった。この細胞株を用い、輸送基質の同定を行う予定であったため、研究の進展に遅れが生じた。また、抗ヒトSlc22a14抗体についても、市販の抗体の特異性がかなり低いことが判明し、ウエスタンブロッティングや免疫染色による解析が実行できなかった。 一方、Slc22a14-KO精子における受精能獲得異常の解明については、ほぼ予定通り研究が進み、KOマウス精子において受精能獲得のどの段階に異常が生じているかを明らかにするとともに、WTとKOマウス精子において、発現量に差のあるタンパク質を同定できた。これらを考え合わせると、全体としての研究は「やや遅れている」に該当すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Slc22a14の輸送基質の同定に関してはアフリカツメガエル卵を用いる予定である。アフリカツメガエル卵は哺乳類細胞とは異なる特性を持ち、SLCトランスポーター研究によく使用されている。また、ヒトSlc22a14の発現解析については、現在、検証を進めている新規抗体を利用してウエスタンブロットや免疫染色などを行っていくことを予定している。 KO精子における受精能獲得異常のメカニズム解明については、WTとKOマウス精子において、発現量に差のあるタンパク質を同定できたものの、この分子はトランスポーターではなかったため、KO精子では重炭酸イオン輸送体の発現が低下しているのではなく、機能が低下している可能性が考えられた。そこで、今後は精子において重炭酸イオン輸送体として働くと考えられる数種の遺伝子をクローニングし、Slc22a14との相互作用や、Slc22a14存在下・非存在下での機能の違いなどを解析する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、市販の抗ヒトSlc22a14抗体の特異性が低く、その抗体を用いた解析ができなかったため、それに関する研究に遅れが生じたのが原因である。新たに作製した抗体が機能することが分れば、それを用いた解析に必要な物品等を購入予定である。
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Research Products
(1 results)