2018 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms and physiological function of amino acid endocytosis
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18K06018
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
渋谷 周作 山口大学, 共同獣医学部, 助教(テニュアトラック) (20534473)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | mTORC1 / アミノ酸 / エンドサイトーシス / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
mTORC1は栄養代謝を担う主要なシグナル複合体である。mTORC1は細胞外のアミノ酸によって活性化されることが知られていたが、近年、その機序の解明が急速に進んだ。すなわち、一連の研究報告により、「アミノ酸は細胞内小器官であるリソソームの内腔に到達した時に、mTORC1を活性化させる」ことが判明した。ただ、細胞外のアミノ酸がどのような経路でリソソーム内腔に到達するのかは不明な点が多かった。我々は最近の報告において「細胞外液取り込み機構エンドサイトーシスによりアミノ酸が細胞内に取り込まれ、mTORC1を活性化する」という機序を明らかにした。本研究においては、この発見をさらに発展させるため、アミノ酸エンドサイトーシスのより詳細な機序、および細胞機能におけるエンドサイトーシスの重要性を検証することを目的とする。 ダイナミン依存性エンドサイトーシス阻害剤であるダイナソア、mTORC1阻害剤であるラパマイシン、mTORC1/2阻害剤であるTorin 1、アミノ酸不含培地で293T細胞を処理し、ウエスタンブロット法により各種のmTORC1/2ターゲットリン酸化サイトを検証した。また、細胞数の測定、WSTアッセイによる細胞代謝活性の測定、フローサイトメトリーによる細胞周期分布の検証を行った。 比較的弱いmTORC1阻害剤であるラパマイシンは、ラパマイシン感受性リン酸化サイトであるS6K (Thr389)の脱リン酸化を誘導し、代謝抑制効果を示した。一方、ダイナソア、Torin 1、アミノ酸飢餓は、S6K (Thr389)に加えて、ラパマイシン非感受性リン酸化サイトの4E-BP1 (Thr37/46)も脱リン酸化し、さらに、細胞代謝と細胞増殖を抑制した。フローサイトメトリーを用いて解析した結果、これらの薬剤・飢餓による細胞増殖抑制は、S期における停滞が原因であることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、エンドサイトーシス阻害剤が細胞増殖や代謝などの各種細胞機能に与える影響を確認することができた。また、mTORC1阻害剤であるラパマイシンと比べて、エンドサイトーシス阻害剤がより強いmTORC1抑制効果を発揮することが明らかとなった。 今回調べた各種の細胞機能の指標(細胞増殖、代謝、細胞周期)や、mTORC1/2への影響に関して、エンドサイトーシス阻害剤はアミノ酸飢餓とほぼ同様の表現型を示した。これらの結果は「エンドサイトーシス阻害剤はアミノ酸のエンドサイトーシスによる細胞内取り込みを阻害し、細胞内アミノ酸の枯渇を引き起こすため、アミノ酸飢餓と同様の効果をもたらす」というモデルを支持する。 また、エンドサイトーシス阻害剤がアミノ酸飢餓と同様に細胞周期をS期で停滞させることが明らかとなった。このことから、DNA複製が阻害されている可能性が推察される。DNA複製の阻害が細胞増殖抑制の原因となっている可能性が考えられるため、今後、さらに検証を進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
エンドサイトーシス阻害剤が細胞周期をS期で停滞させることからDNA複製が阻害されていることが推測され、DNA複製の阻害が細胞増殖抑制の原因となっている可能性が考えられた。今後、この可能性をさらに詳細に検討する。DNA複製阻害の結果として、DNAダメージチェックポイントの活性化など、様々なストレス応答が起こっている可能性が考えられる。また、それらのストレス応答が細胞増殖の抑制に寄与している可能性がある。今後、がん細胞由来株と正常細胞を比較しながら、エンドサイトーシス阻害剤ががんの増殖抑制を特異的に抑制する可能性についても検討したい。 これまでのエンドサイトーシス阻害実験は、ダイナミン阻害剤であるダイナソアなどの阻害剤を主に用いて行ってきた。ドミナントネガティブ型ダイナミン2の強制発現によっても同様にmTORC1活性の抑制が起こることを確認済みではあるが、さらに特異的な方法としてはダイナミン1/2/3のトリプルノックアウト細胞(ダイナミンTKO細胞)の使用が考えられる。今後ダイナミンTKO実験を行うため、ダイナミンTKO細胞を入手した。ダイナミンは細胞の増殖に必要なため、ダイナミンTKO細胞はタモキシフェン投与によるノックアウト誘導を実験の度に行う必要がある。このため、実験の遂行には比較的時間がかかることが予想される。
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Causes of Carryover |
今年度はエンドサイトーシス阻害剤の細胞機能への影響を検討するため、繰り返し実験を行うことに時間を費やしたが、当初の予定に比べて、試薬類など新規購入すべき消耗品の支出が少なかった。 次年度以降、今年度の発見を踏まえた各種実験を実施するために、より多くの支出が必要となることが予想される。
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Research Products
(5 results)