2019 Fiscal Year Research-status Report
Attempts to visualize mechanisms by which psychological stress regulates the immune system
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18K06020
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
有村 裕 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (10281677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 渉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40708161)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ストレス / 免疫応答 / レポーターマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
心理的ストレスは免疫系を修飾する。本研究では、この修飾のメカニズムを明らかにすることを試みる。今年度は4つの方法で進めた。まず昨年度に確認したストレス関連遺伝子について、今年度はさらにストレスの時間と回数を増やした。またC57BL/6およびBALB/c背景に戻し交配したCRH KOマウス、GRコンジェニックマウスを用いて解析した。その結果、1回ストレスでは発現上昇しなかった遺伝子も繰り返しストレスにより上昇する傾向が見られた。したがってストレス量により発現誘導される遺伝子が異なること、ストレスの目印になる遺伝子が異なることが示唆された。2つ目は、ストレス関連遺伝子のGilzについて昨年度に続きプロモーター解析をした。転写開始点の上流1kb、2kbに加えて、GRE配列を複数含む領域についても解析した。また活性測定の条件も様々に試した。しかし今のところ、ストレス応答性の高い配列は見つかっていない。来年度は再度、幅を広げて試みる。3つ目は、ストレス関連遺伝子のRtp801を用いたGFPレポーターマウスの解析を行った。マウスの脾細胞に対し、in vitro、in vivoで刺激し、GFP発現の変化を観察した。In vitroでは無処置よりもGFPは少し高めになったが、in vivoでは期待に反してGFPは上昇しなかった。その原因として予備実験ではmRNAの発現上昇が小さいことが示唆された。来年度、さらに詳細に解析し改善策を見出したい。4つ目は、自己免疫疾患モデルマウスの解析方法の検討を行った。全身性紅斑性狼瘡のモデルであるMRL-lprマウスと補助受容体ICOSのKOマウスを掛け合わせ、尿タンパク、自己抗体、細胞活性化マーカーを見て、それらがどの程度軽減されるか観察した。来年度、Rtp801レポーターマウスと掛け合わせストレスが疾患発症にどのように関与するかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は4つの方法を進めた。1つ目は、ストレスで発現が上がる遺伝子について、昨年度よりもストレス回数を増やし、さらにCRH KOマウス、GRコンジェニックマウスを組み合わせて解析した。その結果、1回ストレスでは発現上昇しない遺伝子が繰り返しにより上昇する傾向が見られた。2つ目は、Gilz遺伝子のプロモーター解析を続けた。Gilzの転写開始点の上流1kb、2kbの解析に加えて、GREを2つ、3つ有する領域についても解析した。さらに、細胞へ導入する遺伝子量の幅を広げ、反応時間も大幅に延長して実施した。しかしながら、それでも強いプロモーター活性は認められなかった。したがって、適切なプロモーター配列をまだ選択できていないか、または本当に弱い活性である可能性も考えられた。3つ目は、ストレスでGFPが発現上昇する設計のRtp801レポーターマウスが出来てきて、その解析を開始した。マウスの脾臓細胞を、in vitroでデキサメサゾン刺激したところ、無処置の細胞よりも、GFPは高めにはなったが、顕著に強いわけではなかった。つぎにin vivoで拘束ストレスしたマウスでは、期待に反して今のところGFP上昇は認められなかった。そこで、mRNAの発現レベルを調べた。In vitroのRtp801、Gilz mRNAレベルは、qPCRで確かに上昇が見られた。しかし、GFPのmRNAレベルの上昇率は顕著ではなかった。したがってGFPタンパクの発現上昇が小さい原因として、mRNA上昇が小さいことと、刺激前のGFPタンパク発現がすでに高いことが考えられた。4つ目は、全身性紅斑性狼瘡を生じるMRL-lprマウスと、補助受容体ICOSのKOマウスを掛け合わせ、MRL-lprマウスの症状がどれくらい緩和されるか観察した。脾臓やリンパ節の大きさはKOマウスでも同程度であり、抗核抗体も大きく減少しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は引き続き3つのアプローチで進める。1つ目は、Gilz遺伝子のプロモーター解析として、他の適切なプロモーター配列がないか探す目的で、今年度、未達だった上流5kb、10kbの配列のベクター挿入を再度試みる。またプロモーター活性では、細胞へ導入する遺伝子量の幅を下げ、24~48時間で試す。同時に、活性が本当に弱い可能性も考え、陰性対照との差異を丁寧に見ていく。2つ目として、Rtp801遺伝子のGFPレポーターマウスでは、in vitro、in vivoストレス後に、期待に反してGFPタンパクの発現上昇はごくわずかだった。その原因として、GFP のmRNA上昇が小さいことと、または刺激前のGFPタンパク発現がすでに高いことが考えられた。そこで来年度は、in vitroでは刺激の濃度や時間を変えてみる。またT細胞をしばらく放置するとGFPは下がるか。GFPが下がった後で刺激するとGFP上昇が見やすいか。即ち、GFPの代謝回転率はどれくらいか。in vivoでは、ストレスを長期間繰り返してみる。さらにGFPが強く発現するのはどの組織か。さらにCRH-KOと掛け合わせ、GFPの定常発現が消えるか、その後でin vitroで刺激することを試みる。3つ目は、全身性紅斑性狼瘡を自然発症するMRL-lprマウスとRtp801レポーターマウスを掛け合わせ、ストレスがどのように免疫関連疾患に影響するかを最終的に明らかにしていく。また同時に、MRL-lpr x ICOS-KOとも掛け合わせる。MRL-lprマウスでストレスを受けやすい組織は正常マウスと同じか。自己抗体産生細胞や濾胞ヘルパーT細胞のGFPは高いのか等について解析する。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」にも記したように、今年度は4つの方法を進めたが、そのうち1つ目と2つ目の実験では、昨年度よりも幅広い解析を行い、その分、時間がかかり、ルシフェラーゼアッセイのための試薬などの購入が少なめになった。1つ目の実験では、ストレスで発現が上がる遺伝子について新しく特定の遺伝子が上昇する傾向を見出すことができた。2つ目では、Gilz遺伝子のプロモーター解析を行ったが、今のところ明らかに強いプロモーター活性は認められておらず、来年度は新たなプラスミドの構築を試みる予定であり、そのための試薬の購入やルシフェラーゼアッセイの試薬の購入を増やす予定である。3つ目は、ストレスでGFPが発現上昇するRtp801レポーターマウスが完成し、その解析を開始したが、in vivoで拘束ストレスを負荷したマウスでは、期待に反して今のところGFP上昇は認められなかった。この予期しない結果のため、問題点を解決すべく、来年度は様々な条件を試す必要がある。解決策として新たなマウスの掛け合わせを行い、組織での発現も解析するため、動物飼育、遺伝子型を調べるPCR試薬、組織染色の抗体の購入などに多めに使用する予定である。
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