2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト脳機能解明への道程としての異種間移植による遺伝子改変マーモセットの作製
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18K06025
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中務 胞 新潟大学, 脳研究所, 助教 (60641579)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コモンマーモセット / 発生工学 / 生殖工学 / 異種間移植 / 受精卵作製 / 遺伝子改変 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト脳機能と疾患を理解するうえで霊長類モデルの利点は言を持たないが、多くの研究者が多様な発想で遺伝子改変マーモセットを用いるには経済的・倫理的障壁があり、現実的に困難である。そこで、本研究では霊長類脳構造・機能マップ作製に必須とされる遺伝子改変マーモセットを確実かつ低コストで作製する手法を開発している。遺伝子改変マーモセットを迅速かつ低コストで作出する基盤整備ができれば、多様な研究に遺伝子改変マーモセットを提供することが可能になり、我が国の研究発展に貢献できる。 我々はこれまで脳機能解析に適したC57BL/6系統のマウスでの遺伝子改変マウス作製技術を確立しており、脳研究者コミュニティーに多種類のマウスを提供した実績がある。また、ラットにおいても遺伝子改変に取り組んでいる。これらの分子生物、発生・生殖工学技術を霊長類であるマーモセットに応用し、遺伝子改変マーモセット作製に応用することにより、遺伝子改変マーモセットを作製する。 この目的を達成するためには多量のマーモセット卵子や受精卵を経費と動物福祉の問題を解決して供給する手法の確立が必要である。そこで、他の実験等で安楽死したマーモセットの卵巣を異種である免疫不全マウスに移植し、それら移植組織より遺伝子改変マーモセット作製に必要不可欠な受精卵を作出を目指している。さらに、産仔になりうる高品質の受精卵を作出しうる異種間卵巣移植方法、得られた卵子の体外成熟培養方法ならびに体外受精後の胚の体外発生方法の確立にも取り組んでいる。 本研究の最終目的は異種移植により得られた卵子を用いたマーモセット産仔作出である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である2018年度は遺伝子改変マーモセット作出のネックとなっている卵子や受精卵の採取に関する問題をマーモセット卵巣の異種間移植により解決すべく、研究を行った。その結果、マーモセット卵巣を移植した免疫不全マウスよりマーモセット卵子を採取し、それらを体外にて成熟培養することにより成熟卵子を作製することができた。さらにそれら卵子は受精能を有し、体外受精により桑実胚の作製に成功した。 しかし、マーモセット卵巣の入手は困難であり、今年度の大半はマーモセット異種卵巣移植による卵子採取法の確立を目標としたラット卵巣を免疫不全マウスに移植することにより基盤研究を行った。すなわち、卵巣の移植部位の検討として、ラット卵巣を免疫不全マウスの皮下、筋層下、眼下および腎被膜下へ移植し、適切な移植部位の検討を行った。また、卵巣の冷蔵保存期間の検討として、摘出したラット卵巣を4℃にて0-48時間保存後に免疫不全マウスに移植し、それら組織の生着率と移植組織からの採卵を試みた。さらに、卵巣の凍結保存も行った。 ラット卵巣の異種間移植では移植部位は生着率、卵胞の発育ならびに迅速な採卵が可能である、腎被膜下への移植が推奨された。また、冷蔵保存期間においては2日間、保存液にて保存した卵巣においても組織の生着が確認され、生着した組織より卵子を得ることができた。また得られた卵子を用いた体外受精にも成功し、受精卵移植の結果、移植した異種間由来ラット胚は着床することが確認できた。卵巣の凍結保存に関してはマウスの卵巣凍結保存法を参考にガラス化法にて卵巣を凍結したが、非凍結区と比較し、凍結区で生着率が有意に低くかった。このことより、卵巣凍結保存方法においては他の凍結保存方法や新たな保存方法の検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は卵巣保存液の検討を行い、より安定した卵巣保存方法の確立を目指す。また、卵巣保存方法においてもヒト卵巣凍結保存法を参考に安定した凍結卵巣保存方法の確立を目指すとともに、保存卵巣からの卵子作出および受精卵作出にも取り組む。 マーモセット卵巣は動物数が少ないこともあり、入手困難であり、さらに、入手したマーモセットの年齢、計画殺までの実験履歴など卵巣の品質には個体差が大きい。本研究の最終目的である、異種間卵巣移植によるマーモセット産仔の作出にはラットや他の比較的入手が容易なウシやブタなどの家畜を用いた基礎研究が必要である。ラットや家畜で得られた基礎研究結果がそのままマーモセットへ応用しうるものであるかは不明ではあるものの、マーモセット卵巣が入手できた際に、より良い保存状況にて他施設より新潟大学まで卵巣をできるだけ安価に一般の流通システムを用いて輸送しうる系の立ち上げを行う。 マーモセット卵巣が得られた際には基礎研究にて得られたベストな条件にて異種卵巣移植、卵巣刺激法、体外成熟培養、体外受精および受精卵の体外培養系の確立に着手し、産仔作出に取り組む。
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Causes of Carryover |
マーモセット卵巣は貴重で、入手が困難なため、当初計画よりも使用した免疫不全マウスの匹数が予定よりも少なかった。初年度同様に研究費の大半は物品費であるが、今年度参加を予定している「日本実験動物学会」「日本分子生物学会」の開催地が福岡と申請者が所属する新潟より遠方にて開催されるため、昨年度より使用額が増える見込みである。
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Research Products
(1 results)