2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of new albino inbred strain mice for embryo-transfer recipient
Project/Area Number |
18K06026
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
橋本 憲佳 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (50242524)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | レシピエントマウス / 胚移植 / 近交系 |
Outline of Annual Research Achievements |
胚移植のためのレシピエントマウスとしては,ICR系統を用いることが事実上の標準となっている。しかしながら過度の肥満により使用期間が短く,また膣栓確認しても移植に適さない個体が散見され,帝王切開を要する率が高い等の問題がある。授乳能力向上を指標に選抜した系統から独自に樹立したアルビノ近交系のKSマウスは,過度の脂肪蓄積は無く,ICRに匹敵する生産性と哺育能力があるので,ICR系統に替わる近交系由来のレシピエントマウスとしての優位性を検証した。 KSマウスの自然交配による平均産仔数は9匹以上あり,10匹を越える場合もほぼすべての産仔が離乳に至った。平均離乳時体重(25-31日齢)は雌15.9g,雄17.5gと比較的大型なアルビノ近交系で,性格も非常に温厚で取り扱いやすい。また,ICR系統のような過度の肥満は呈さず,肥満によりレシピエントマウスとして使用できなくなることはなかった。精管結紮した雄のKSマウスと目視で選別した雌のKSマウスを交配したときの膣栓形成率は8割を越える。また,膣栓形成を確認したマウスで,卵管膨大部の形成が不十分なものも殆ど見られなかった。凍結保存したC57BL/6マウスの2細胞期胚を融解して卵管内移植したときの妊娠率も非常に高く,ほぼすべての個体が自然分娩した。少ない匹数の交配により膣栓形成マウスが確実に得られ,別に里親用雌マウスを準備する必要がないことから,ICR系統の欠点がなく,作業の省力化と,使用動物数の削減が可能な胚移植用レシピエントマウスとして使用できることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた偽妊娠マウスの生産性と移植不適マウス出現の検証,KSマウスを用いた偽妊娠マウス作成のための精管結紮雄の特性評価はほぼ完了し,KSマウスが胚移植用のレシピントマウスとして使用できること自体は立証できたと考えている。 遺伝子改変マウスで常用されるC57BL/6系統の2細胞期胚を凍結融解して移植した場合の成績については,レシピエント一匹当たり10個から20個の胚を移植すると,ICR系統をレシピエントとして使用する場合の週齢の範囲では良好であった。また,一匹当たりの移植胚数を減らした場合や,移植時のレシピエントマウスの週齡をICR系統では使用できない高週齢個体での成績についても検証中であり,ほぼ予定通りに計画は進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ICR系統をレシピエントとして用いる場合の難点として,移植胚数が少ない場合の成績の低下がある。一匹当たりの移植胚数を減らした場合の成績を検討し,ICR系統を用いたときの成績より優位性があるかどうかを検証する。またICR系統のように肥満により使用できなくなることがないことは立証したので,生産したマウスを効率的に使用するために,使用可能な週齢の限界を見極める予定である。また,現在は,C57BL/6系統の2細胞期凍結融解卵による成績を中心に検証しているが,今後は,BALB/c系統など,胚移植による個体復元率がC57BL/6系統よりも悪い系統の胚を用いたときの胚移植成績を検証すると共に,新鮮卵,凍結融解卵,体外受精卵,ゲノム編集卵など,移植時の受精卵のコンディションの違いによる胚移植成績を検証し,ICR系統をレシピエントとして用いた場合と比べてKSマウスが優れているか否かを検証する。また,KSマウスをレシピエントとした場合は,里親を準備する必要がほぼないことが立証できているが,実験デザインとして里親につける必要が生じる場合も想定できるので,KSマウスの里親としての能力についても,計画通り実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
当初計画では初年度に備品購入費を充てるために初年度に大幅に傾斜配分していたが,直接経費(その他)で当初計画にはなかった施設利用料が必要になったため,2年次3年次で予想される不足額を主に備品購入に予定していた配分額から持ち越した。購入を取りやめた備品については,既存設備を流用することで補うことができたので計画の実施に支障はなかった。次年度に使用を持ち越した予算については,物品費及び旅費の一部と合わせて施設利用料に充当する計画とした。
|