2018 Fiscal Year Research-status Report
オプトジェネティクス酸化ストレス誘導法による筋萎縮メカニズムの解明と治療薬探索
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18K06029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 文規 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定助教 (10588263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬原 淳子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (60209038)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 骨格筋 / 筋萎縮 / 酸化ストレス / ミトコンドリア / オプトジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋特異的ミトコンドリアROS産生トランスジェニックゼブラフィッシュの個体(成魚)への光誘導による長期ROS産生誘導用の高強度LEDライトおよび照射用アクリル水槽を作製した。LEDライトに関してはROS産生誘導用-580nm、対象区用-470nmとした。高強度の光照射による水温上昇が危惧されたが、大型の循環水槽システムへ設置することにより水温上昇は抑えられ、ゼブラフィッシュへの長期間の高強度光照射が可能であることが確認された。 また、ゼブラフィッシュの骨格筋組織をサンプルとしたシングルセルトランスクリプトーム 解析を実施した。骨格筋組織は筋細胞以外の様々な細胞種から構成されており、これまで実施してきた様々な骨格筋萎縮条件下での骨格筋組織トランスクリプトーム解析の結果からでは、発現変動が確認された遺伝子が実際に筋線維における発現変動であるのか、骨格筋を構成する他の細胞種における発現変動化を確認できていなかった。そこで、これまでに骨格筋組織トランスクリプトーム解析を実施済みである運動抑制条件下(廃用性筋萎縮モデル)で骨格筋シングルセルトランスクリプトーム解析を実施した。その結果、これまで骨格筋(筋線維)で顕著な発現変動が確認されていた複数の遺伝子に関して、骨格筋組織内にあり、少なくとも筋線維とは異なる細胞種においても顕著な発現変動が確認された。これらは骨格筋組織トランスクリプトーム解析で確認される遺伝子の発現変動は、筋線維での発現変動とは確定されないことを示唆し、さらには骨格筋萎縮における骨格筋を構成する他の細胞種の関与を示す結果とも考えられる。これらのことから、長期酸化ストレス誘導後の骨格筋組織に関しても、組織トランスクリプトーム解析だけではなく、シングルセルトランスクリプトーム解析を行うことが必須である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実験の主な使用系統であり、既に作製済みであった光誘導型の骨格筋特異的ミトコンドリアROS産生トランスジェニックゼブラフィッシュに関して、ROS産生タンパク質の発現量が成長に伴い著しく低下する個体が多数確認されたため、高いROS産生タンパク質発現を維持する個体の継代を実施した。そのため当初予定していた長期酸化ストレス誘導後の骨格筋組織を対象としたトランスクリプトーム解析を実施することができなかった。 一方で骨格筋組織は多種類の細胞から構成されていることは明らかであり、以前より1細胞レベル(各細胞種)での遺伝子発現の変動を調べる必要があると考えていた。そこで、筋萎縮条件である運動抑制に関して骨格筋組織のシングルセルトランスクリプトーム解析を実施した。その結果、運動抑制によって骨格筋以外の多種の細胞において多数の遺伝子発現変動が認められた。このことは骨格筋組織を対象とした解析においては一般的に遺伝子発現変動を全て骨格筋(筋線維)での変化と考えがちであるが、その中には骨格筋組織を構成する他の細胞種での遺伝子発現変動を多く含んでいた可能性を示唆している。これらのことから、長期酸化ストレス誘導後の骨格筋トランスクリプトーム解析に関しても、組織トランスクリプトーム解析だけではなく、シングルセルトランスクリプトーム解析も実施することが重要かつ必要であることを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
光誘導型の骨格筋特異的ミトコンドリアROS産生トランスジェニックゼブラフィッシュに関して、ROS産生タンパク質の高い発現を維持する(成長に伴って発現量が減少しない)トランスジェニックゼブラフィッシュを確立する。これを用いた長期酸化ストレス誘導実験を実施し、骨格筋特異的なROS産生の確認および骨格筋トランスクリプトーム解析を実施する。骨格筋組織トランスクリプトーム解析だけではなく、シングルセルトランスクリプトーム解析も実施する。これらの結果を今までに得られている様々な骨格筋萎縮条件下でのトランスクリプトーム解析の結果と比較・検討し、酸化ストレスに起因する骨格筋萎縮の予防・治療を目的とした標的遺伝子の選定を行う。
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Causes of Carryover |
初年度実施予定であった骨格筋組織トランスクリプトーム解析が実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。当初の計画になく、初年度実施したシングルセルトランスクリプトーム解析に関しては、先進ゲノム支援(先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム)による支援を受けたため、費用は発生していない。次年度使用額分に関しては、当初の予定通り、トランスクリプトーム解析費用としての使用を予定している。
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[Presentation] 人工重力発生装置を用いたゼブラフィッシュ宇宙滞在実験2018
Author(s)
佐藤文規, Choi Minyong, 王梓, 今村聖実, 堀内映美, 呉泉, 藤田生水, 内田智子, 加藤充康, 谷垣文章, 東端晃, 村谷匡史, 小林純也, 高橋昭久, 菅野純夫, 松崎文雄, 鈴木穣, 川上浩一, 瀬原淳子
Organizer
宇宙生物科学会第32回大会
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[Presentation] ゼブラフィッシュ宇宙滞在実験から微小重力の骨格筋への影響とそのメカニズムを探る2018
Author(s)
佐藤文規, Choi Minyong, 王梓, 今村聖実, 堀内映美, 呉泉, 藤田生水, 内田智子, 加藤充康, 谷垣文章, 東端晃, 村谷匡史, 小林純也, 高橋昭久, 菅野純夫, 松崎文雄, 鈴木穣, 川上浩一, 瀬原淳子
Organizer
第41回日本分子生物学会年会
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[Presentation] Study on gravity-dependent skeletal muscle maintenance mechanisms using Zebrafish, aquatic organisms2018
Author(s)
Fuminori Sato, Minyong Choi, Zi Wang, Kiyomi Imamura, Terumi Horiuchi, Wu Quan, Ikumi Fujita, Satoko Uchida, Mitsuyasu Kato, Fumiaki Tanigaki, Akira Higashibata, Masafumi Muratani, Junya Kobayashi, Akihisa Takahashi, Sumio Sugano, Fumio Matsuzaki, Yutaka Suzuki, Koichi Kawakami, Atsuko Sehara-Fujisawa
Organizer
2018 ASCB | EMBO Annual Meeting
Int'l Joint Research