2019 Fiscal Year Research-status Report
肥満・糖尿病モデル動物を用いたインクレチンによる雄性生殖機能の調節に関する研究
Project/Area Number |
18K06033
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
浅野 淳 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (90312404)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マウス / インクレチン / 精子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス(C57BL/6J、♂、8w)の精巣におけるインクレチン受容体タンパク質の発現をウェスタンブロットおよび免疫組織化学により解析した。その結果、GIP受容体、GLP-1受容体の各タンパク質はそれぞれ精巣で検出された。また、両受容体はともに精原細胞、精母細胞およびライディッヒ細胞に分布していたが、GLP-1受容体タンパク質はセルトリ細胞にも分布していることが示唆された。これらの結果はマウス組織及び細胞株を用いた実験成績に概ね一致していた。続いて、GIP受容体およびGLP-1受容体発現に対する各種薬剤刺激の影響を解析したところ、PMA, all-トランスレチノイン酸、Wy14643刺激によってMA-10細胞(ライディッヒ細胞株)におけるGIP受容体mRNA量が有意に増加した。一方、TM4細胞(セルトリ細胞株)におけるGLP-1受容体mRN量はジブチリルcAMP刺激により有意な増加が認められた。従って、GIP受容体はPKC, RARおよびPPARα経路、GLP-1受容体はcAMP経路による発現調節を受ける可能性が示された。RAR, PPARαは脂質代謝に関わる核内因子であり、遊離脂肪酸はPPARαのリガンドとして働くことから、脂質代謝異常症との関連が推測された。そこで高脂肪食給餌マウス(C57BL/6J、12週間給餌精巣におけるインクレチン受容体及びリガンドのmRNA発現変動を解析したところ、GIP受容体およびGIPmRNAは標準食マウスと比較して高脂肪食給餌マウスで増加傾向が見られたものの有意な発現変動は認められなかった。最後に、マウスにGLP-1受容体アゴニスト(エキセナチド)を投与して1時間後の精巣においてKitL、GLP-1受容体のmRNA発現を調べたところ、KItLは有意に上昇し、GLP-1受容体も増加傾向が認められ、細胞株を用いた解析の結果と一致した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでおもにマウス細胞株を用いたインクレチン作用を解析してきたが、実際にマウスを用いて同様の解析を行うことができ、その結果細胞株で見られた実験成績にほぼ一致した結果が得られた。これらの結果から、in vivoにおいて精巣に対してインクレチンが作用することを明らかにすることができたので、概ね計画通りにけいっかうが遂行されていると考えられる。 一方、インクレチンアゴニスト刺激によるcAMP経路の活性化に関する実験として、CREBレポーターベクター/ルシフェラーゼアッセイの測定系を構築して実験に供したとところ、陽性対象であるフォルスコリン刺激に対する反応性が確認されなかったことから、新たにタンパク質不安定化配列を有するルシフェラーゼタンパク質を利用したルシフェラーゼアッセイ系を構築し、刺激応答感受性を高めた実験系を用いて解析することとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
精巣関連細胞株を用いた、インクレチン受容体アゴニスト刺激による細胞内cAMP経路活性化に関する実験については、タンパク質不安定化ルシフェラーゼを用いたCREBレポ-ターベクター/ルシフェラーゼアッセイの測定系を確立し、解析を進める計画である。また、マウス個体にインクレチン受容体アゴニストを投与し、精巣に対する影響を解析する実験を引き続き実施していく。通常マウスに加え、高脂肪食給餌による肥満モデルマウス、および遺伝性糖尿病・肥満モデルマウスを用いて、急性もしくは慢性投与による影響を解析する予定である。さらにインクレチン分解酵素阻害剤(DPP-IV阻害剤)の使用も検討して、精巣もしくは精巣関連細胞に対するインクレチン作用の解析を継続する。
|
Causes of Carryover |
研究を円滑に遂行するために備品として分光光度計の購入を計画している。備品購入に加えて、実験研究に必要な物品を購入する費用に当てるため、翌年度に繰り越しを行う。
|
Research Products
(1 results)