2019 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of physiologocal roles of USP2 in energy metabolism by using cell-specific knockout models
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18K06035
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
北村 浩 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (80312403)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ユビキチン / 視床下部 / 骨格筋 / エネルギー代謝 / USP2 / 組織選択的ノックアウトマウス / 筋損傷 / 2型糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Usp2fl/flマウスと骨格筋選択的Cre発現により交配で得られた骨格筋選択的Usp2欠損マウスに長期高脂肪餌を給餌し、骨格筋でのインスリン感受性をAktやinsulin受容体のリン酸化で評価したが、コントロール(Usp2fl/fl)マウスと差は無かった。個体差が大きかったことから、より短期での2型糖尿病を惹起できる少量のストレプトゾトシン投与併用モデルで検討したところ、骨格筋選択的Usp2欠損モデルでインスリン反応性に差が認められた。また、USP2の筋細胞における標的候補分子を見出した。 2.カルジオトキシンが入手困難なため塩化バリウムの筋肉内投与や凍傷、筋拘束による萎縮後の回復期について形態的に骨格筋選択的Usp2の効果を検証した。コントロールマウスと比べUsp2欠損マウスでは筋線維の修復に阻害傾向が認められた。 3.前年度の検討で視床下部の底部にUSP2選択的阻害剤を投与したところ摂食量の変化を見出したが、本年の検討では継続的な体温の変化を認めた。また神経活動にも変化がみられた。当初VMH選択的Usp2欠損マウスを用いた検討を予定したが、阻害剤投与の効果が多岐に渡ったためその検証に時間を費やした。神経全体でUsp2の発現を欠損するマウスを作出したところ、摂餌量、体温に変化がみられた。 4.Fosプロモーター制御下で赤色蛍光を発するマウスを作出した。低血糖前後で脳内で蛍光タンパク質の発現が変わる神経核を探索したが見出せなかった。代わりにArcプロモーター制御下で赤色蛍光を発するマウスを作成し、ストレス負荷実験を実施中である。 5.マクロファージ選択的Usp2欠損マウスは精子の運動性を低下させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)視床下部におけるUSP2の役割については、VMH選択的Usp2ノックアウトマウスモデルを使用した検討は着手できなかった。しかし、①USP2阻害剤を視床下部底部に投与した場合と、②神経選択的Usp2ノックアウトマウスで、視床下部の機能が変化する表現型が得られたことから、視床下部のUSP2の役割がより確かに証明できた。従って、当初の予定とは手法は変わったが、目的としていた結果が得られたので順調と言える。 2)骨格筋選択的Usp2ノックアウトマウスを用いた検討でインスリンシグナルに対するUSP2の役割を明らかにできた。さらにUSP2の標的候補分子を明らかにするという当初予定していなかった成果も得られた。 3)筋損傷モデルを用いたUSP2の役割解析についても、入手が困難になったカルジオトキシンに変わるモデルを複数検討することに時間がかかったが、USP2の有無で変化がみられるモデルが得られた。従って概ね順調と言える。 4)Fosの発現する細胞で赤色蛍光を発するマウスを作成したが、低血糖にしても蛍光タンパク質の発現パターンは変化はみられなかった。このことはFos遺伝子プロモーターが低血糖に反応するという仮定が成立しなかったことを意味する。代替材料として、エネルギー代謝に反応するとされるArcのプロモーターが活性化すると赤色蛍光を発するマウスを作成できた。さらにArc発現細胞でUsp2を欠損するマウスも作出できたので結果的には概ね順調と判断した。 5)マクロファージのUSP2が精子の運動性を制御するという当初全く予想していなかった新たなUSP2の作用が見つかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)視床下部のUSP2の役割は阻害剤の投与領域をより厳密にすることで作用部位を明らかにする。さらに摂餌量や体温以外の表現型の変化を調べる。また神経全体でUsp2を欠損するマウスにUsp2強制発現ウイルスベクターを視床下部に導入し、表現型を調べることで、USP2の役割をより明確にする。 2)骨格筋のインスリン感受性について、USP2が制御する細胞内情報伝達系をより詳細に調べると共に、USP2の直接、間接的な分子標的を主に培養細胞系を用いて探索する。 3)USP2欠損が影響を与える筋修復・再生関連する分子の発現や反応を明確にする。特に予備的検討で結果が明確な塩化バリウムおよび凍傷モデルで検討を進める。一方で衛星細胞や筋芽細胞でのUSP2の役割解析を進める。また、この時のUSP2の分子標的をスクリーニングする。 4)Arcプロモーター制御下でUsp2を欠損するマウスを高血糖・低血糖にする。このときグルコースやインスリンを投与したときの血糖値や種々の血液指標に与える効果を調べることで、糖レベル応答におけるUSP2の役割を明らかにする。 5)マクロファージ選択的Usp2KOマウスの精子運動性の低下のメカニズムを特にエネルギー代謝変化を中心に調べる。またマクロファージから分泌されるこの制御に関わる分子を探索する。
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Causes of Carryover |
2型糖尿病作成のためのマウスの長期飼育に係る実験系は個体間のばらつきが大きいことから期間を短縮したモデルに切り替えたことによる飼料代等の削減。また、インスリンシグナルの解析中に当初予定した多くのタンパク質を調べる前に標的候補分子が見つかったので使用額が小さくなった。一方で、衛星細胞の分離や活性化細胞選択的なノックアウトマウスの解析など、当初当該年に実施予定だった大きな資金が必要な計画が、モデルの切り替えや計画の変更に伴い次年度の実施となったことも大きな要因である。
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Remarks |
研究室公開のオフィシャルフェイスブックページ。研究代表者の研究成果も紹介している。
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Research Products
(8 results)