2018 Fiscal Year Research-status Report
配偶核形成にて発見した新奇なゲノム切断(DSB)が誘発するクロマチン再構築の研究
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18K06051
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福田 康弘 東北大学, 農学研究科, 助教 (50527794)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クロマチン再構成 / テトラヒメナ / DSB / SNF2 |
Outline of Annual Research Achievements |
繊毛虫テトラヒメナは,大核と小核という機能的かつ構造的に分化した 2 つの核を 1 つの細胞内にもつ.大核は多倍数体化したゲノムをもち,遺伝子発現へ特化することで細胞の増殖と維持を担う体細胞系列として働く.対して小核は転写活性をもたず,有性生殖を経て繊毛虫の全ゲノム情報を子孫へ伝える生殖系列に相当する.接合が始まると小核は減数分裂を行い,4つの半数体小核が作られる.その直後,減数分裂における相同染色体組換えとは異なるタイプの DNA 二重鎖切断(Post-meiotic DNA double-strand breaks: PM-DSBs)が全ての半数体小核へ導入される.やがて選択された 1 つの半数体小核: 選択核のみへ DNA 修復因子が特異的にリクルートされる.この核が配偶核へと発達する.PM-DSBs 導入を抑制すると全ての半数体小核が分解されることから,PM-DSBs 導入はテトラヒメナの配偶核形成において重要な役割を担うらしい.ヒストンシャペロンやヒストン修飾を変化から,PM-DSBs は DDR (DNA Damage Response) を介したクロマチン再構成の誘発であるという仮説が立てられた. これまでクロマチン再構成複合体に注目して,それらが配偶核形成に関与するか調べた.解析の結果,テトラヒメナの SNF2 14 遺伝子のうち,ヌクレオソームのスライド能をもつ 1 分子が配偶核形成に重要であることが明らかになった.この SNF2 は DDR 初期に機能しており,初期応答でのクロマチン弛緩が配偶核形成の 1 ステップとして重要であることがわかった.また複数の DNA 再結合系が PM-DSB に応答した DDR でパラレルに動くことも示唆された.選択核のヒストン修飾についても再検証すると,リジン残基の一過的な脱アセチルと再アセチル化という変化も捉えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018 年度は配偶核形成に不可欠であると示唆されたクロマチン再構築実行因子のうち,とくに SNF2 ファミリーに注目して解析を進めた.テトラヒメナのゲノムは SNF2 コア 14 遺伝子をコードしている.これらの蛍光タグ融合タンパク質発現株を作製して局在解析を進め,うち 4 分子が選択核に局在することを明らかにした,選択核へ局在した SNF2 が配偶核形成に関与しているのかを明らかにするため,それぞれの KO/KD 株を作出して機能解析を進めた.この解析から,ヌクレオソームをスライドさせる SNF2 が PM-DSB 導入に対する選択核での DDR で機能すること,そして DDR が配偶核の形成に不可欠であることが明らかになった.続いて DDR に注目して解析を進め,DNA 修復メカニズムの主要なパスウェイおよび DNA 再結合複合体の候補遺伝子を同定した. ヒストン H3/H4 リジン残基アセチル化について,抗体特異性を検証しつつ IF を進めた.これにより PM-DSB 導入による一過的な脱アセチル化が起こり,そして選択核の DDR で特定のリジン残基が再びアセチル化されるというヒストン修飾の一連の変化が捉えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
配偶核形成に不可欠なクロマチン再構成について,その分子機構の一端を明らかにした.とくに SNF2 コアの知見は,PM-DSB 導入に応答した DDR 中にクロマチン再構成が起こるタイミング示唆するものであった.そこで 2019 年度は DDR の DNA 再結合メカニズムに注目して解析を進めることとする.複数の DDR 関連分子が PM-DSB 応答が起きる選択核へ局在する.これらの分子を足がかりに前述のメカニズム解析を進め,さらに DNA 再結合と相互に作用するクロマチン再構成因子を調べる.またテトラヒメナの全 SNF2 について行った局在解析の結果,新たな SNF2 の機能を示唆する結果が得られているので,これについても解析を試みる. 選択核の DDR から観察されたリジン残基の脱アセチル化およびアセチル化は,PM-DSB が不全になった細胞では観察されない.このことは PM-DSB 導入から続く DDR でのヒストンリジン残基アセチル化修飾の変化が,配偶核形成と関連することを改めて強く示唆している.DDR でアセチル化されるゲノム上の領域を Chip-seq で同定したいが,そのためには配偶核もしくは選択核を単離する技術が不可欠である.海外研究協力者の研究進展から,選択核の周辺のみに局在する分子が同定されている.これを手がかりとして,まず選択核を特異的に単離・収集する実験技術の確率を進める.
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Causes of Carryover |
実験解析が順調に進み,高額な酵素や抗体などの購入回数が当初の見積もりよりも少なくすんだ.この差額については,次年度で新たなカスタム抗体の作製,もしくは受託解析などの費用に充てて,研究の発展へ活用する予定である.
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Research Products
(5 results)