2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞の老化と若返りを支配するリボソームRNA遺伝子の不等分配に関する研究
Project/Area Number |
18K06056
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀籠 智洋 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (10771206)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | リボソームRNA遺伝子 / rDNA / 核膜 / 老化 / 若返り / マイクロ流体チップ |
Outline of Annual Research Achievements |
課題1 核膜がrDNA安定化に果たす役割の解明 修復が困難なDNA二本鎖切断(DSB)は核膜に移動して核膜孔と結合する。この核膜結合はDNA修復およびゲノムの安定性の維持に貢献している。リボソームRNA遺伝子(rDNA)は真核生物ゲノムにおける最大の反復配列であり、最も不安定な領域のひとつである。rDNAでは、複製阻害点における複製フォークの停止とDSBが引き起こされる。本研究では、rDNAと核膜との結合とその役割について明らかにする。今年度はクロマチン免疫沈降法により、rDNAが核膜孔複合体と結合することを明らかにした。この結合は複製複合体Tof1およびDNA損傷チェックポイントキナーゼMec1/Tel1に依存していたことから、複製阻害とそれに引き続くDSBがrDNAの核膜孔結合の要因であることが示唆された。また、rDNAにエンドヌクレアーゼI-SceIを用いて人為的にDSBを誘導したところ、切断を受けたrDNAが核膜に移動することが定量的顕微鏡解析により示された。核膜結合に欠陥を持つ変異株においてrDNAの安定性が低下したことから、核膜結合はrDNAの安定性維持に寄与していることが示唆された。これらの成果を雑誌PLOS Geneticsに投稿し、平成31年4月に入り受理された。 課題2 マイクロ流体チップを用いた「老化・若返りの瞬間」の解析 本研究では、マイクロ流体チップを用いた蛍光顕微鏡観察により、不安定なrDNAを持つ老化した母細胞から安定なrDNAを持った娘細胞が生まれる瞬間を解析する。今年度はマイクロ流体チップを用いて長時間培養し細胞寿命まで観察する技術を確立した。またrDNAリピートの長さを蛍光顕微鏡下で定量する技術も確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1については予定していた目的の大部分を達成し、論文としてまとめることが出来た。予定よりも早い進捗状況である。 課題2についてもおおむね順調に進展している。マイクロ流体チップにおける長時間の細胞保持に技術的な難しさがあったものの、数百細胞の解析は可能であることが分かった。定量的な解析には十分なスケールが確保できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題1: 今後はrDNAの核膜結合のより深い理解の為の解析を行う予定である。具体的には核膜結合が出来ない変異株における寿命の測定や、人為的にrDNAを核膜に結合させた状態でその安定性への寄与を調べる機能付加型のモデル実験を予定している。 課題2: マイクロ流体チップを用いる方法、および細胞をビオチン標識して老化細胞を選別する方法を用い、老化細胞でDNA修復タンパク質やrDNAに関連のあるタンパク質などの分配に偏りがないかなどを一細胞レベルで解析する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: マイクロ流体チップに掛かる費用を計上していたが、今年度はチップを用いた老化細胞解析が少なかった。そのため物品費の使用が予定よりも少なくなった。 使用計画: 来年度は、マイクロ流体チップを用いた課題1におけるrDNAと核膜結合の老化への影響の解析と、課題2における老化細胞の解析が本格化する。そのための物品費が必要となる。また,国内の学会参加費も支出予定である。
|
Research Products
(1 results)