2020 Fiscal Year Research-status Report
新規RNA免疫沈降法 (tRIP法) によるRNA-タンパク相互作用解析の新展開
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18K06058
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増田 章男 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10343203)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNA-蛋白相互作用 / FUS / IDR / SRSF3 / tRIP / 転写制御 / 相分離 / 天然変性領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、RNA結合タンパクFUSとU1 snRNPの相互作用について、本課題で確立したRNA-protein相互作用検出法tRIPを用いて研究を行い、その成果をEMBO reports誌に論文として発表した。この論文では、基本スプライシング因子であるU1 snRNPとFUSからなる複合体が転写終結を促す機構の詳細について、報告している。 また、tRIP法について他研究施設との共同研究を進めており、2つの機能不明RNA結合蛋白の制御mRNAを同定した。 さらに、RNA結合蛋白SRSF3の標的エクソンをtRIP法により同定し、SRSF3の新規機能を見出した。SRSF3は、スプライシングを促進する因子として知られていたが、その詳細は不明であった。本解析により、SRSF3は長いエクソン特異的に結合し、それらスプライシングを促進していることが判明した。これらエクソンは、大半が転写関連遺伝子の構成的エクソンであり(選択的でない)、アミノ酸P,Sに富んだ天然変性領域(IDR)をコードしていた。その塩基配列は、大きくC塩基に偏り、C-rich配列を好むRBPであるSRSF3の結合を促進すると同時に、他の配列を好むRBP結合を排除する。このため、SRSF3が欠失すると、他のRBPによる代償が効かず、スプライシングが破綻した。この破綻は、細胞内で転写因子のIDR欠失を引き起こし、広範な転写障害をもたらす。進化学的解析により、これらの長いエクソンは、脊椎動物以降に出現しており、進化とともにC塩基とPSアミノ酸が選択されていることが明らかとなった。本解析により、転写制御に必須な相分離現象が、どの様に生物で獲得・維持されてきたかが、判明した。以上の結果について、論文投稿を行い、現在revision中である。すでに、追加実験を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SRSF3の新規機能を発見し、その結果について学術誌に論文投稿したところ、revisionとなり、いくつかの追加実験が必要となった。追加実験は、最低、数か月必要な見込みで、本年度内に終了することが困難となり、遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
必要な追加実験を速やかに行い、改訂した論文を投稿し、早期の論文の受理を目指す。
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Causes of Carryover |
成果を論文投稿したところ、revisionとなり追加実験が必要となったため。 追加実験に必要な試薬・器具類の購入費用と、論文受理に伴う掲載料に使用する見込み。
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