2018 Fiscal Year Research-status Report
TGF-beta-induced alteration of gene silencing for stem cell maintenance and differentiation
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18K06059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井木 太一郎 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20774011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | miRNA / Dicer / 生殖幹細胞 / TGF-β/BMP |
Outline of Annual Research Achievements |
ハエ卵巣においてTGF-β/BMP経路を活性化させるとガイド鎖miRNAの選択が制御され、5P鎖と3P鎖間の転換が生じることがmiR-278などの解析から明らかになってきている。研究実施計画に掲げたように、恒常活性型のレセプターTkvを発現する系統 UAS-Tkv-CA を利用することにより、TGF-β/BMP経路を活性化させた卵巣からRNAを調整し、miR-278を含めたmiRNAの定量解析を行った。対照のサンプルとして、野生型の卵巣、さらには、成熟した卵も解析に加えた。成熟卵においてとりわけmiR-278の3P鎖が蓄積する一方、5P鎖はとりわけTkv-CA系統において蓄積が顕著であり、ガイド鎖が卵巣において柔軟に変化していることが確認された。次に、卵巣から抽出液を作成し、合成したmiR-278前駆体(pre-miR-278)を添加し、試験管内におけるプロセシングにより蓄積するmiR-278の5P鎖と3P鎖それぞれをノザンにより解析した。興味深いことに、Tkv-CA系統の卵巣抽出液において5P鎖と3P鎖の両方の蓄積が減少し、プロセシング活性が低下するという結果が得られた。この結果は、miR-278の5P鎖と3P鎖の蓄積の転換を完全に説明するものではないが、TGF-β/BMP経路の下流において、miRNA合成経路がDcr-1による前駆体プロセシングの段階で制御されることを示唆している。miR-278に限らず、様々なmiRNAがDcr-1の段階においてTGF-β/BMP経路により抑制されているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
卵巣から細胞抽出液を調整する場合、分化ステージの異なる様々な生殖細胞や、follicle cellと呼ばれる体細胞など由来の成分が液中に混在することになる。野生型とTkv-CA系統との単純な比較においても、野生型の抽出液におけるDicer活性(pre-miR-278から5P鎖と3P鎖からなる二本鎖を切り出す活性)がとりわけ不安定になりやすい。さらに、プロセシングにより切り出された二本鎖miRNA-278や、合成二本鎖miR-278が、細胞抽出液においては速やかに分解されてしまうことがわかってきている。こうしたことから、in vitroにおいてmiR-278のガイド鎖転換を再現させることが達成できていない。細胞抽出液におけるRNA分子の不安定性は、ビオチン化したRNAを用いる免疫沈降実験の妨げにもなっている。この問題を回避するため、二本鎖miRNAと結合するAgo1タンパク質などを免疫沈降する方法に重点を置き、TGF-β/BMP経路の下流においてmiRNAのガイド鎖転換を制御する未知因子の同定を狙うことにした。その場合、エピトープを付与したAgo1などを発現させる系統(UAS-FLAG-Ago1など)を新たに作成し、さらに、UAS-Tkv-CAを維持する系統と組み合わせなくてはならない。それらの系統の確立に時間がかかってしまった。しかしながら、FLAGタグを付与したAgo1、Ago2、Dcr-1などをTkv-CA条件において発現させることができる系統の確立が終わりつつある。FLAG抗体を用いた免疫沈降と質量分析を組み合わせることにより、TGF-β/BMP経路下流ではたらくmiRNA相互作用因子の探索を行うことができる段階に到達している。
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Strategy for Future Research Activity |
TGF-β/BMP経路が活性化しているTkv-CA条件の卵巣抽出液において、Dcr-1の活性がなんらかの原因により抑制され、miR-278を含めたmiRNAの蓄積が低下することがわかってきている。この結果は、研究計画段階でmiR-278に着目していたTGF-β/BMP経路が、より広範にmiRNA経路へ影響を与えていることを示唆している。前駆体であるpre-miRNAの切断はDcr-1の機能に依存することが知られている。今後の研究の推進方策として、Agoタンパク質のみならず、Dcr-1タンパク質にも注目し、相互作用が推定される未知因子の同定を目指す。Tkv-CA条件の卵巣からエピトープを付与したDcr-1を含む複合体を免疫沈降することにより、TGF-β/BMP経路により誘導され、Dcr-1の機能に抑制的にはたらく未知の因子の単離を試みる。質量解析により得られる候補因子群についての解析は、計画研究通りに進めることとする。
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