2018 Fiscal Year Research-status Report
Gross chromosomal rearrangements using DNA repeats
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18K06060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 拓郎 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (20324866)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 染色体異常 / 分裂酵母 / セントロメア / ヘテロクロマチン / 転写 / RNAポリメラーゼII |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂酵母のメチル化酵Clr4はヒストンH3の9番目(H3K9)のリシンをメチル化することで、セントロメア・リピートを「のりしろ」にした染色体異常を抑制する。これらの結果から、ヘテロクロマチンは染色体異常の抑制に重要であると考えられる。 Ago1はセントロメア由来の低分子RNAと結合し、Chp1やTas3と共にRNA-induced transcriptional silencing (RITC)複合体を形成する。RITS複合体はセントロメアに結合し、Clr4をリクルートすることで、セントロメアのヘテロクロマチン化を促進する。ago1破壊株はclr4破壊株よりも高頻度で染色体異常が起きた。ところが、Chp1やTas3を破壊しても、ago1破壊株に比べ染色体異常は僅かにしか上昇しなかった。また、低分子RNAの合成などに関与するRdp1、Dcr1、Arb1、Arb2を破壊しても染色体異常は部分的にしか増加しなかった。これらの結果から、RNA干渉に関与する他の因子とは独立の機能をAgo1は有しており、それにより染色体異常を抑制すると考えられる。 ヘテロクロマチンはRNAポリメラーゼの結合を阻害することで転写を阻害する。よって、ヘテロクロマチンが転写阻害を介して染色体異常を抑制する可能性が考えられる。そこで、RNAポリメラーゼIIを変異(rpb1-S7A)することで人為的に転写を阻害した。その結果、rpb1-S7Aの導入によりclr4破壊株での染色体異常が大きく減少した。また、複数の転写因子の中でも、Tfs1/TFIISの破壊が特異的に染色体異常の減少を引き起こした。Tfs1は一旦DNA鎖上を後退したRNAポリメラーゼIIの進行再開を促進することから、転写の中でも「進行再開」が反復配列を介した染色体異常を誘発すると考えられる。これらの研究成果を2019年1月に論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAポリメラーゼIIが停止しDNA鎖上を後退したとき、RNAポリメラーゼIIは進行再開する場合とポリユビキチン化されて分解される場合がある。ユビキチン分解酵素Ubp3/USP10はRNAポリメラーゼIIからユビキチンを除去することで進行再開を促す。ヘテロクロマチン欠損株では転写の進行再開が染色体異常を誘発する可能性を検証するためにUbp3を破壊した。その結果、Ubp3を破壊するとclr4欠失株での染色体異常が大きく減少した。 rad51欠失株ではMus81依存的な交叉型組換えにより染色体異常が起きる。一方、clr4欠失株ではMus81ではなくCdc27/Pol32依存的に染色体異常が起きることから、ヘテロクロマチン欠損株では交叉型組換えではなくDNAポリメラーゼδが関与するBreak-induced replication (BIR)により染色体異常が生じると考えられる。しかし、Cdc27はPolδ(デルタ)とPolζ(ゼータ)で共通のサブユニットである。どちらが染色体異常に関与するのかを明らかにするために、PolδとPolζに特有のサブユニットの関与を調べた。その結果、Polδのみが染色体異常に関与することが明らかとなった。 ヘテロクロマチン欠損株で起きる染色体異常に働く組換え因子を調べた。D-loop形成に働くRad51の補助因子Swi5を破壊するとclr4欠失株での染色体異常が減少した。また、Rad52の単鎖DNAアニーリング(SSA)能を特異的に欠損したrad52-RK変異をclr4欠失株に導入した場合にも染色体異常の減少が見られた。これらから、Swi5(D-loop)とRad52 (SSA)の両方が反復配列間の染色体異常に関与すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Rad8/Rad5/HLTFによるPCNAのK107のユビキチン化がrad51欠失株で起きる染色体異常に必要である。また、PNCA K107R変異株ではRad52-GFPのフォーカス形成の減少が見られた。これらの結果から、PCNA K107のユビキチン化修飾はRad52のDNA損傷部位への局在を促進することで、単鎖DNAアニーリング(SSA)による染色体異常に働くと考えられる。本年度はこれまでの実験結果をブラッシュアップして科学雑誌での発表を目指す。 ヘテロクロマチン欠損株ではSwi5、Rad52により反復配列間の組換えが開始して、PolδによるBIRが起こることで異常染色体が生じると考えられる。今後、swi5とrad52-RKの両方を変異したときの影響を調べることで、Swi5とRad52が独立に機能するのか共同して機能するのかを明らかにする。また、これらの因子のセントロメア領域に局在化するのかをクロマチン沈降(ChIP)法や蛍光顕微鏡観察により調べる。そして、Tfs1/TFIISやUbp3/USP10がこれら組換えや複製に関与するタンパク質のセントロメア結合に必要であるのかを調べる。これらの解析により、反復配列での転写の進行再開がBIRによる染色体異常を誘発するメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
今回、内定いただいた3年間の科学研究費(基盤C)の初年度に配分された研究費の効率的な使用と節約などにより次年度使用額が生じた。翌年度は、クロマチン免疫沈降(ChIP)法によるタンパク質の染色体結合やRNA-DNAハイブリッドの検出を予定している。繰り越した助成金は、その際に必要な比較的高額なリアルタイムPCRの試薬の購入代金などに当てる予定です。また、最近、高騰している投稿論文の掲載料などにも当てる予定です。
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Research Products
(12 results)