2020 Fiscal Year Research-status Report
Gross chromosomal rearrangements using DNA repeats
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18K06060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 拓郎 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (20324866)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 染色体異常 / セントロメア / DNA反復配列 / 相同組換え / DNA複製 / 同腕染色体 / 分裂酵母 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
転座などの染色体異常は、細胞死やガンなどの遺伝性疾患の要因となる。また、長期的な視点に立つと染色体異常は進化の原動力ともなる。よって、染色体異常は重要な生命現象であると考えられる。しかし、染色体異常が起きる分子メカニズムはいまだ解明されていない。 自然発生的なDNA損傷が生じても、通常は、Rad51依存的組換えによってDNAが正確に修復されるために染色体は安定に維持される。しかし、Rad51が正常に機能しないと染色体異常が高頻度で発生する。分裂酵母でも、Rad51が機能しないと染色体のセントロメア領域に存在する反復配列を「のりしろ」に、染色体腕が同一配列となった同腕染色体などが高頻度に形成される。 PCNAはホモ3量体でリング構造を形成し、DNA鎖を取り囲むように結合し、複製や修復因子のDNA結合の足場となる。我々は、ユビキチンリガーゼRad8は、ユビキチンE2酵素Mms2-Ubc4と協働してPCNAの107番目リシン(K107)をユビキチン化することで同腕染色体の形成に働くことを明らかにした。Rad51と異なり、Rad52は相補鎖どうしをアニーリングする活性を持つ。遺伝学的な解析から、PCNA K107のユビキチン化はRad52と同一経路で染色体異常の発生に関与することを明らかにした。PCNA3量体の構造解析から、K107はPCNA-PCNA間の相互作用面に存在することが示唆された。そこで、PCNA-PCNA相互作用を低下させるD150E変異をPCNAに導入したところ、K107がユビキチン化されなくても高頻度で染色体異常が起きるようになった。これらの結果から、Rad8によるK107のユビキチン化は、PCNA3量体を構造変化させることで、Rad52依存的な染色体異常を誘発すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
染色体異常は生物に多大な影響を与えるにも関わらず、その分子メカニズムは未だ明らかとなっていない。本研究では、分裂酵母を用いて染色体異常の分子メカニズムを解明する。 【1】染色体のセントロメア領域には、DNA反復配列が存在し、それを「のりしろ」に染色体異常が起きる。我々は、セントロメア領域に特徴的なヘテロクロマチン構造が転写を阻害することで染色体異常を抑えることを明らかにした (Okita et al. 2019; Nakagawa and Okita 2019)。 【2】Rad51が機能しないとセントロメア反復配列を介した染色体異常が高頻度で起こる。我々は、Rad52のアニーリング活性が染色体異常の発生に関与することを明らかにした。また、通常は、DNA複製因子がRad52の働きを制御することでセントロメア領域での染色体異常を抑制することを明らかにした(Onaka et al. 2020)。 【3】我々は、Rad8はPCNA K107をユビキチン化することでRad52依存的な染色体異常を促進することを明らかにした。当初、生化学的手法により、PCNA K107のユビキチン化の影響を明らかにする計画であった。しかし、ユビキチン化したPCNAが非常に少なく、ウェスタンブロットでは検出できなかった。そこで、生化学的解析に代わる方法として、PCNA-PCNA間の相互作用を低下させるD150E変異の影響を調べた結果、K107のユビキチン化がPCNA3量体を構造変化することが示唆された(論文投稿中)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後1年の間に、PCNA K107のユビキチン化に関する投稿論文を追加実験も踏まえて完成させる。また、frc1 rad52二重変異株を作成し、Frc1とRad52が同一の経路で染色体異常やDNA損傷修復に働くのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルスの流行により、参加を予定していた学会発表の多くが中止あるいはオンライン開催となった。そのために、当初予定していた旅費等を含む科学研究費を次年度使用することにした。現在、PCNAのユビキチン化に関する研究論文が査読中である。次年度には、査読の結果、必要となった追加実験などを行い、論文の投稿料を支払うために科学研究費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)