2019 Fiscal Year Research-status Report

Interaction between nuclear lamina and heterochromatin during G1 phase

Research Project

Project/Area Number	18K06066
Research Institution	University of Hyogo
Principal Investigator	廣瀬富美子兵庫県立大学, 生命理学研究科, 准教授 (60208882)
Project Period (FY)	2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords	核ラミナ / ヘテロクロマチン / Ｇ１－Ｍ期 / ライブイメージング
Outline of Annual Research Achievements	転写が抑制された状態のヘテロクロマチンと転写が盛んなユークロマチンは核内で住み分けをしている。例えば、核膜付近にはヘテロクロマチンが配置され、この状態は細胞分裂を越えて娘細胞へ受け継がれる。動物細胞は細胞分裂期（M期）には、クロマチンは染色体へのダイナミックな高次構造の変換が起こる、一方で核膜と核膜の内側に存在する核ラミナは分裂期ごとに崩壊と再構築が繰り返される。G1期には再び核膜付近にヘテロクロマチンが分布する。つまり、核内でのクロマチンの特徴的な分布は細胞周期ごとにリセットされると言える。しかしながら、細胞周期ごとに繰り返されるクロマチンの再配置が起こる詳細なタイミングやこれに関わる因子については未解明である。平成30年度は核ラミナの構成成分であるラミンＡとヘテロクロマチン結合因子HP1ファミリーたんぱく質などを蛍光たんぱく質との融合たんぱく質として発現させ、分裂期後半から次のG1期にかけて観察するライブイメージングの条件を決めた。令和元年度はさらに、ラミンＡとヘテロクロマチン結合たんぱく質HP1 ファミリーたんぱく質の細胞内相互作用を生細胞で観察するために蛍光たんぱく質Kusabira greenを利用したたんぱく質断片コンプリメンテーション系を作成した。この方法により、分裂期終期の核ラミナの形成されはじめる時期に染色体の周縁の一部でラミンＡとHP1βが相互作用をはじめ、その後G1期に入っても、核膜直下のヘテロクロマチンが局在する領域において両者の相互作用が持続されることを見出した。SUMO化ラミンＡと相互作用する因子の精製をするための免疫沈降実験に適した欠失変異体ラミンＡを作成することができた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason Kusabira Green を利用したたんぱく質断片コンプリメンテーション系を作成することができたが、分裂期から次の細胞周期にわたる長時間の観察は未だできていない。これは、細胞周期に依存して細胞の形が大きく変化することと、時間経過に伴い、蛍光たんぱく質の発光が微弱化することに因る。　ラミンＡたんぱく質とSUMO化依存的に相互作用する因子の検索については、免疫沈降を行うためのラミンＡたんぱく質欠失変異体を作成することはできたが、細胞内のSUMO化たんぱく質を安定的に免疫沈降、検出することに困難があった。これは、細胞抽出液中に存在する脱SUMO化酵素の働きにより、目的たんぱく質のSUMO化が除かれてしまうことに起因している。反応液の組成や実験の迅速化など更なる実験系の検討が必要であると考えている。
Strategy for Future Research Activity	Kusabira Greenを利用した細胞内たんぱく質間相互作用のライブイメージングは回数をこなし確実にデータを取るのみと考えている。また、核内に見られる蛍光シグナルを経時的に観察する際に、本当に同じ蛍光シグナルを追跡曖昧であることが問題となる。この問題を解決するために、光変換蛍光たんぱく質を用いて核内に観察される蛍光シグナルの一部のみを光変換させ、追跡できるような系を立ち上げる予定である。例えば、構成的ヘテロクロマチンであるテロメアやセントロメアであれば、細胞周期を通してこの領域に結合している特異的因子があるので、そのような因子に光変換蛍光たんぱく質を融合させ、核あたりひとつの核内シグナルを光変換後に長時間追跡することは可能であると考える。そのために、CENPAやTRFなどの構成的ヘテロクロマチン結合たんぱく質を観察する準備を進めている。
Causes of Carryover	ラミンＡたんぱく質の相互作用子の精製をするために計画していた免疫沈降実験に実施が遅れている。この計画のために、抗体や免疫沈降試薬などの購入を予定していたが、未だ本格的に実施できていないためである。しかしながら、この計画を行うための準備は整ったので、次年度はこれを実施する。合わせて、精製が成功した際には、たんぱく質の同定は質量分析を外注で行う予定であるので、その費用に充てるつもりである。