2020 Fiscal Year Research-status Report
Interaction between nuclear lamina and heterochromatin during G1 phase
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18K06066
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
廣瀬 富美子 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 准教授 (60208882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核ラミナ / ライブイメージング / ヘテロクロマチン / G1期 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写が抑制された状態のヘテロクロマチンと転写が盛んなユークロマチンは核内で住み分けをしている。例えば、核膜付近にはヘテロクロマチンが配置され、この状態は細胞分裂を越えて娘細胞へ受け継がれる。動物細胞は細胞分裂期(M期)には、クロマチンは染色体へのダイナミックな高次構造の変換が起こる、一方で核膜と核膜の内側に存在する核ラミナは分裂期ごとに崩壊と再構築が繰り返される。G1期には再び核膜付近にヘテロクロマチンが分布する。つまり、核内でのクロマチンの特徴的な分布は細胞周期ごとにリセットされると言える。しかしながら、細胞周期ごとに繰り返されるクロマチンの再配置が起こる詳細なタイミングやこれに関わる因子については未解明である。これまでに核ラミナの構成成分であるラミンAとヘテロクロマチン結合因子HP1βをそれぞれGFPやmCherryなどの蛍光タンパク質との融合タンパク質として発現させ、分裂期後半から次のG1期にかけてのライブイメージングを行った。その結果、HP1βが強く光る核内ドメイン(ヘテロクロマチン領域)が分裂期終期に再構築されたばかりの核ラミナと接する領域で観察された。令和2年度は、ラミンAとHP1βが直接的な相互作用をしているかどうかを検証するために蛍光たんぱく質Kusabira greenを利用したタンパク質断片コンプリメンテーション系を作成し、分裂期からG1期にかけての両者の相互作用をライブイメージング解析した。両者は核ラミナの形成されはじめる時期に染色体上で相互作用を開始するが、この相互作用はG1期に入っても続くことが分かった。G1期初期の5時間程度の間に相互作用する核内の場所が徐々に変化するような予備的な観察結果も得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分裂期からG1期にいたる12時間程度のライブイメージングを目指しているが、時間経過に伴い、蛍光タンパク質の発光が微弱化するために満足のいく結果が得られていない。 ラミンAたんぱく質とSUMO化依存的に相互作用する因子の検索については、免疫沈降を行うためのラミンAたんぱく質欠失変異体の作成と、細胞内のSUMO化修飾を安定させるための変異型SUMOタンパク質発現系は完成した。しかしながら、COVID19の流行による教育業務の増加の影響で研究に十分な時間を当てることことができなかったことが遅れの大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
Kusabira Greenを利用した細胞内タンパク質間相互作用のライブイメージングは繰り返し行うことでデータの信頼度をあげる必要がある。さらに光変換蛍光タンパク質を用いて核内に存在するラミンAとHP1βの蛍光シグナルの一部のみを光変換させ、経時的に追跡できるような系を立ち上げる予定である。例えば、構成的ヘテロクロマチンであるテロメアやセントロメアであれば、細胞周期を通してこの領域に結合している特異的因子があるので、そのような因子に光変換蛍光たんぱく質を融合させ、核あたりひとつの核内シグナルを光変換後に長時間追跡することは可能であると考える。最終年度は、すでに作成した蛍光タンパク質と融合させたCENPAやTRFなどの構成的ヘテロクロマチン結合タンパク質の分裂期からG1期にかけての核内動態を観察する。
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Causes of Carryover |
COVID19感染症による緊急事態宣言に発令に伴い、研究が中断されたことが最も大きな理由である。また、現在投稿中の研究成果をまとめた原著論文の内容についていくつかの追加実験が求められ、そのための実験を優先したために当該研究課題を中断していることもその理由である。来年度は、やり残した研究課題の遂行のため、抗体やライブイメージング解析のツールの購入、さらに論文の掲載料などに使用する予定である。
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