2021 Fiscal Year Research-status Report
Interaction between nuclear lamina and heterochromatin during G1 phase
Project/Area Number |
18K06066
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
廣瀬 富美子 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (60208882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 核ラミナ / ライブイメージング / ヘテロクロマチン / G1期 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘテロクロマチンとユークロマチンは核内で住み分けをしている。一般的に、核膜付近にはヘテロクロマチンが分布しており、この状態は細胞分裂を越えて娘細胞へ受け継がれる。動物細胞は細胞分裂期(M期)には、クロマチンは染色体へのダイナミックな高次構造の変換が起こり、核膜と核膜の内側に存在する核ラミナは分裂期ごとに崩壊と再構築が起こるが、分裂後のG1期には再び核膜付近には多くのヘテロクロマチンが分布する。しかしながら、細胞周期ごとに繰り返されるヘテロクロマチンの特徴的な配置が起こる詳細なタイミングやこれに関わる因子については未解明である。本研究では、核ラミナに焦点を当て、核ラミナと相互作用するヘテロクロマチン関連因子を明らかにし、核ラミナとヘテロクロマチンの相互作用の時期と場を明らかにすることを目的とした。 R2年度までに、蛍光たんぱく質Kusabira greenを利用したタンパク質断片コンプリメンテーション系(Bi-FC)を作成し、ラミンAとヘテロクロマチン結合因子HP1βが直接的な相互作用をしているかどうかを検証するための実験系を確立し、予備的な観察結果も得た。R3年度には、Bi-FCの長時間(分裂期中期~20時間)ライブイメージングを繰り返し行い、両者の相互作用する時期と場所についての再現性を確認した。その結果、R2年度に得た予備的観察どおり、G1期開始後5時間位の間に相互作用の場が核内部から核辺縁部に移動することが確証された。さらに、一度核辺相互作用の場は動かないことが判明した。また、核ラミナのもう一つの構成因子であるラミンB1および他のHP1 ファミリータンパク質であるHP1αとHP1γについてもBi-FCによる細胞内相互作用を調べた。すべての組み合わせでBi-FCを行った結果、ラミンAとHP1 βの組み合わせでのみ特異的な相互作用があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生細胞での核ラミナの構成因子ラミンAとヘテロクロマチン結合因子HP1βとの相互作用の時期と場所は観察することができた。しかしながら ①なぜ、HP1 ファミリータンパク質の中でHP1βのみが相互作用するのか、その分子的根拠を明らかにできていない。このためには、生化学的な実験により両者の相互作用に関わるドメインを明らかにする必要がある。② 本研究において、構成的なヘテロクロマチンといわれるテロメア、セントロメア、高度な繰り返し配列を含むクロマチンドメインと核ラミナとの相互作用については解析を進めることができなかった。これには、ヘテロクロマチンを形成するDNAそのものを可視化し観察する実験系が必要である。これに挑戦はしたものの安定して再現性のあるデータを取得するには至っていない。うまくいかない主たる理由は作成した遺伝子導入細胞が不安定で株化できないことにある。今後、使用する細胞から見直す必要があると考える。 また、当初の計画どおりに研究が進捗しなかった理由として、COVID19の流行による教育業務の増加 (対面授業+オンライン授業の準備なおd)の影響で研究に十分な時間を 当てることことができなかったことがある
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度に完遂できなかった光変換蛍光タン パク質を用いて核内に存在するラミンAとHP1βの蛍光シグナルの一部のみを光変換させ、経時的に追跡できるような系を完成させる予定である。また、直接ヘテロクロマチンを構成するDNAを可視化するために、ゲノム上の狙った配列を特異的に可視化する方法として、CRISPR/Cas9システムを利用したCASFISHを採用し、テロメアや高度繰り返し配列などのin situ標識系に挑戦するつもりである。この方法で、ヘテロクロマチンの細胞周期を通じた核内での動きを追跡する。
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Causes of Carryover |
COVID19 感染症による緊急事態宣言の発令に伴い、研究に遅延が生じた。具体的には、実際に研究に携わる学生が研究に従事できる時間が制限されたこと、また研究代表者の教育に携わる時間が大幅に増加したことで計画が遅れた。また、論文の掲載費を計上していたが、研究代表者が所属する兵庫県立大学と出版社との契約により掲載費が免除された。来年度は、DNAの可視化のために行うin situ 蛍光標識実験に用いる試薬等に予算を当てる予定である。
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