2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06071
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
白井 温子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (60525575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 学 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 主任研究員 (30370927)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘテロクロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘテロクロマチンは、遺伝子発現調節や染色体の維持などを介して、様々な生命現象に重要な役割を果たす高次クロマチン構造である。しかしその形成の仕組みの詳細は、動物細胞では未だ謎に包まれている。申請者は、Suv39h1によるヘテロクロマチン形成にその領域のnoncoding RNA (ncRNA) が重要な役割を果たす事を明らかにしたが、機能の詳細は不明である。本研究では、1)代表的なヘテロクロマチンであるペリセントロメア領域を構成するmajor satellite配列を異所的に挿入し、この配列から転写されるncRNAに依存して新たなヘテロクロマチンが形成されるかどうかを検討し、2)ncRNAが持つヘテロクロマチン形成における役割の解明を目的にしている。昨年度に引き続き今年度は、ヒトHEK293細胞のAAVS locus特異的にalphoid DNA やmajor satellite DNAを挿入し、ヘテロクロマチン形成をモニターできる系の構築を行った。この方法は、GFPを反復配列の5’側に挿入しているため、もし反復配列が抑制されればGFPの発現が抑制される。その結果、マウス由来のmajor satellite DNAをAAVS locus特異的に挿入した時ではGFPの蛍光のわずかな減弱しか観察されなかったが、ヒトalphoid DNAでは、GFPの蛍光が消失した。さらにGFP領域では、ヒストンH3K9me3の顕著な蓄積が検出され、またDNAメチル化が生じていた。このDNAメチル化はalphoid DNA領域から遠ざかるほど低下することがわかった。今後は、種によって異なるヘテロクロマチン形成を明らかにしつつ、異所的に挿入した繰り返し配列から転写されるncRNAに依存してヘテロクロマチンが形成されるか検討し、ncRNAが持つヘテロクロマチン形成における役割の解析を詳細に進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際に長鎖の繰り返し配列を染色体に異所的に挿入し、ヘテロクロマチン形成をモニターできる系を構築できたため。 また予想に反して、ヒト細胞にマウスのmajor satellite DNAを挿入してもヘテロクロマチンが形成されないことを見出した。この点に関しては、挿入する断片の向きを変えることを試みている。また、マウスES細胞において高頻度で部位特異的組換え反応を起こせる酵素システム (VloxP-SloxM1システム)が機能する株を構築できたことから、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ヒト細胞でヒトのalphoid DNAを異所的に染色体に挿入し、ヘテロクロマチンが形成できることを明らかにした。次年度は、異所的ヘテロクロマチンが形成される反復配列の長さを検討し、この配列から転写されるncRNAに依存して新 たなヘテロクロマチンが形成されるかどうかを検討していきたい。また、ヒトのalphoid DNAは元々内在性のncRNAが細胞内に存在しているため抑制されやすいが、major satellite DNAはヒト細胞には存在しない配列のため、ncRNA少なく抑制されにくい可能性が考えられる。そこで、major satellite DNAの前方にプロモーターを付加することにより、抑制が変化するか検討していきたい。また、構築できたVloxP-SloxM1システムが機能するマウスES細胞株を用いて、alphoid DNAやmajor satellite DNAを異所的に挿入した株を構築し、ヘテロクロマチンが形成されていくか検討することで、ヘテロクロマチン形成におけるncRNAの役割を明らかにしていきたい。
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