2018 Fiscal Year Research-status Report
Structural analysis of chaperone complex for the IgM assembly
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18K06075
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡部 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50432357)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 構造解析 / タンパク質品質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫グロブリンM (IgM)は、二組の軽鎖と重鎖で形成されたIgM単量体が、ジスルフィド結合で架橋された五または六量体として細胞外に分泌される。これまでの研究から、細胞の分泌経路において、小胞体で合成されたIgM単量体が小胞体シャペロンであるERp44によって捕獲され、糖タンパ ク質の運搬を担うERGIC-53上でIgMの正確な会合体が形成されると考えられている。ERGIC-53は、小胞体とゴルジ体の中間区画であるERGICに局在する一回膜貫通タンパク質であり、糖鎖修飾された様々な分泌タンパク質を小胞体からゴルジ体へと輸送させる役割を果たしている。全体構造は、糖鎖結合ドメイン (CRD)、ストークドメイン、膜貫通ヘリックス(TM)およびERGIC局在モチーフで構成されており、ストークドメイン間で六量体を形成して機能すると考えられている。しかし、全長ERGIC-53の立体構造は未決定であり、六量体としての分子機構は不明な点が残されている。またERp44との相互作用様式についても、十分には分かっていない。本研究は、全長ERGIC-53の立体構造ならびにERp44やIgMとの複合体の構造解析によって、IgMの正確な会合体形成の分子基盤の解明を目指すものである。 今年度は、構造解析を目的として全長ERGIC-53の大量発現、精製条件の検討を中心に取り組んだ。ヒト培養細胞HEK293Tの発現誘導型安定発現株を樹立し、発現条件の最適化によって10倍以上のタンパク質発現の亢進に成功した。またERGIC-53の可溶化および精製に用いる界面活性剤のスクリーニングにより、単分散性の精製サンプルを得るに至った。現在、ネガティブステインおよびクライオ電子顕微鏡によるサンプルのスクリーニングを進めている。 ERp44については、亜鉛によってERp44の構造機能が制御されていることを、構造解析および生物物理学的手法によって明らかにし、亜鉛を介したタンパク質品質管理の新しい機構として論文発表に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中心であるERGIC-53の構造解析について、発現および精製条件の最適化によって、単分散性の精製サンプルの調製に成功した。現在、クライオ電子顕微鏡による画像撮影に取り組める段階に到達できており、おおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ERGIC-53については、スクリーニング用の200kVクライオ電子顕微鏡を利用して、界面活性剤やタンパク質濃度の最適化に取り組み、構造解析に最適な凍結グリッドの作成を目指す。適したグリッドが得られたら、300kVクライオ電子顕微鏡を利用して高分解能構造解析に取り組む。 ERp44とERGIC-53との複合体については、pHや金属イオンなど種々の条件下において両者の相互作用解析を行い、安定した複合体形成の条件を決定する。さらに安定した複合体を用いてクライオ電子顕微鏡での構造解析に取り組む。
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Causes of Carryover |
外部施設でのクライオ電子顕微鏡実験が、施設の都合により予定よりも実施できなかったため、旅費相当分が繰越となった。翌年度の旅費として使用予定である。
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