2019 Fiscal Year Research-status Report
B細胞抑制性因子CD72による自己抗原の特異的認識機構の解明
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18K06078
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
沼本 修孝 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (20378582)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CD72-CTLDとSm/RNPの複合体の結晶構造を決定し、その構造情報に基づき特異的な分子認識機構を解明する。研究2年目の2019年度は、以下の通り研究を実施した。 1. 自己免疫疾患に関与するCD72c-CTLDの試料調製 前年度に見いだした、on column refolding法に最適なNiアフィニティークロマトグラフィー用レジンを用いた試料調製法のスケールアップを図り、CD72-CTLDの大量精製を可能にした。これにより、これまで必要な収量が得られずに結晶化実験が困難であったCD72c-CTLD(自己免疫疾患を自然発生するモデルマウスより得られたアリル)の大量精製が可能になった。 2.CD72c-CTLDの結晶構造決定 CD72c-CTLDの結晶化実験の結果、クラスター状の結晶が得られたが、様々な条件最適化の努力にもかかわらず良質な単結晶を得ることが困難であった。しかしながら、「創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)」の支援により、SPring-8の最新のマイクロフォーカスビームと自動測定、自動データ解析システムを用いて、これまでは解析困難と思われていた上記のようなクラスター状結晶から2.5 A分解能で構造決定に成功した。得られた構造から、Sm/RNPとの結合領域と予想される部位で分子表面の静電ポテンシャルが正常型CD72-CTLDから変化していることを確認した。 3.CD72-CTLDとSm/RNP複合体のクライオ電子顕微鏡による解析 前年度に検討したSm/RNP試料の純度をさらに向上させるためにゲル濾過クロマトグラフィーによる精製を行い、ピーク幅の鋭い溶出画分を得た。これを用いて、正常型CD72-CTLDとの複合体での構造解析の可能性を、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法で検討した。試料純度になお改善の必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、前年度に高純度試料調製を高効率に行う手法を確立し、2019年度はこれまで実施が困難であったCD72c-CTLDの結晶化実験を行うのに十分な試料を得ることができた。結晶化実験の結果、得られた結晶は結晶性の悪いもので解析は困難と思われたが、「創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)」の支援を受け、支援開始からわずか1ヶ月で構造解析可能なX線回折データを取得し、結晶構造の決定に至った。これにより、正常型CD72-CTLDとCD72c-CTLDでSm/RNPへの親和性が大きく異なる実験結果について、その分子機構はこれまで推測の域を超えなかったが、構造モデルからこれまでの推測が正しかったことを実験的に確かめることができた。 さらに、本研究の最終的な目的であるCD72-CTLDとSm/RNPの複合体の構造解析に向け、試料調製法の確立により、結晶化実験と並行して、当初は研究計画に予定していなかったものの、近年急速に発展しているクライオ電子顕微鏡による単粒子解析による予備的な観察を行うことができた。構造解析にはなお試料純度の改善が必要であることがわかり、結晶化実験だけでは得られない試料性状の情報が得られ、最終年度での構造解析完成に向け有用な実験結果を得ることができた。 以上のように、本研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる本年度は、CD72-CTLDとSm/RNPの複合体についてX線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡による単粒子解析とを平行して行う。前年度に試料を効率よく大量に得られるよう、精製のスケールアップをはかることに成功しており、これまで以上に収量が期待できるため、追加のカラムクロマトグラフィー操作を行うなど、精製方法をさらに改善してより純度の高い複合体試料調製を行う。試料の性状は、これまでと同様にゲル濾過クロマトグラフィーによる分子サイズの確認、動的光散乱による粒子径の均一性の確認の他、電子顕微鏡による観察でも確認する予定である。良好な試料調製ができれば、X線結晶構造解析または単粒子解析により、迅速に複合体構造を決定する。
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Causes of Carryover |
2020年3月末に米国フィラデルフィアにて開催のアメリカ化学会(ACS)での情報収集のための出張を計画していたが、新型コロナウイルスの影響により学会が中止となったためその旅費が未執行となり次年度使用額が生じた。 2020年度には、当初計画のなかったクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を行うための追加の試料調製のための費用として使用する。また関連して、他機関から研究機器の譲渡があり、これまで以上に効率的に試料調製等が行えることとなったため、その機器移送費用に使用する。
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Research Products
(1 results)