2020 Fiscal Year Research-status Report
三者複合体形成型ABC輸送体MacBによる基質輸送機構の解明
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18K06079
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡田 有意 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (20507181)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膜輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ATPの加水分解エネルギーを利用して基質を能動輸送するATP-binding cassette(ABC)輸送体のうち、外膜チャネルと膜融合蛋白質と複合体を形成して基質の輸送を行う三者複合体形成型輸送体MacBについて、その基質輸送機構を解明することを目的としている。この輸送体MacBは、マクロライド系抗生物質やペプチド毒素、リポ多糖、プロトポルフィリン等を輸送する重要な研究対象である。これまでにMacB単独の結晶構造を明らかにしてきたが、その基質輸送機構の詳細な解明には、輸送基質とMacBの複合体の立体構造情報が不可欠である。2018年度に、MacBとの複合体の結晶化条件の探索実験に利用可能な、高濃度かつ高純度の基質の調製に成功した。また、MacBと基質の相互作用を確認する実験系の確立も行った。2019年度は、その基質、実験系を用いて、MacBとの相互作用の確認実験を行い、ある条件下で相互作用することを確認した。その基質-MacB複合体を用いて、結晶化条件の探索を行った。複数の条件下で結晶が得られ、より高い分解能で解析が行える回折データが得られるように、それぞれ結晶化条件、抗凍結処理の条件の最適化を行った。得られた結晶を用いてX線回折実験を行った。しかし、構造解析の結果、明瞭な基質の電子密度は観察されなかった。そこで、2020年度は、基質-MacB複合体の形成を促進するために、より高濃度の基質存在下で、結晶化条件の探索を行った。さらに、基質の種類を複数試行し、結晶化を行った。新たに得られた結晶化条件を最適化し、抗凍結処理条件の検討も行った。今後、さらに良質なデータを得るために、それらの実験条件の最適化を行い、MacBの基質輸送機構を詳細に理解するため、基質-MacB複合体の構造解析を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MacBと基質の複合体の構造解析を目指し、基質と調製したMacBを混合し、X線回折実験に使用可能な良質な結晶が得られる条件の探索を行った。2020年度は、従来よりも結晶化の段階で基質濃度を高くする目的で、基質の溶解性が上がる有機溶媒存在下で、結晶が成長する条件を探索した。新たに得られた結晶化条件により、従来の約10倍の高濃度の基質存在下で、結晶を成長させることに成功した。複数の種類の基質に対してそれぞれ結晶化条件の最適化を行った。X線結晶構造解析では、X線照射による結晶へのダメージを軽減するために、窒素ガス気流中の低温条件下で回折実験を行うが、そのためには、蛋白質の結晶に抗凍結処理をする必要がある。本研究においても、基質-MacB複合体の結晶の抗凍結処理の条件の検討を行った。大型放射光施設SPring-8のビームラインにて、それらの結晶を用いた回折実験を行ったところ、およそ2.5オングストローム分解能のデータを得た。今後、さらに高分解能での構造解析を目指して、結晶化条件、抗凍結処理の条件等を最適化していく。X線回折実験に使用可能な蛋白質結晶が得られており、新型コロナウイルスの感染拡大予防のために、一部の実験に遅れが生じたこと以外は、おおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
基質-MacB複合体の構造解析に向けて、結晶化条件、抗凍結処理の条件等を最適化していく。複数種の基質について、MacBとの複合体の結晶の取得を試行し、結晶が得られた場合は、放射光施設SPring-8のビームラインにてX線回折実験を行う。また、異常散乱を起こす原子を導入した基質との複合体結晶の取得も試みる。さらに必要に応じて、他の生物種由来のMacBホモログについても、調製の条件検討を行い、基質-MacB複合体の結晶構造解析を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大予防のために、一時、在宅勤務となり、一部の試料の調製実験、結晶化条件の探索実験を行うことに遅れが生じたため、物品費に残額が生じた。また、旅費について、当初は、大型放射光施設SPring-8(兵庫県)での回折実験は、研究代表者が直接現地に行くことを想定していたが、結晶を放射光施設に送付し、共同研究者に測定を代行してもらい使用しなかったために残額が生じた。2021年度は、より多くの条件で、試料調製、結晶化を試みる予定のため、それに関連する試薬、消耗品を購入する物品費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)