2018 Fiscal Year Research-status Report
植物開花ホルモンによる花成促進・抑制の構造学的基盤
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18K06083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木 出 京都大学, 化学研究所, 特定研究員 (80418574)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 植物ホルモン / 花成 / 立体構造解析 / 育種 / フロリゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
開花ホルモン・フロリゲンは植物で花が咲く時期を決定している蛋白質性のホルモンであり、2007年になって初めて同定された。これまで我々はフロリゲンの新規細胞内受容体を発見し、花成の分子機構を明らかにしてきた。最近、この受容体は花成期だけでなく栄養成長期においても中心的な役割を担っていることが判明し、従来の開花制御機構の概念を新たに組み直す必要が出てきている。そこで本研究では生化学と構造生物学の手法を駆使し、この新規受容体を含む2種類のフロリゲン複合体(花成期の活性化複合体と成長期の抑制複合体)、及び関連した転写複合体の解析を行い、開花の促進・抑制の分子制御機構の全貌を解明する事を目的としている。さらに、人工的に改良したフロリゲンと開花制御機構の情報を用いた植物改変・育種技術への応用も目指している。本研究においては研究項目を大きく2つ(項目1「フロリゲンと花成リプレッサーによる花成制御の分子機構の全貌解明」、項目2「分子機能に基づくフロリゲンの改変と植物導入技術開発、植物改良への応用」)に分けて研究を進め、フロリゲンの開花制御機構に関する新たな知見と応用技術を得ることを目的とする。 初年度は(項目1)フロリゲンと花成リプレッサーによる花成制御の分子機構の解明を進めた。栄養成長期に開花の抑制をになう花成リプレッサーに注目し、その制御機構を調べるために構造解析を行い、花成リプレッサーと受容体からなる複合体(抑制複合体)の分子構造を高分解能で決定する事に成功した。既に構造が得られていたフロリゲン-受容体からなる「活性化複合体」と新たに得られた「抑制複合体」との立体構造比較から、受容体上でフロリゲンと花成リプレッサーが競合し置き換わる開花促進抑制の切り替えモデルを構築した。また、フロリゲン上に存在し開花機能に関与するポケット構造に結合する生理活性分子を発見し、詳細な解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初計画していた通りに研究が進展している
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り、着実に研究を進める。(項目1)構造情報より得られた開花の促進抑制切り替えモデルを証明するため、受容体への競合メカニズムをNMR法と生化学的なプルダウン実験を使った定量的な結合アッセイで解明する。また新たに発見した生理活性分子の影響も調べる。(項目2)これまでにフロリゲンの受容体結合部位にアミノ酸変異を入れ、花成機能を調整した改良フロリゲンの開発に成功している。ただ植物によっては花成が早すぎると成長不足で種子形成不全が起こるため、作成した変異イネの表現型と茎頂組織、種子の稔性と遺伝子発現プロファイルを解析し早花の影響を明らかにする。植物への導入技術は、まずはシロイヌナズナで検証を行う。また導入補助因子(界面活性剤等)探索や花成リプレッサーの同時導入等による開花制御能の向上を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 花成抑制の分子機構解析の研究計画が順調に進み、次年度以降のフロリゲン機能改変実験をより効率的に進めるために繰越しを行った。計画には変更はない。 (使用計画) 次年度計画の新たな機能改変実験の準備のために使用する。
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Research Products
(5 results)